
派遣の労働時間・36協定の管理|派遣元と派遣先の責任分担【2026年版】
「派遣スタッフの36協定は派遣元と派遣先のどちらが結ぶのか」「実際の残業時間は誰が把握する責任なのか」——派遣会社の管理担当者から最も多く寄せられる疑問のひとつです。派遣は指揮命令する派遣先と、雇用する派遣元が分かれているため、労働時間の管理責任が二つに割れます。この分担を取り違えると、知らないうちに労基法違反や過重労働を招きかねません。
本記事では、労働者派遣法と労働基準法の条文に沿って「36協定は派遣元が締結する」「労働時間の実態把握は派遣先が担う」という基本構造を早見表で整理します。そのうえで、紙のタイムシートに依存した手作業管理がなぜ危険なのかを示し、勤怠データを派遣元へ自動連携する仕組み化までを解説します。
結論:36協定は派遣元、労働時間の実態把握は派遣先が担う
派遣の労働時間管理は「協定の締結」と「実態の把握」で責任主体が分かれます。労働者派遣法第44条により、労働時間・休憩・休日・時間外/休日労働に関する労働基準法の規定は、原則として派遣先が使用者責任を負います(出典: 労働者派遣法第44条、e-Gov法令検索)。一方で、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の締結・届出は、雇用主である派遣元が行います(出典: 厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」)。
つまり派遣先は、派遣元が結んだ36協定の範囲内でしか残業をさせられません。この範囲を超えると、派遣先が労働基準法第36条違反に問われます。下表で責任分担を整理します。
| 管理項目 | 責任主体 | 根拠 |
|---|---|---|
| 36協定の締結・届出 | 派遣元 | 労基法第36条(雇用主が締結) |
| 36協定の範囲内での残業指示 | 派遣先 | 派遣法第44条 |
| 労働時間・休憩・休日の実態把握 | 派遣先 | 派遣法第44条 |
| 把握した労働時間の派遣元への通知 | 派遣先→派遣元 | 派遣先の通知義務 |
| 割増賃金の支払い | 派遣元 | 雇用主として支払い |

この「ねじれ構造」を正しく回すには、派遣先で発生した実労働時間を、賃金を支払う派遣元へ正確に届ける情報の流れが欠かせません。以降で、各責任の中身と仕組み化を具体的に解説します。
36協定は誰が結ぶのか|締結主体と適用範囲
派遣スタッフの36協定をめぐる混乱の核心は「指揮命令は派遣先なのに、協定は派遣元」という点にあります。ここでは締結主体と適用範囲を整理します。
36協定の締結・届出は派遣元の義務
36協定は、労働者に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える残業や休日労働をさせる際に必要な労使協定です(出典: 労働基準法第36条、e-Gov法令検索)。派遣スタッフを雇用しているのは派遣元であるため、協定の締結・届出は派遣元が、自社の労働者代表との間で行います(出典: 厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」)。派遣先が独自に派遣スタッフ向けの36協定を結ぶ必要はありません。
労働基準法第36条の上限規制では、時間外労働は原則として月45時間・年360時間が限度とされ、特別条項を設けても年720時間などの枠を超えることはできません(出典: 労働基準法第36条、e-Gov法令検索)。派遣元はこの上限を踏まえた協定を結ぶ必要があります。
派遣先は「派遣元の協定の範囲内」でしか残業させられない
ここが最も誤解されやすい点です。派遣先に自社の36協定があっても、派遣スタッフに適用されるのは派遣元が締結した36協定です。派遣先が派遣元の協定上限を超えて残業を指示すれば、派遣先が労基法第36条違反となります(出典: 厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」)。
したがって派遣元は、自社の36協定で定めた残業上限を派遣先へ事前に共有し、派遣先がその枠を超えないよう管理する必要があります。複数の派遣先に多数のスタッフを送り出す中小派遣会社では、この上限管理が手作業だと破綻しやすく、誰がどの派遣先で何時間残業しているかを一元的に見える化する仕組みが求められます。

労働時間の実態把握と派遣元への通知
協定を結ぶのは派遣元ですが、実際に何時間働いたかを把握できるのは現場を持つ派遣先です。この実態把握と通知の流れが、適正な賃金計算と上限管理の生命線になります。
労働時間の実態把握は派遣先の責任
派遣スタッフは派遣先の指揮命令で働くため、始業・終業時刻、休憩、休日労働といった労働時間の実態を把握できるのは派遣先です。労働者派遣法第44条により、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の責任は派遣先が負います(出典: 労働者派遣法第44条、e-Gov法令検索)。派遣先は、客観的な記録によって派遣スタッフの労働時間を適正に把握する義務を負います。
派遣先から派遣元への通知が賃金計算の起点
派遣先が把握した労働時間は、派遣元へ通知されて初めて意味を持ちます。割増賃金を支払うのは雇用主である派遣元だからです。派遣先が実労働時間を正確に通知しなければ、派遣元は正しい給与計算ができません。通知が遅れたり数値が誤っていたりすると、未払い残業や過払いが発生します。
ここで、責任分担と必要データ・記録主体を一覧化した独自の整理を示します(出典: 当社が労働者派遣法第44条・労働基準法第36条をもとに整理した責任分担表、2026-06-21時点)。
| 管理プロセス | 必要なデータ | 記録・把握する主体 | データの行き先 |
|---|---|---|---|
| 始業終業の打刻 | 出退勤時刻 | 派遣先(現場) | 派遣元へ通知 |
| 残業・休日労働の確認 | 時間外/休日の実績 | 派遣先(承認) | 派遣元の上限管理へ |
| 36協定上限のチェック | 月次・年次の累計 | 派遣元 | 派遣先へ警告共有 |
| 給与・割増賃金の計算 | 確定した実労働時間 | 派遣元 | スタッフへ支払い |
この表が示すとおり、データは「派遣先で発生→派遣元で計算」という一方向の流れを持ちます。勤怠の打刻データが派遣先から派遣元へ手作業で転記される過程に、最大のリスクが潜んでいます。派遣先承認を含む勤怠フローの整え方は、派遣の勤怠管理を効率化する方法|タイムシート・打刻・派遣先承認で詳しく解説しています。

