
派遣契約の中途解除と休業手当|派遣元が講ずべき措置・損害賠償と実務フロー【2026年版】
派遣契約を派遣先の都合で中途解除されたとき、派遣元がまず行うのは「新たな就業機会の確保」であり、それができない場合は休業手当(労働基準法第26条)を派遣スタッフへ支払い、その費用や損害を派遣先へ求めます(労働者派遣法第29条の2)。休業手当を支払うのは派遣スタッフの雇用主である派遣元であって、派遣先ではありません。この順序と費用負担の関係を押さえることが出発点です。
中小派遣会社では、派遣先から突然「来月で終了したい」と連絡が入ったとき、休業手当の要否・金額・派遣先への請求可否・記録の残し方の判断が同時に迫られます。判断を誤ると、派遣スタッフへの手当の払い漏れや派遣先への費用請求漏れ、労働局調査での指摘につながります。
この記事では、中途解除の連絡を受けてから記録・計算までを、派遣元の実務担当者が使える3ステップのフローに整理し、休業手当の平均賃金計算(労働基準法第12条)と派遣元管理台帳への記録まで解説します。
結論:派遣契約を中途解除されたら派遣元がすべき3ステップ(answer-first)
派遣先都合の中途解除に直面した派遣元がとる対応は、(1)新たな就業機会の確保、(2)休業と休業手当の支払い、(3)損害賠償・費用の請求という3ステップです。この順序は「まず雇用を維持し、維持できないなら手当で補償し、その負担を派遣先へ求める」という雇用の安定を図る考え方に沿っています。

| ステップ | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 就業機会の確保 | 他の派遣先・関連会社での就業をあっせんし、雇用を維持する | 労働者派遣法第29条の2・派遣元指針 |
| 2 休業と休業手当 | 就業機会がなければ休業させ、平均賃金の6割以上の休業手当を派遣元が支払う | 労働基準法第26条 |
| 3 損害賠償・費用請求 | 支払った休業手当等の費用を派遣先に負担させ、損害を賠償請求する | 労働者派遣法第29条の2・派遣先指針 |
出典: 労働者派遣法第29条の2・労働基準法第26条・派遣先/派遣元が講ずべき措置に関する指針を基に自社整理
中途解除対応の3ステップ早見表(就業機会確保→休業+休業手当→損害賠償請求)
3ステップの順序には意味があります。派遣元指針は派遣先都合で解除されても派遣元が雇用の維持に努めることを求めており、まず他の就業機会をあっせんし、確保できず休業させる場合に労働基準法第26条の休業手当が発生します。負担した休業手当等の費用や損害は労働者派遣法第29条の2により派遣先へ求めます。就業機会の確保を飛ばして休業手当の計算から入ると、雇用維持の努力を尽くしていないと評価される場合があるため、順序を守ることが実務上の防御になります。
休業手当は「誰が払うか」の結論——派遣元が支払い、派遣先へ費用を求める
休業手当を派遣スタッフへ支払う義務を負うのは、派遣スタッフと雇用契約を結んでいる派遣元です。派遣先は雇用主ではないため直接支払う立場になく、その代わり休業手当等の支払いに要する費用を負担する措置を講じなければなりません(労働者派遣法第29条の2)。つまり「派遣元がいったん支払い、派遣先が費用を負担する」二段構えです。
定義:派遣契約の中途解除・休業手当・新たな就業機会の確保とは
中途解除への対応を正しく行うには、まず「誰の都合による解除か」を区別します。解除事由によって休業手当の要否や損害賠償の可否が変わるためです。

中途解除の定義と「派遣先都合/派遣元都合/派遣スタッフの責」の区別
中途解除とは、労働者派遣契約で定めた派遣期間の途中で契約を終了させることです。休業手当は「使用者(派遣元)の責に帰すべき事由による休業」に対して発生するため、解除事由を次のように区別します。
| 解除事由 | 主な例 | 休業手当の考え方 |
|---|---|---|
| 派遣先都合 | 派遣先の業績悪化・受注減・プロジェクト中止による打ち切り | 派遣元が就業させられない状態は使用者の責に帰すべき事由に含まれ得る(休業手当の対象になり得る) |
| 派遣元都合 | 派遣元の段取り不足などで就業させない | 派遣元の責に帰すべき事由(休業手当の対象) |
| 派遣スタッフの責 | 本人の重大な規律違反による解除 等 | 使用者の責ではないため休業手当の対象外となり得る |
出典: 労働基準法第26条を基に自社整理
派遣先の経営上の理由による中途解除であっても派遣元にとっての不可抗力とはいえず、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に含まれると解されるのが実務上の前提です。
休業手当(労働基準法26条)の定義と平均賃金6割以上の意味
休業手当とは、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合に、使用者が休業期間中の労働者に対して支払う手当です。金額は平均賃金の6割(100分の60)以上と定められています(労働基準法第26条)。
「6割以上」は最低保障の水準です。1日全部を休業させた場合だけでなく、1日の一部を休業させた場合も、その日の平均賃金の6割との差額を支払う必要が生じます。中途解除で就業できない日が続けば、休業日数分の休業手当が積み上がります。
派遣先都合の中途解除で派遣元が講ずべき措置(労働者派遣法29条の2)
労働者派遣法第29条の2は、派遣先が自らの都合で労働者派遣契約を解除するとき、新たな就業機会の確保、派遣元が支払う休業手当等の費用の負担、その他雇用の安定を図る措置を講じるよう定めています。

