派遣元のハラスメント対応措置義務とは?パワハラ・セクハラ・カスハラの体制構築と記録実務【2026年版】
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派遣元のハラスメント対応措置義務とは?パワハラ・セクハラ・カスハラの体制構築と記録実務【2026年版】

2026年8月6日23分で読める

派遣元(派遣会社)は雇用主として、パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラの4類型すべてで、方針の明確化・相談窓口の整備・事後の迅速対応・不利益取扱いの禁止という雇用管理上の措置義務を負います。派遣法の適用特例により派遣先も同様です。

特に 2026年10月1日 からは、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)の施行により、カスタマーハラスメント対策が企業規模を問わずすべての事業主に義務付けられます(出典: 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。派遣スタッフは派遣先の職場で顧客と接するため、派遣元も当事者です。

本記事は派遣元の経営者・管理部門向けに、類型ごとの義務分担、体制構築の3ステップ、相談記録の設計と帳票管理を整理します。

結論: 派遣元・派遣先のハラスメント措置義務 早見表

ハラスメント措置義務とは、事業主がハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置(方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応など)を講じる法的義務です。派遣スタッフについては派遣元が全類型で義務を負い、適用特例(労働者派遣法第47条の2〜第47条の4)により派遣先も「事業主」とみなされます(出典: e-Gov法令検索)。

類型派遣元の措置義務派遣先の措置義務根拠法派遣法の適用特例
パワハラありあり労働施策総合推進法第30条の2第47条の4
セクハラありあり男女雇用機会均等法第11条第47条の2
マタハラ(妊娠・出産等)ありあり男女雇用機会均等法第11条の3第47条の2
育児・介護ハラスメントありあり育児・介護休業法第25条第47条の3
カスハラあり(2026年10月1日〜)あり(2026年10月1日〜)改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)第47条の4(改正後)

カスハラも、運用通達の改正(令和8年3月27日付 基準発0327第6号・雇均発0327第1号)により、派遣先が第47条の4の規定で派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を含む措置義務を負うことが明示されています。いずれの類型でも、派遣元が対応を免れることはできません。

派遣元・派遣先のハラスメント措置義務の分担マトリクス
派遣元・派遣先のハラスメント措置義務の分担マトリクス

派遣スタッフへのハラスメント対策は誰の義務か(法的枠組み)

派遣は雇用主(派遣元)と指揮命令者(派遣先)が分かれるため「どちらの義務か」が論点ですが、答えは「双方が独立して義務を負う」です。

雇用管理上の措置義務の中身(方針明確化・相談体制・事後対応・不利益取扱い禁止)

パワハラを例にとると、事業主は方針の明確化と周知・啓発、相談窓口の設置など相談体制の整備、事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止という事後対応が必要です(出典: 労働施策総合推進法第30条の2、パワハラ指針=令和2年厚生労働省告示第5号)。相談者・行為者のプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱い禁止の周知も必須です。セクハラ・マタハラ・育児介護ハラスメントも同じ構造です。

派遣先も「事業主」とみなされる適用特例(労推法・均等法の派遣法上の読み替え)

労働者派遣法第47条の2〜第47条の4は、派遣先も各法律の「事業主」とみなす適用特例です。第47条の2が均等法(セクハラ・マタハラ)、第47条の3が育児・介護休業法、第47条の4が労働施策総合推進法(パワハラ。改正法施行後はカスハラも対象)の読み替えです(出典: 厚生労働省通達「労働者派遣法第47条の2から第47条の4までの規定の運用について」)。派遣先の社員が行為者でも、派遣元は相談・事後対応の義務を負い、派遣先も自らの措置義務で対応する二重構造です。措置全体の点検は派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針とは|実務チェックリスト【2026年版】を参照してください。

2026年義務化のカスハラ対策と派遣スタッフ(派遣先の顧客から受けるケース)

カスタマーハラスメント(顧客・取引先・施設利用者などの著しい迷惑行為)への措置は猶予なく義務化され、具体的な内容はカスハラ指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が示しています。派遣スタッフが派遣先で顧客からカスハラを受けた場合、派遣元は相談を受け止め、派遣先と連携して就業環境を守ります。

