派遣の就業条件明示書の書き方|記載事項・交付タイミングと派遣契約書(26条)との違い【2026年版】
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派遣の就業条件明示書の書き方|記載事項・交付タイミングと派遣契約書(26条)との違い【2026年版】

2026年7月16日26分で読める

就業条件明示書は、派遣元事業主が派遣労働者に対し、労働者派遣を始める前に就業条件と抵触日を明示するための法定書面です(労働者派遣法第34条)。書面の交付が原則で、明示のタイミングや記載事項を誤ると、労働局の定期調査で行政指導の対象になります。

実務でつまずきやすいのは、就業条件明示書を個別派遣契約書(派遣法第26条)や労働条件通知書(労働基準法第15条)と混同してしまう点です。3つは根拠条文も作成主体も交付相手も異なり、同じ内容を別々の書面に何度も転記することになりがちです。

本記事では、就業条件明示書の必須記載事項の早見表、誰が誰に・いつ交付するか、個別派遣契約書・労働条件通知書との三者の違い、書面と電磁的交付の使い分けを、派遣元の実務目線で整理します。

結論:就業条件明示書の書き方早見表(誰が・誰に・いつ・何を明示するか)

就業条件明示書とは、派遣元が派遣労働者に「どこで・どんな条件で働くか」と抵触日を伝える書面です。誰が・誰に・いつ・何を・どの方法で明示するかを、先に1枚で整理します。

就業条件明示書の誰が誰にいつ何を明示するかを示した早見表
就業条件明示書の誰が誰にいつ何を明示するかを示した早見表
項目内容
誰が派遣元事業主
誰に派遣労働者(派遣スタッフ本人)
いつ労働者派遣を始める前(あらかじめ)・就業条件を変更する都度
何を第26条第1項の就業条件、個人単位の抵触日、事業所単位の抵触日
方法書面の交付が原則(本人が希望した場合のみFAX・電子メール等)
根拠労働者派遣法第34条

出典:労働者派遣法第34条・第26条を基に自社整理

就業条件明示書とは(派遣法34条の根拠と目的)

就業条件明示書は、派遣先での就業条件を派遣労働者本人に伝え、認識のずれや不利益な働き方を防ぐための書面です。派遣先との契約書(第26条)とは別に、派遣元が本人へ直接明示する義務があります。

就業条件明示書の定義と法的根拠(労働者派遣法34条)

労働者派遣法第34条は、派遣元事業主が労働者派遣をしようとするときに、あらかじめ派遣労働者へ次の3つを明示するよう定めています。第一に労働者派遣をする旨と第26条第1項に掲げる就業条件、第二に同一組織単位への派遣が3年を超える個人単位の期間制限に抵触する最初の日、第三に派遣先が派遣可能期間の制限に抵触する最初の日です。

就業条件明示書はこの明示義務を果たすための書面であり、派遣先との個別派遣契約(第26条)で定めた就業条件を、派遣労働者本人にわかる形で伝える役割を持ちます。厚生労働省や都道府県労働局がモデル様式例を公開していますが、必要事項を満たせば任意の様式で作成できます。

誰が誰に交付するか・交付のタイミング(派遣開始前と都度再明示)

交付するのは派遣元事業主、受け取るのは派遣労働者本人です。派遣先が作成・交付するものではありません。

タイミングは「労働者派遣をしようとするとき」、つまり派遣就業を始める前です。さらに、派遣期間の更新や就業場所・業務内容などの就業条件を変更する場合は、その都度あらためて明示し直す必要があります。派遣スタッフ1人が複数の派遣先で就業したり契約を更新したりするたびに再明示が発生するため、明示のたびに手作業で書面を作り直す運用は抜け漏れの温床になります。

就業条件明示書の記載事項と書き方

就業条件明示書の必須記載事項を分類した早見表
就業条件明示書の必須記載事項を分類した早見表

記載事項の中心は、個別派遣契約(第26条第1項)で定めた就業条件です。就業条件明示書は、その内容を派遣労働者本人向けに書き起こしたものと考えると整理しやすくなります。

必須記載事項の早見表(業務内容・就業場所・時間・組織単位・抵触日・苦情申出先ほか)

就業条件明示書に記載する主な事項を、性質ごとに整理すると次のようになります。

区分主な記載事項
就業の内容従事する業務の内容、業務に伴う責任の程度
就業の場所就業する事業所の名称・所在地、組織単位
指揮命令指揮命令を行う者に関する事項
就業日・時間派遣期間、就業日、始業・終業の時刻、休憩時間、所定時間外・休日労働
安全衛生派遣就業にあたっての安全衛生に関する事項
苦情処理派遣元・派遣先それぞれの苦情の申出先と処理方法
期間制限個人単位の抵触日、事業所単位の抵触日
その他派遣元責任者・派遣先責任者、福利厚生施設の利用、雇用安定措置、紹介予定派遣に関する事項(該当時)