新たな就業機会の確保(関連会社あっせん・他派遣先の確保)
派遣先の責に帰すべき事由で中途解除する場合、派遣先はまず派遣労働者の新たな就業機会の確保を図る必要があり、具体的には関連会社での就業のあっせんなどが想定されます(派遣先指針)。
派遣元の側でも、他の派遣先を確保して雇用を維持する努力が求められます(派遣元指針)。就業機会の確保に動いた記録(あっせん先・打診日・結果)は、休業手当や損害賠償の妥当性を説明するうえでも重要です。
休業手当等の費用負担と損害賠償の範囲(休業手当相当額以上/予告なしは30日分以上の賃金相当額)
新たな就業機会を確保できないときは、派遣先は少なくとも休業手当に相当する額以上の損害賠償を行うことが定められています(派遣先指針)。さらに、相当の猶予期間をおかずに解除を申し入れ、派遣元が派遣スタッフに解雇の予告をしないときは、派遣先は少なくとも30日分以上の賃金に相当する額(解雇予告手当に相当する額)以上を賠償することが求められます。
| 派遣先の状況 | 派遣先が負担・賠償する内容 |
|---|---|
| 新たな就業機会を確保できない | 休業手当に相当する額以上の損害賠償 |
| 相当の猶予期間なく解除し派遣元が解雇予告をしない | 30日分以上の賃金に相当する額以上の損害賠償 |
出典: 派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)を基に自社整理
これらの負担を派遣先に確実に求めるには、労働者派遣契約に「中途解除時の措置(就業機会の確保・費用負担・損害賠償)」を明記しておくことが前提です。契約の記載事項の整備は「労働者派遣契約書を電子化する完全ガイド」も参考になります。
派遣元の実務フロー:中途解除の連絡から記録・計算まで
中途解除の連絡を受けた派遣元が、何をどの順で処理するかを3ステップで整理します。

ステップ1 解除事由の確認と「相当の猶予期間」のチェック
最初に、解除が派遣先都合か、相当の猶予期間をもって申し入れられたかを確認します。派遣先には、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元へ解除を申し入れることが求められています(派遣先指針)。
猶予期間が十分でない場合や就業機会を確保できない場合は、休業手当や30日分以上の賃金相当額の損害賠償が論点になります。この段階で解除事由・申入れ日・猶予期間の有無・合意内容を記録に残すと、後続の計算と請求の根拠になります。
ステップ2 休業手当の平均賃金(労基法12条)算定と給与への反映
休業手当の額は平均賃金を基礎に計算します。平均賃金は、算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者へ支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して求めます(労働基準法第12条)。この平均賃金の6割以上が、休業1日あたりの休業手当の下限です。