4類型ハラスメントの法的枠組みと適用特例の構造図
4類型ハラスメントの法的枠組みと適用特例の構造図

派遣元が構築するハラスメント対応体制(3ステップ)

措置義務への対応は、方針・窓口・事後対応の3ステップで整備すると漏れがありません。

ステップ1: 方針の明確化と周知・啓発(就業規則・研修・派遣先への申入れ)

ハラスメント禁止の方針と行為者への厳正対処を就業規則に明記し、全派遣スタッフに周知します。スタッフは自社オフィスに常駐しないため、雇入れ時・更新時の書面交付やメール配信など届く手段での周知設計が鍵です。派遣契約の締結時に、派遣先へ協力事項(周知への協力・発生時の連絡体制)を申し入れておくと事後対応が円滑です。

ステップ2: 相談窓口の設置と苦情申出先との使い分け・兼務可否

相談窓口を定め、担当者・連絡先を派遣スタッフに周知します。派遣元には派遣法上の苦情処理体制が別にあり窓口が二重になりがちですが、パワハラ指針は一元的な相談体制の整備を望ましい取組とし、共通化は可能です。ただし法的ルートと記録先が異なるため、受付時に「どのルートの相談か」を切り分ける設計が必要です。苦情処理体制の作り方は派遣の苦情処理体制の作り方|申出先の設定・派遣元/派遣先の連携・記録義務【2026年版】で解説しています。

ステップ3: 事後の迅速対応(事実確認・派遣先との連携・被害者配慮・再発防止)

相談を受けたら、相談者・行為者・第三者からの事実確認を迅速に行います。行為者が派遣先の社員や顧客の場合、派遣元単独では是正できないため、派遣先との連携ルート(誰に・いつ・何を通知するか)を事前に決めておきます。事実確認後は、就業場所の変更・行為者との引き離し・派遣先への是正申入れなど被害者配慮と再発防止策まで実施します。心身の不調につながった場合は派遣の安全衛生管理と労災対応|派遣元・派遣先の責任分担【2026年版】も参照してください。

派遣元のハラスメント対応体制構築3ステップの流れ
派遣元のハラスメント対応体制構築3ステップの流れ

ハラスメント相談の記録実務(記録票の設計と帳票管理)

措置義務対応は証跡を残してはじめて、労働局の調査や紛争で説明できます。体制と同じ重みで記録を設計しましょう。

ハラスメント相談記録票の項目設計イメージ
ハラスメント相談記録票の項目設計イメージ

相談記録票に残す項目設計(受付日・種別・派遣先への通知・措置・不利益取扱いなし確認)

相談記録票には、受付日時・相談者・類型・行為者の属性(自社社員/派遣先社員/顧客等)・事実経過・派遣先への通知日と内容・事実確認の結果・講じた措置・フォローアップ・相談を理由とする不利益取扱いがないことの確認を残す設計が実務的です(派遣HUBの帳票設計に基づく自社整理)。行為者の属性欄があると、派遣先連携が必要な事案かを受付時点で判別できます。

苦情処理(派遣法40条ルート)との法的ルートの違いと実務連携

派遣スタッフからの申出には法的に異なる2ルートがあります。就業条件に関する苦情は派遣法ルート(派遣先の処理義務=第40条第1項、苦情処理事項=第26条第1項)で処理し、状況の派遣元管理台帳(第37条)への記載が法定義務です(出典: 労働者派遣法第26条・第37条・第40条、e-Gov法令検索)。一方、ハラスメント相談は措置義務ルートで、台帳の法定記載事項ではないものの、履行の証跡として相談記録票での管理が不可欠です。同じ窓口で受けても記録先を2系統に分けると、労働局の定期指導でも整合的に説明できます。台帳側の記録実務は派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】を参照してください。

相談窓口情報の分散記載と更新漏れリスク(Excel運用の落とし穴・独自マトリクス掲載)