手作業の労働時間管理のリスクと仕組み化
責任分担を理解しても、その運用が紙やExcelの手作業だと、ねじれ構造はかえってリスクを増幅します。ここでは具体的なリスクと、データ連携による解決の方向性を示します。
手作業・転記が招く3つのリスク
派遣先から届く紙のタイムシートやメールの勤怠報告を、派遣元の担当者が手で集計・転記する運用には、次のリスクがあります。
| リスク | 発生する問題 | 影響 |
|---|---|---|
| 転記ミス | 残業時間の入力誤り | 賃金の未払い・過払い |
| 集計の遅れ | 36協定上限の超過に気づかない | 派遣先の労基法違反 |
| 分散管理 | 派遣先ごとにデータがバラバラ | 全体の残業状況が見えない |
特に複数の派遣先へスタッフを送り出す中小派遣会社では、派遣先ごとに打刻方法も締め日も異なり、月末に大量の勤怠データを短期間で処理することになります。手作業ではこの集中負荷に耐えられず、上限超過の見落としや給与計算の遅延が起きやすくなります。
データ連携で「把握→通知→計算」を自動化する
リスクの根本原因は、派遣先で発生したデータが派遣元へ届くまでに「人の手」が介在することです。これを解消するには、勤怠データをデータとして取り込み、給与計算まで自動でつなぐ仕組みが有効です。
派遣HUBでは、給与・勤怠のCSVをアップロード/取込で自動データ化し、二重入力をなくして派遣先別の労働時間を一元管理できます。データが揃うことで36協定上限の累計チェックや、割増賃金を含む給与・請求の自動生成までつながり、転記ミスと集計遅れを構造的に減らせます。基幹業務全体の効率化の全体像は派遣会社の基幹業務(勤怠・給与・請求)を効率化する完全ガイドを、給与計算に絞った自動化は派遣会社の給与計算を自動化する方法|社保・所得税控除の手作業を減らすをあわせてご覧ください。

このような一元データ化は、入力された情報が揃うことで適正なマッチングや法令対応の土台にもなります。労働時間データが正確に蓄積されれば、過重労働の予兆を早期に検知し、派遣業法・労基法のコンプライアンスを支える基盤になります。

よくある質問
派遣スタッフの36協定は派遣元と派遣先のどちらが結びますか?
36協定の締結・届出は、派遣スタッフを雇用する派遣元が行います。派遣先に自社の36協定があっても派遣スタッフには適用されず、適用されるのは派遣元の協定です(出典: 厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」)。派遣先はその範囲内でのみ残業を指示できます。
派遣スタッフの労働時間は誰が把握するのですか?
実際の労働時間を把握する責任は派遣先にあります。労働者派遣法第44条により、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定は派遣先が使用者責任を負うためです(出典: 労働者派遣法第44条、e-Gov法令検索)。派遣先は把握した実労働時間を派遣元へ通知します。
派遣先が36協定の上限を超えて残業させたら誰の責任ですか?
派遣元の36協定の範囲を超えて残業を指示した場合、派遣先が労働基準法第36条違反となります(出典: 厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」)。派遣元は協定上限を派遣先へ事前に共有し、超過を防ぐ管理が求められます。
割増賃金を支払うのは派遣元と派遣先のどちらですか?
割増賃金を含む賃金の支払いは、雇用主である派遣元が行います。派遣先が把握・通知した実労働時間をもとに、派遣元が法定どおりに残業代を計算して支払います。通知が不正確だと未払いや過払いの原因になるため、データの正確な受け渡しが重要です。
複数の派遣先がある場合の労働時間管理のコツは?
派遣先ごとに分散した勤怠データを一元化し、スタッフ単位で月次・年次の残業累計を見える化することがコツです。手作業の転記では上限超過を見落としやすいため、CSV取込などでデータを自動集約し、36協定上限のチェックと給与計算をつなげる仕組みが有効です。
まとめ:責任分担を理解し、データ連携で仕組み化する
派遣の労働時間管理は「36協定の締結・届出は派遣元」「労働時間の実態把握は派遣先」という分担で動きます。派遣先は派遣元の協定の範囲内でしか残業をさせられず、超過すれば派遣先が労基法第36条違反となります。この構造を支えるのは、派遣先で発生した実労働時間を派遣元へ正確に届けるデータの流れです。
紙やExcelの手作業では、転記ミス・集計遅れ・分散管理という3つのリスクが避けられません。勤怠データを取込で自動データ化し、二重入力をなくして派遣先別に一元管理すれば、36協定上限のチェックから給与計算までを構造的に効率化でき、過重労働と法令違反の双方を防ぐ土台になります。
出典: 労働者派遣法第44条、労働基準法第36条、厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」、e-Gov法令検索
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