出典:労働者派遣法第34条・第26条第1項の明示事項を基に自社整理

抵触日は、就業条件明示書の中でも記載漏れが起きやすい項目です。個人単位と事業所単位の2種類があり、それぞれ起算日が異なります。抵触日の考え方や自動管理については「派遣の3年ルール・抵触日を手作業で管理するリスクと自動化の方法【2026年版】」で詳しく解説しています。

2024年改正で加わった明示ルール(就業場所・業務の変更の範囲等)

2024年4月の改正は、労働基準法施行規則第5条の改正による労働条件明示ルールの見直しです。すべての労働契約の締結時・有期契約の更新時に「就業場所・業務の変更の範囲」を明示することが義務化され、有期契約では更新上限の有無や無期転換申込機会・無期転換後の労働条件の明示も加わりました。

これは派遣元が雇用主として派遣スタッフに交付する労働条件通知書に関わる改正です。多くの派遣元は労働条件通知書と就業条件明示書を1枚にまとめた兼用様式を使っているため、2024年改正を機に「変更の範囲」欄を様式に追記した派遣元も少なくありません。就業条件明示書単体の第34条の記載事項自体が変わったわけではない点を、混同しないようにしましょう。

個別派遣契約書(26条)・労働条件通知書(労基15条)との違い

個別派遣契約書と就業条件明示書と労働条件通知書の三者比較マトリクス
個別派遣契約書と就業条件明示書と労働条件通知書の三者比較マトリクス

就業条件明示書は、名前の似た2つの書面と混同されがちです。根拠条文・作成主体・交付相手・タイミングの4点で並べると、役割の違いがはっきりします。

3書類の違い早見表(根拠条文・作成主体・交付相手・タイミング)

書類根拠条文作成主体交付相手・当事者タイミング
個別派遣契約書派遣法第26条派遣元・派遣先派遣元と派遣先の間派遣契約の締結時
就業条件明示書派遣法第34条派遣元派遣労働者本人派遣就業の開始前・条件変更の都度
労働条件通知書労基法第15条・労基則第5条派遣元(使用者)派遣労働者本人労働契約の締結時

出典:労働者派遣法第26条・第34条、労働基準法第15条・労働基準法施行規則第5条を基に自社整理

個別派遣契約書は派遣元と派遣先の間で交わす契約で、本人には渡しません。就業条件明示書は、その契約内容のうち本人に関わる就業条件を派遣労働者へ伝える書面です。労働条件通知書は、派遣元が雇用主として労働契約の労働条件(賃金・契約期間など)を本人へ知らせる書面です。当事者と目的が異なるため、1つで他を代用することはできません。

労働条件通知書兼就業条件明示書の兼用様式という書き方

労働条件通知書と就業条件明示書は、いずれも派遣元が派遣労働者本人へ交付する書面で、就業場所・業務内容・就業時間など重複する記載事項が多くあります。そのため、両者を1枚にまとめた「労働条件通知書兼就業条件明示書」という兼用様式で交付する実務が一般的です。

兼用様式にする場合でも、労働条件明示(労基法)と就業条件明示(派遣法第34条)の両方の必要事項を満たすことが前提です。片方の欄が抜けると、様式は1枚でも明示義務を果たしていないことになります。兼用にするほど1枚あたりの記載項目が増えるため、様式のテンプレート化と入力元データの一元化が実務上の鍵になります。

明示方法と作成の落とし穴

就業条件明示書の書面原則と電磁的交付の要件を示すフロー図
就業条件明示書の書面原則と電磁的交付の要件を示すフロー図

記載事項をそろえても、明示の「方法」を誤ると明示義務を果たしたことになりません。書面が原則である点と、電磁的交付の要件を正しく押さえます。

書面が原則・電磁的交付は本人希望が要件(一方的な電子化は違反)

就業条件の明示は、書面の交付による方法が原則です。ファクシミリや電子メールなどの電磁的な方法は、派遣労働者本人が希望した場合に限って認められます(労働者派遣法施行規則)。

つまり、派遣元の都合で一律に電子メールへ切り替えることはできません。本人の希望を確認せずに電磁的方法だけで明示すると、明示義務を果たしていないと判断されるおそれがあります。電子交付を導入する場合は、本人が希望したことと、いつ・どの書面を交付したかを記録に残す運用が欠かせません。派遣契約書を含む書面全体の電子化の進め方は「労働者派遣契約書を電子化する完全ガイド【2026年版】」で整理しています。

