
派遣元が行う派遣スタッフの年末調整|対象者・扶養控除申告書・掛け持ち・退職者【2026年版】
派遣スタッフの年末調整は、雇用主である派遣元(派遣会社)が行います。派遣先ではありません。派遣スタッフに給与を支払い、毎月の所得税を源泉徴収しているのは派遣元であり、その1年分の所得税を再計算して精算する年末調整も、給与の支払者である派遣元の義務だからです。
ただし派遣業では、複数の派遣会社に登録する掛け持ちスタッフ、契約満了で年の途中に就業が終わる登録型スタッフ、月ごとに変わる勤務先など、一般企業にはない事情が絡み、対象者の判定や源泉徴収票の交付でつまずきやすいのが実情です。
本記事は、従業員20〜100名規模の派遣元の実務担当者を対象に、年末調整の対象者の判定、掛け持ちスタッフの甲欄・乙欄の扱い、退職者の源泉徴収票の交付期限、11月から1月の進め方までを、所得税法の条文に沿って早見表で整理しました。
結論:派遣スタッフの年末調整は雇用主である派遣元が行う
年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計額と、1年間の給与総額から計算した本来の年税額との差額を精算する手続きです(所得税法第190条)。過不足は12月または翌年1月の給与で還付・追徴します。派遣元が押さえるべき論点を早見表にまとめました。
| 論点 | 派遣元の実務での結論 |
|---|---|
| 誰が行うか | 給与を支払う派遣元(雇用主)。派遣先は行わない |
| 対象者 | 扶養控除等申告書を提出し12月まで在籍するスタッフ(甲欄) |
| 対象外 | 乙欄(他社に申告書提出)・年途中退職・給与総額2,000万円超 |
| 掛け持ち | 申告書を出した1社だけが実施。他社は乙欄で対象外 |
| 源泉徴収票の交付 | 在籍者は翌年1月31日まで/年途中退職者は退職後1か月以内 |
| 給与支払報告書 | 前年中に給与を支払った全員(退職者を含む)を各人の1月1日現在の住所地市区町村へ1月31日まで提出 |
出典: 所得税法第190条・第194条・第226条、地方税法第317条の6を基に自社整理

以降で、対象者の判定・掛け持ちの甲乙欄・退職者の源泉徴収票・年間の進め方を順に整理します。
年末調整の対象になる派遣スタッフ・ならないスタッフ

年末調整でまず迷うのが、登録スタッフのうち誰を対象にするかです。対象・対象外を条文に沿って切り分けます。
対象者の条件(12月まで在籍・扶養控除等申告書の提出)
年末調整の対象になるのは、その年最初の給与支払日の前日までに給与所得者の扶養控除等申告書を提出し(所得税法第194条)、12月の給与支払時点で在籍しているスタッフです。この申告書を提出した給与は源泉徴収税額表の甲欄で計算され、年末調整の対象になります。派遣元は、登録スタッフから申告書を確実に回収することが出発点です。
年の途中で就業を開始し年末まで在籍しているスタッフも、申告書を提出していれば対象です。同じ年に前職の給与がある場合は、前職の源泉徴収票を回収し、自社の給与と合算して年税額を計算します。
対象外になるケース(年途中退職・従たる給与・年収2,000万円超)
次のスタッフは派遣元の年末調整の対象外です。第一に扶養控除等申告書を他社へ提出している掛け持ちスタッフ(自社では従たる給与=乙欄)、第二に年の途中で退職し年末に在籍しないスタッフ、第三にその年の給与総額が2,000万円を超えるスタッフです(所得税法第190条)。これらのスタッフは本人が確定申告で精算します。
ただし、12月に支給日が到来する給与を受けた後に退職した人や、死亡・著しい心身障害で退職し本年中の再就職が見込めない人など、年途中退職でも年末調整の対象になる例外があります。退職時期と申告書の提出状況を確認しないと精算漏れになるため注意します。
掛け持ち・複数派遣先スタッフの甲欄・乙欄の扱い

