
派遣の安全衛生管理と労災対応|派遣元・派遣先の責任分担【2026年版】
派遣スタッフが派遣先でケガをしたとき、労災の報告や再発防止の対応は、派遣元と派遣先のどちらが担うべきか即答できるでしょうか。安全衛生教育・健康診断・労働者死傷病報告は、項目ごとに責任の所在が法律で細かく分かれており、「派遣先に任せていたつもりが、実は派遣元の義務だった」という抜け漏れが起きやすい領域です。
本記事は、労働者派遣法・労働安全衛生法の適用の特例をふまえ、「どちらが何をやるか」を責任分担の早見表で一目で分かるように整理します。あわせて、派遣元が確実に残すべき安全衛生関連の記録と、労災発生時の通報フローを示し、これらを手作業の台帳ではなく仕組みで支える方法まで解説します。中小〜中堅派遣会社の管理担当者・経営者が、自社の対応の抜け漏れを点検するチェックリストとしてお使いください。
結論:安全衛生責任は「雇用は派遣元・現場は派遣先」で分かれる
派遣スタッフの安全衛生管理は、原則として「雇用主としての責任は派遣元」「現場(作業環境)の責任は派遣先」に分かれます。労働安全衛生法は本来すべて雇用主が負いますが、労働者派遣法第45条が適用の特例を定め、現場を支配する派遣先にも事業者としての義務を負わせる構造になっています(出典: 労働者派遣法第45条、e-Gov法令検索)。
つまり、派遣先で起きる危険は派遣先が、雇用契約に紐づく管理は派遣元が担う、という考え方です。下表で主要な項目の担当を整理します。
| 項目 | 派遣元 | 派遣先 | 根拠の考え方 |
|---|---|---|---|
| 雇入れ時の安全衛生教育 | ◯(実施義務) | — | 雇用主としての教育義務 |
| 危険有害業務の特別教育 | — | ◯(実施義務) | 現場の作業に直結 |
| 一般健康診断 | ◯ | — | 雇用に紐づく定期健診 |
| 特殊健康診断(有害業務) | △ | ◯(原則) | 有害業務は現場の派遣先 |
| 安全衛生委員会・作業環境管理 | — | ◯ | 現場の環境を支配 |
| 労働者死傷病報告 | ◯ | ◯(両方に義務) | 双方が提出義務を負う |
出典: 労働安全衛生法、労働者派遣法第45条、厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」(2026-06-21時点)。

派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務は安全衛生連携の土台になります。詳しくは派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務もあわせてご確認ください。
派遣元が負う安全衛生責任と記録
派遣元はスタッフの雇用主として、雇用に紐づく安全衛生の管理と記録を担います。現場を直接見られない立場だからこそ、教育・健診・派遣先との連絡の履歴を確実に残すことが、抜け漏れ防止と監査対応の両面で重要です。
雇入れ時教育と一般健康診断
新たに雇い入れた派遣スタッフへの雇入れ時の安全衛生教育は、派遣元に実施義務があります。教育内容には、機械等の危険性・有害性、就労する業務で生じうる疾病の原因と予防、事故時の応急措置や退避などが含まれます(出典: 厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」)。
健康診断については、一般健康診断は派遣元が、有害業務に係る特殊健康診断は原則として派遣先が実施します(出典: 厚生労働省「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」)。派遣元は一般健診の受診管理と結果記録を、スタッフごとに継続して保持する必要があります。

派遣元が管理すべき記録の一覧
派遣元が確実に保持すべき安全衛生関連の記録を、独自に整理したのが次の一覧です(前提: 当社が中小派遣会社の運用を想定して整理したモデル。法定の保存年限は各法令で確認のこと)。
| 記録項目 | 主な内容 | 想定する保持の考え方 |
|---|---|---|
| 雇入れ時教育の記録 | 実施日・教育項目・受講者 | スタッフ単位で履歴管理 |
| 一般健康診断の記録 | 受診日・結果・事後措置 | 定期受診の抜け検知 |
| 派遣先への通知記録 | 業務内容・有害業務の有無 | 連絡調整の証跡 |
| 労災・死傷病報告の控え | 報告日・写しの送付状況 | 派遣先との突合 |
これらをExcelの個別ファイルで持つと、スタッフ数が増えるほど「誰の健診が切れているか」を人が探すことになり、抜け漏れの温床になります。派遣HUBのように勤怠・契約・労務の記録を一元データで持てる仕組みなら、教育・健診の履歴をスタッフ台帳に紐づけて管理でき、期限切れの検知も容易になります。台帳全般の整備は派遣元管理台帳の書き方と保管ルールも参考になります。
派遣先が負う責任と派遣元との連携
派遣先は、スタッフが実際に作業する現場を支配する立場として、作業環境や危険有害業務に関する事業者責任を負います。派遣元との連絡調整がうまく機能しないと、現場の危険情報が雇用主に伝わらず、教育や健診の漏れにつながります。
現場の作業環境と特別教育
派遣先は、安全衛生委員会の設置・作業環境管理・危険有害業務に従事する者への特別教育などを担います。クレーン等の運転のような危険有害業務の特別教育は派遣先の実施義務です(出典: 厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」)。
また派遣先には、派遣スタッフに対する安全配慮義務も及びます。実際の指揮命令下で働く以上、現場の安全を確保する責任は派遣先にあり、これは契約で派遣元に丸投げできるものではありません。