計算に必要な賃金データは日々の勤怠と給与に紐づくため、勤怠・給与が分断されていると算定期間の賃金総額の集計に手間がかかります。給与計算との連動は「派遣会社の給与計算を自動化」、休業日数のカウントに直結する勤怠管理は「派遣の労働時間・36協定の管理」で整理しています。
ステップ3 派遣元管理台帳・個人別記録への解除措置の記録と監査ログ
講じた措置の内容は、派遣元管理台帳・個人別記録に残します。就業機会のあっせん状況、休業手当の支給、派遣先への費用請求・損害賠償の経緯を記録しておくと、労働局調査や派遣先との交渉に証跡として使えます。台帳の記載・保管ルールは「派遣元管理台帳の書き方と保管ルール(18項目)」を参照してください。
中途解除の発生時に派遣元が確認・記録すべき項目を、自社の派遣管理設計に基づき一覧化しました。
| 確認・記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 解除事由・相当の猶予期間の有無 | 派遣先都合か、猶予期間をもって申し入れられたか |
| 就業機会確保の打診 | あっせん先・打診日・結果 |
| 休業日数と平均賃金の算定期間 | 休業させた日数、直近3か月の賃金総額 |
| 休業手当の支給額 | 平均賃金の6割以上で計算した支給額 |
| 損害賠償・費用請求の区分 | 休業手当相当額/30日分以上の賃金相当額の別 |
| 台帳・個人別記録への記載 | 派遣元管理台帳・個人別記録への反映 |
出所: 派遣HUBのプロダクト機能仕様と、派遣元の実務担当者への設計ヒアリングを踏まえた自社見解として構造化
これらの項目を分断されたExcelで別々に管理すると、平均賃金の集計や複数帳簿への転記に手間がかかります。勤怠から給与・台帳まで連動させておくと、算定と記録を一連の処理として進められます。
よくある誤解と実務上の注意点(賃金全額と6割・民法536条2項)
「休業手当は平均賃金の6割を払えば必ず足りる」という理解は正確ではありません。労働基準法第26条の6割は罰則付きの最低保障であり、使用者(派遣元)の責めに帰すべき事由で就業させられなくなったと評価される場合は、派遣スタッフが反対給付である賃金の全額を請求できる余地があります(民法第536条第2項)。派遣元が就業機会の確保を尽くさずに休業させたと見られると6割では足りないと判断されるリスクがあるため、まず就業機会の確保に動き、その努力を記録に残すことが要になります。
よくある質問
派遣契約を中途解除された派遣スタッフの休業手当は誰が支払いますか?
休業手当を支払うのは、派遣スタッフと雇用契約を結んでいる派遣元です。派遣先は雇用主ではないため直接は支払いませんが、派遣先都合の中途解除では休業手当等の費用を負担する措置を講じる必要があります(出典: 労働者派遣法第29条の2・労働基準法第26条)。
派遣先都合の中途解除で派遣元は損害賠償を請求できますか?
請求できます。派遣先は新たな就業機会を確保できないときは休業手当に相当する額以上を、相当の猶予期間なく解除し派遣元が解雇予告をしないときは30日分以上の賃金に相当する額以上を損害賠償することが定められています(出典: 派遣先が講ずべき措置に関する指針・労働者派遣法第29条の2)。
休業手当は平均賃金の6割で足りますか、それとも賃金全額が必要ですか?
労働基準法第26条の6割以上は最低保障です。派遣元の責めに帰すべき事由で就業させられなくなったと評価される場合は、民法第536条第2項により賃金全額の請求が認められる余地があります(出典: 労働基準法第26条・民法第536条第2項)。6割を払えば常に足りるとは限りません。
派遣先が新たな就業機会を確保できない場合はどうなりますか?
派遣先は、少なくとも派遣契約の解除に伴う休業手当・解雇予告手当等に相当する額以上の損害賠償を行うことが求められます(出典: 派遣先が講ずべき措置に関する指針)。派遣元も他の派遣先の確保に努め、確保できなければ休業手当を支払います。
派遣先からの中途解除の申し入れはどのくらい前に必要ですか(相当の猶予期間)?
派遣先は、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元へ解除を申し入れる必要があります(出典: 派遣先が講ずべき措置に関する指針)。日数の定めはありませんが、相当の猶予期間をおかずに解除し派遣元が解雇予告をしない場合は、30日分以上の賃金相当額以上の賠償が論点になります。
派遣元が講ずべき措置を怠るとどうなりますか?
就業機会の確保や休業手当の支払いを怠ると、派遣スタッフへの未払いや賃金全額請求のリスクが生じ、労働局の指導・助言や是正指導の対象にもなり得ます(出典: 労働者派遣法第29条の2・労働基準法第26条・派遣元指針)。措置の内容は派遣元管理台帳・個人別記録に残します。
まとめ:中途解除対応は「就業機会確保→休業手当→損害賠償→記録」の順で
派遣契約を派遣先都合で中途解除されたら、派遣元はまず新たな就業機会の確保に動き、確保できなければ平均賃金の6割以上の休業手当を支払い、その費用と損害を派遣先へ求めます(労働者派遣法第29条の2・労働基準法第26条)。休業手当を支払うのは派遣元、費用を負担するのは派遣先という二段構えが基本です。
6割は最低保障にすぎず、就業機会の確保を尽くさなければ賃金全額請求のリスクもあります。就業機会確保→休業手当→損害賠償→記録という順序を守り、各段階を派遣元管理台帳・個人別記録に残すことが、中途解除対応の要になります。
出典: 労働者派遣法第29条の2(労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置)、労働基準法第26条(休業手当)、労働基準法第12条(平均賃金の算定方法)、民法第536条第2項(債権者の責めに帰すべき事由による履行不能と反対給付)、派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)、厚生労働省「労働者派遣契約の中途解除に関する派遣先の講ずべき措置」
中途解除の対応を「計算」と「記録」まで仕組み化
派遣HUBは、勤怠から給与までを一気通貫でつなぎ、休業手当の平均賃金算定と派遣元管理台帳・個人別記録への記録をまとめて支えます。中途解除のような突発対応でも、計算と証跡づくりを手作業に頼らず進められます。月額¥2,980/名(税込)から、初期費用¥30,000(税込)でご利用いただけます。
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