派遣業で最も判定が難しいのが、複数の勤務先で働くスタッフの扱いです。掛け持ちには「複数の派遣会社に登録するケース」と「同じ派遣元で複数案件を掛け持ちするケース」があり、扱いが異なります。
主たる給与(甲欄)と従たる給与(乙欄)の判定
扶養控除等申告書は、主たる給与の支払者1社にしか提出できません。申告書の提出を受けた会社は甲欄で源泉徴収して年末調整を行い、提出のない会社は乙欄で源泉徴収します(所得税法第194条)。乙欄の給与は年末調整の対象にならず、スタッフ本人が全社分を合算して確定申告します。
派遣元は、自社が甲欄か乙欄かを申告書の提出有無で機械的に判定できます。掛け持ちスタッフから年末調整の依頼を受けても、申告書が他社に出ていれば自社では対象外である点を、登録時に説明しておくとトラブルを防げます。
| 区分 | 扶養控除等申告書 | 源泉徴収 | 年末調整 |
|---|---|---|---|
| 甲欄(主たる給与) | 自社に提出済み | 甲欄で控除を反映 | 自社で実施 |
| 乙欄(従たる給与) | 他社に提出(自社は未提出) | 乙欄で多めに徴収 | 自社では対象外(本人が確定申告) |
出典: 所得税法第194条・国税庁「源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)」を基に自社整理
同一派遣元で複数案件を掛け持ちする場合の年間集計
同じ派遣元が雇用し、複数の派遣先・案件を掛け持ちさせているスタッフは、案件ごとに給与を分けず、自社が支払った給与をすべて合算して1人分として年末調整します。単価や勤務先が案件ごとに違っても、雇用主が同一であれば給与は1本にまとまります。案件別にExcelシートを分けて管理していると、この合算で漏れが生じやすく、年間支給額がずれる原因になります。
退職した派遣スタッフの年末調整と源泉徴収票

登録型派遣では、契約満了で年の途中に就業が終わるスタッフが多く発生します。退職者の年末調整と書類交付は、入退社が激しい派遣業で漏れやすいポイントです。
年の途中で退職したスタッフの扱い
年末に在籍しない退職者は、原則として派遣元の年末調整の対象外です。退職時点までの給与にかかる源泉徴収票を交付し、精算は再就職先の年末調整か本人の確定申告に委ねます。退職者に源泉徴収票を渡し忘れると、スタッフは再就職先で年末調整ができず、後日の再発行依頼という手戻りが発生します。退職処理と源泉徴収票の交付は必ずセットで運用します。
源泉徴収票の交付期限(翌年1月31日)と給与支払報告書
源泉徴収票の交付期限は、通常の在籍スタッフは翌年1月31日まで、年の途中で退職したスタッフは退職日以後1か月以内です(所得税法第226条)。あわせて、前年中に給与を支払ったスタッフについて、各人の1月1日現在の住所地の市区町村へ給与支払報告書を1月31日までに提出します(地方税法第317条の6)。年の途中で退職したスタッフも対象で、退職者は前年中の支払額が30万円以下の場合に各市区町村の運用で提出を省略できます。給与支払報告書は翌年度の住民税の計算に使われます。
| 書類 | 提出・交付先 | 期限 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票(在籍者) | 本人・税務署 | 翌年1月31日まで |
| 源泉徴収票(年途中退職者) | 本人・税務署 | 退職日以後1か月以内 |
| 給与支払報告書 | 前年に給与を支払った全員(退職者含む)を1月1日現在の住所地市区町村 | 翌年1月31日まで |
出典: 所得税法第226条・地方税法第317条の6を基に自社整理
源泉徴収票と給与支払報告書は同じ給与データから作成されるため、記載内容は一致していなければなりません。手作業で別々に作ると、片方だけ金額がずれる不整合が起こります。
派遣元の年末調整の進め方と脱Excelのポイント
年末調整は11月から1月にかけて集中します。派遣スタッフは人数が多く入退社も多いため、時期ごとに作業を区切って進めると漏れを防げます。
11月〜1月の年末調整タイムライン
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 11月 | 扶養控除等申告書・保険料控除申告書の配付と回収 |
| 12月 | 申告内容の確認・年税額の計算・過不足の精算(12月給与へ反映) |
| 翌年1月 | 源泉徴収票の交付・給与支払報告書の提出・法定調書の作成 |
出典: 国税庁「年末調整のしかた」を基に自社整理