派遣元・派遣先の連絡調整
派遣元責任者・派遣先責任者は、安全衛生に関して連絡調整の役割を担います(出典: 厚生労働省「派遣元と派遣先との連携」)。派遣先で有害業務に従事させる場合や作業内容が変わった場合、その情報を派遣元へ確実に伝えることで、特殊健診や追加教育の要否を判断できます。
この連絡調整を口頭やメールだけで運用すると証跡が散逸します。業務内容・有害業務の有無を契約データと紐づけて記録できれば、責任者間の引き継ぎ漏れを減らせます。現場マネジメント全体の効率化は派遣会社の経営・現場マネジメントを効率化する完全ガイドで体系的に解説しています。
労災発生時の対応フロー
派遣スタッフに労災が発生した場合、最も間違えやすいのが労働者死傷病報告の提出です。これは派遣先・派遣元の双方に提出義務があり、どちらか一方が出せば足りるものではありません。
死傷病報告は派遣先・派遣元の両方に義務
労働者死傷病報告は、派遣先事業者・派遣元事業者の両方に報告義務があります(出典: 厚生労働省・労働局「派遣労働者にかかる労働者死傷病報告の提出について」)。実務上は、災害発生状況を把握している派遣先がまず所轄の労働基準監督署長へ提出し、その写しを派遣元へ送付、派遣元はその写しをもとに自社の報告を作成・提出する流れが一般的です。

通報フローと再発防止
労災発生時の標準的な通報フローを、独自に整理したのが次の早見表です(前提: 上記の法定義務をもとに当社が運用手順として整理したモデル)。
| ステップ | 派遣先 | 派遣元 |
|---|---|---|
| 1. 被災者対応 | 応急措置・医療機関搬送 | 状況の共有を受ける |
| 2. 監督署への報告 | 死傷病報告を提出 | 写しをもとに自社分を提出 |
| 3. 原因調査 | 発生原因の調査・安全委員会で審議 | 結果の共有を受ける |
| 4. 再発防止 | 作業環境の改善 | 教育内容への反映・記録保持 |
労災の原因調査と再発防止対策は、派遣先の安全委員会等で調査・審議すべき事項です(出典: 厚生労働省「派遣元と派遣先との連携」)。派遣元は、受領した報告の写しや再発防止の結果を記録として残し、次回以降の教育に反映することが求められます。

よくある質問
派遣スタッフの労災保険は派遣元・派遣先どちらが適用しますか
派遣スタッフの労災保険は、雇用主である派遣元の労災保険が適用されます。一方で労働者死傷病報告は派遣先・派遣元の双方に提出義務があるため、保険の適用元と報告義務者は別である点に注意してください(出典: 厚生労働省「派遣労働者にかかる労働者死傷病報告の提出について」)。
雇入れ時の安全衛生教育は派遣先に任せてよいですか
雇入れ時の安全衛生教育は派遣元の実施義務です。派遣先に任せきりにはできません。一方、クレーン運転等の危険有害業務に従事する者への特別教育は派遣先の義務です(出典: 厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」)。教育の種類ごとに担当が分かれます。
健康診断は派遣元と派遣先のどちらが行いますか
一般健康診断は派遣元が、有害業務に係る特殊健康診断は原則として派遣先が実施します(出典: 厚生労働省「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」)。派遣元は一般健診の受診管理と結果記録を、スタッフごとに継続して保持する必要があります。
派遣先で作業内容が変わったとき派遣元に伝える必要はありますか
あります。有害業務への従事や作業内容の変更は、特殊健診や追加教育の要否に直結します。派遣元責任者・派遣先責任者が連絡調整の役割を担うため、変更情報を確実に共有する運用が必要です(出典: 厚生労働省「派遣元と派遣先との連携」)。
安全衛生の記録はどのくらい残すべきですか
教育記録・健診結果・死傷病報告の控えなどは、各法令が定める保存年限に従って保持します。年限は項目ごとに異なるため、一次ソースで確認のうえ、スタッフ単位で抜け漏れなく管理できる仕組みにしておくことをおすすめします。
まとめ:責任分担を早見表で押さえ、記録を仕組みで支える
派遣スタッフの安全衛生管理は、「雇用に紐づく責任は派遣元、現場の責任は派遣先」が基本軸です。雇入れ時教育と一般健診は派遣元、特別教育と特殊健診・作業環境管理は派遣先、そして労働者死傷病報告は双方に提出義務がある、という分担を早見表で押さえておけば、抜け漏れは大きく減らせます。
重要なのは、これらの義務を「やったかどうか」を記録として確実に残すことです。教育・健診・労災対応の履歴をExcelの個別ファイルで散在させると、スタッフ数が増えるほど人手で追えなくなります。雇用情報と一元化したデータで管理し、期限切れや報告漏れを検知できる仕組みに移すことが、コンプライアンスの土台になります。
出典: 労働者派遣法第45条、労働安全衛生法、厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」「派遣元と派遣先との連携」、厚生労働省・労働局「派遣労働者にかかる労働者死傷病報告の提出について」、e-Gov法令検索。
安全衛生の記録を仕組みで支える
派遣HUBは、勤怠・契約・労務の情報を一元データで管理し、教育・健診の履歴や労災対応の記録をスタッフ台帳に紐づけて残せます。二重入力をなくし、抜け漏れを検知しやすい土台をつくります。中小派遣会社向けに月額¥2,980/名(税込)から導入でき、14日間無料でお試しいただけます。
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