見落とされがちなのが、窓口・申出先情報の帳票への分散記載です。派遣HUBの帳票設計に基づく自社整理では、受付先情報は次の4箇所に重複して現れます。

記載先記載内容根拠・位置づけ
労働者派遣契約書苦情の処理に関する事項(申出を受ける者)派遣法第26条第1項の法定記載事項
就業条件明示書苦情の申出を受ける者派遣スタッフへの明示事項
派遣元管理台帳苦情の処理状況派遣法第37条の法定記載事項
社内規程・周知文書ハラスメント相談窓口の担当者・連絡先措置義務(指針)に基づく周知

担当者の交代が1回あるだけで、Excel・Word個別管理では4箇所すべての手作業更新が必要になり、1箇所でも漏れれば「実在しない窓口が案内されている」状態となり定期指導で指摘されます。就業条件明示書の記載実務は派遣の就業条件明示書の書き方|記載事項・交付タイミングと派遣契約書(26条)との違い【2026年版】で解説しています。

派遣HUBのようにスタッフ台帳・契約・帳票を一元管理する仕組みなら、窓口担当者の情報をマスタで1回更新すれば関連帳票に反映でき、分散記載による更新漏れを構造的に防げます。

相談窓口情報の分散記載マップと一元管理の比較
相談窓口情報の分散記載マップと一元管理の比較

派遣元のハラスメント対応に関するFAQ

派遣スタッフからハラスメントの相談を受けた場合、派遣元と派遣先のどちらが対応しますか?

双方が対応します。派遣元は雇用主として常に措置義務を負い、派遣先も労働者派遣法第47条の2〜第47条の4の適用特例により事業主とみなされます(出典: e-Gov法令検索)。先に相談を受けた側が他方へ速やかに連絡し、連携して進めます。

派遣先の社員によるパワハラでも派遣元に措置義務はありますか?

あります。措置義務は自社社員が行為者の場合に限定されず、派遣元は相談対応・是正申入れ・就業場所の変更などの事後対応を講じます(出典: 労働施策総合推進法第30条の2、パワハラ指針=令和2年厚生労働省告示第5号)。派遣先も適用特例で自らの措置義務を負い、連携が前提です。

カスタマーハラスメント対策の義務化はいつから派遣会社に適用されますか?

2026年10月1日からです。改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)の施行により規模を問わず全事業主が対象で、派遣会社も例外ではありません(出典: 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。措置内容はカスハラ指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が示します。

ハラスメントの相談窓口は苦情処理の申出先と兼務できますか?

兼務できます。パワハラ指針は一元的な相談体制の整備を望ましい取組として挙げています(出典: 令和2年厚生労働省告示第5号)。ただし苦情処理(派遣法第40条ルート)は派遣元管理台帳への記録が法定義務のため、受付時にルートを切り分けて記録先を分けます。

小規模な派遣会社でもハラスメント措置義務の対象になりますか?

対象になります。パワハラ防止の措置義務は2022年4月1日から中小企業にも全面適用済みで、セクハラ・マタハラの措置義務に企業規模の区別はありません(出典: 労働施策総合推進法第30条の2、男女雇用機会均等法第11条・第11条の3)。カスハラ対策義務にも規模による猶予はありません。

まとめ: 措置義務対応は「体制+記録」の仕組み化から

派遣元は4類型すべてで措置義務の当事者であり、適用特例で派遣先も義務を負いますが、派遣元の義務は軽くなりません。2026年10月1日のカスハラ義務化を体制点検の機会に、方針の周知・相談窓口・事後対応ルートの体制面と、相談記録票・台帳・窓口情報という記録面をセットで仕組み化すれば、労働局の調査にも紛争にも耐えられます。窓口情報の分散記載を放置しないことが第一歩です。

出典: 労働施策総合推進法第30条の2、男女雇用機会均等法第11条・第11条の3、育児・介護休業法第25条、労働者派遣法第26条・第37条・第40条・第47条の2〜第47条の4、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)、厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」、基準発0327第6号・雇均発0327第1号(令和8年3月27日)、パワハラ指針(令和2年厚生労働省告示第5号)、カスハラ指針(令和8年厚生労働省告示第51号)、e-Gov法令検索。


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