登録スタッフが多いほど、申告書の回収状況の管理と、案件ごとに分散した月次データの年間集計に手間がかかります。
給与システムと連動して源泉徴収票を自動出力する(派遣HUB)
派遣の年末調整でボトルネックになるのは、案件ごとに分散した月次の給与・控除データを1年分に集計し直す作業です。毎月の派遣会社の給与計算を自動化しておけば、支給額・源泉徴収税額・社会保険料控除額が蓄積され、年末調整の年間集計へそのまま引き継げます。社会保険料控除は年末調整の控除項目の一つで、派遣スタッフの社会保険・有給休暇管理を給与と連動させておくと転記が不要になります。
| 年末調整の入力項目 | 派遣HUBでの扱い |
|---|---|
| 月次の課税支給額・賞与 | 給与モジュールから自動集計 |
| 源泉徴収税額(甲欄・乙欄) | 月次の計算結果から自動転記 |
| 社会保険料控除額 | 給与控除データから自動転記 |
| 扶養控除等申告書の記載(扶養人数等) | スタッフから回収し手入力 |
| 生命保険料・地震保険料控除 | 証明書を確認し手入力 |
出典: 派遣HUBの給与・スタッフ管理モジュールのデータ項目定義に基づく自社整理(自社設計値)
派遣HUBは、勤怠・給与計算から源泉徴収票・給与支払報告書の出力までを1つのデータで連動させ、月次で蓄積した支給額・源泉徴収税額・社会保険料控除額を年末調整の年間集計へ引き継ぎます。掛け持ちスタッフの甲欄・乙欄も申告書の提出状況で判定でき、退職者の源泉徴収票の交付漏れも防げます。月額¥2,980/名(税込)から利用できます。
よくある質問
派遣スタッフの年末調整は派遣元と派遣先のどちらが行いますか?
雇用主である派遣元(派遣会社)が行います。給与を支払い所得税を源泉徴収しているのは派遣元であり、その年税額を精算する年末調整も派遣元の義務です(所得税法第190条)。派遣先は派遣スタッフに給与を支払わないため、年末調整は行いません。
掛け持ちで複数の派遣会社に登録しているスタッフの年末調整はどうなりますか?
扶養控除等申告書を提出した1社(主たる給与=甲欄)だけが年末調整を行います。申告書を提出していない他社は乙欄で源泉徴収するのみで年末調整は行わず、スタッフ本人が全社分を合算して確定申告で精算します(所得税法第194条)。
年の途中で退職した派遣スタッフの年末調整と源泉徴収票はどうすればよいですか?
年末に在籍しない年途中退職者は、原則として派遣元の年末調整の対象外です。退職時点までの給与にかかる源泉徴収票を退職日以後1か月以内に交付し(所得税法第226条)、精算は再就職先の年末調整か本人の確定申告に委ねます。
扶養控除等申告書を提出していない派遣スタッフは年末調整の対象になりますか(甲欄・乙欄)?
なりません。申告書を提出していないスタッフには乙欄が適用され、自社の年末調整の対象外です。年末調整は申告書を提出した甲欄のスタッフに対して行うため、まず申告書を確実に回収することが前提になります(所得税法第194条)。
派遣スタッフの源泉徴収票はいつまでに交付する必要がありますか?
在籍スタッフには翌年1月31日まで、年途中退職者には退職日以後1か月以内に交付します(所得税法第226条)。あわせて、前年中に給与を支払ったスタッフ(年途中退職者を含む)について、各人の1月1日現在の住所地市区町村へ給与支払報告書を1月31日までに提出します(地方税法第317条の6。退職者は前年の支払額30万円以下なら各市区町村の運用で省略可)。
派遣管理システムで年末調整の実務は効率化できますか?
できます。毎月の給与計算で支給額・源泉徴収税額・社会保険料控除額を蓄積しておけば、年末調整の年間集計へ自動で引き継げます。掛け持ちの甲欄・乙欄判定や退職者の源泉徴収票交付も、給与データと連動させることで漏れを防げます。
まとめ:派遣スタッフの年末調整は派遣元の年次実務として仕組み化する
派遣スタッフの年末調整は、雇用主である派遣元が行う年次実務です。対象になるのは扶養控除等申告書を提出し12月まで在籍する甲欄のスタッフで、他社に申告書を出す掛け持ちスタッフ(乙欄)・年途中退職者・給与総額2,000万円超のスタッフは対象外になります。
判定の分かれ目は申告書の提出状況と在籍状況であり、これを登録スタッフごとに正確に管理できるかが精度を左右します。退職者への源泉徴収票の交付(退職後1か月以内)や、給与支払報告書の1月31日提出まで含め、月次の給与データと連動させて年間集計を自動化すれば、入退社の多い派遣業でも漏れなく回せます。
出典: 所得税法第190条(年末調整)、所得税法第194条(給与所得者の扶養控除等申告書の提出)、所得税法第226条(源泉徴収票の交付)、地方税法第317条の6(給与支払報告書の提出義務)、国税庁「年末調整のしかた」「源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)」
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