3書類の整合と二重入力の削減(派遣HUBの項目マッピング/独自データ)

派遣HUBによる3書類の項目マッピングと二重入力削減のイメージ図
派遣HUBによる3書類の項目マッピングと二重入力削減のイメージ図

就業条件明示書・個別派遣契約書・労働条件通知書は、業務内容・就業場所・組織単位・派遣期間・就業時間・派遣元責任者など、多くの記載事項が共通します。派遣HUBの3書類テンプレートの項目定義を整理すると、少なくとも7項目前後が3書類に重複して現れます(労働者派遣法第34条・第26条・労働基準法第15条の記載事項を基に自社整理)。

これらをExcelや紙で別々に作成すると、同じ内容を3回転記することになり、就業場所や抵触日を1か所だけ直し忘れる不整合が起きます。派遣HUBは、派遣スタッフ・派遣先・契約の基礎データを1回登録すれば、就業条件明示書と兼用様式を同じデータから生成する設計です(自社設計値)。1件の登録から複数書面へ反映するため、明示のたびの転記と直し忘れを減らせます。Excelからの脱却全体の進め方は「中小派遣会社が派遣管理を脱Excel化する完全ガイド【2026年版】」もあわせてご覧ください。

派遣HUBは、就業条件明示書・個別派遣契約書・労働条件通知書兼就業条件明示書を1つの基礎データから生成し、交付履歴と抵触日をあわせて管理します。派遣元管理台帳との連携は「派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】」で解説しています。

よくある質問

就業条件明示書はいつ交付しますか?

労働者派遣を始める前(あらかじめ)に交付します。加えて、派遣期間の更新や就業場所・業務内容などの就業条件を変更する場合は、その都度あらためて明示し直す必要があります(出典:労働者派遣法第34条)。

就業条件明示書と労働条件通知書は何が違いますか?

就業条件明示書は派遣法第34条に基づき、派遣先での就業条件と抵触日を派遣労働者へ明示する書面です。労働条件通知書は労働基準法第15条に基づき、派遣元が雇用主として賃金・契約期間などの労働条件を本人へ明示する書面です。根拠法が異なり、実務では1枚の兼用様式にまとめることが多くあります(出典:労働者派遣法第34条、労働基準法第15条)。

就業条件明示書と個別派遣契約書(派遣法26条)の違いは何ですか?

個別派遣契約書は派遣元と派遣先の間で交わす契約で、本人には交付しません。就業条件明示書は、その契約内容のうち本人に関わる就業条件を派遣労働者へ伝える書面です。作成する当事者と交付する相手が異なります(出典:労働者派遣法第26条・第34条)。

就業条件明示書は電子メールやFAXで交付できますか?

原則は書面の交付です。派遣労働者本人が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メールなど電磁的な方法での明示が認められます。本人の希望を確認せずに一律で電子化することはできません(出典:労働者派遣法第34条・労働者派遣法施行規則)。

就業条件明示書に記載する必須事項は何ですか?

業務内容、就業する事業所の名称・所在地と組織単位、指揮命令者、派遣期間と就業日、始業・終業の時刻と休憩時間、安全衛生、苦情の申出先、派遣元・派遣先責任者、個人単位・事業所単位の抵触日などです。中心は個別派遣契約(第26条第1項)で定めた就業条件です(出典:労働者派遣法第34条・第26条第1項)。

労働条件通知書兼就業条件明示書として1枚にまとめてよいですか?

まとめて交付できます。ただし、労働条件明示(労働基準法)と就業条件明示(労働者派遣法第34条)の両方の必要事項を満たしていることが前提です。片方の記載事項が欠けると、様式は1枚でも明示義務を果たしたことになりません。

まとめ:明示書は書面様式より整合性で守る

就業条件明示書は、派遣元が派遣労働者へ派遣就業の開始前に就業条件と抵触日を明示する法定書面です。個別派遣契約書(第26条)や労働条件通知書(労基第15条)とは根拠条文も交付相手も異なり、兼用様式にする場合も両方の必要事項をそろえる必要があります。

明示は書面が原則で、電磁的交付は本人希望が要件です。実務でリスクになるのは様式そのものより、更新のたびに増える転記と、就業場所や抵触日の直し忘れによる書類間の不整合です。基礎データを一元化し、複数書面を同じデータから生成する仕組みにすることが、明示義務を安定して満たす近道になります。

出典:労働者派遣法第34条・第26条、労働基準法第15条・労働基準法施行規則第5条、労働者派遣法施行規則、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示ルール」


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