労働契約申込みみなし制度とは|違法派遣5類型と派遣元の防止策【2026年版】
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労働契約申込みみなし制度とは|違法派遣5類型と派遣元の防止策【2026年版】

2026年8月20日26分で読める

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法な労働者派遣を受け入れた時点で、その派遣労働者に対し、派遣元との間の労働条件と同一の内容で直接雇用を申し込んだものとみなす制度です(出典: 労働者派遣法第40条の6)。引き金は派遣先の違法行為ですが、その結果として派遣元は、育てたスタッフと大切な取引先を同時に失いかねません。

「うちは派遣先の違反まで管理できない」と感じるかもしれません。しかし、みなし制度の対象となる5つの違法派遣は、いずれも派遣元の台帳・契約・許可情報で事前に兆候をつかめるものばかりです。派遣先だけの問題として片づけると、気づかないうちにスタッフが直接雇用へ移り、派遣契約そのものが消えるリスクを負います。

本記事では、みなし制度の仕組み(いつ・何がみなされるか)、対象となる違法派遣の5類型、派遣元が負う具体的なリスク、そして5類型の入口を管理で塞ぐ防止策を、派遣法40条の6の条文に沿って派遣元の実務目線で解説します。

結論:労働契約申込みみなし制度とは、違法派遣時に派遣先が直接雇用を申し込んだとみなす制度

労働契約申込みみなし制度は、派遣先が5類型の違法派遣に該当する行為をした「その時点」で、派遣労働者への直接雇用の申込みがあったものとみなす仕組みです。派遣労働者がこの申込みを承諾すれば、派遣先との間に直接の労働契約が成立します。まず全体像を早見表で示します。

論点内容根拠
何がみなされるか派遣元との労働条件と同一の直接雇用を申し込んだとみなす労働者派遣法第40条の6第1項
いつみなされるか違法派遣に該当する行為をした時点同第1項
対象の違法派遣禁止業務・無許可・事業所単位/個人単位の期間制限・偽装請負等の5類型同第1項第1〜5号
例外違法と知らず、知らないことに過失がなければ適用外(善意無過失)同第1項ただし書
承諾できる期間違法行為が終了した日から1年同第40条の6第2項
施行2015年(平成27年)10月1日施行改正労働者派遣法

制度の主眼は派遣先への抑止ですが、直接雇用が成立すればスタッフは派遣先へ移り、派遣元は人材と契約を失います。派遣元にとっては「派遣先に違法行為をさせない」ことが、そのまま自社防衛に直結します。

違法派遣の発生から労働契約申込みみなし・承諾までの流れと派遣元への影響を示した早見図
違法派遣の発生から労働契約申込みみなし・承諾までの流れと派遣元への影響を示した早見図

みなし制度の仕組み:いつ・何が「みなされる」のか

みなし制度は「違法行為があれば漠然と何かが起きる」ものではなく、みなされる内容・タイミング・承諾期間が条文で決まっています。まずこの3点を正確に押さえます。

違法派遣の時点で、派遣元と同一労働条件の直接雇用申込みがみなされる(労働者派遣法第40条の6)

みなされるのは、派遣先が「その時点で派遣労働者に適用されていた労働条件と同一の労働条件」で直接雇用を申し込んだという事実です(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項)。賃金・就業時間・契約期間などは、違法行為の時点で派遣元と派遣労働者の間にあった条件がそのまま引き継がれ、派遣先が新たに条件を提示するわけではありません。

このみなしは、派遣先の違法行為があった時点で自動的に発生します。行政の処分や裁判の判決を待つ必要はなく、後から違法だったと判明した場合でも、その行為の時点にさかのぼって申込みがあったものとして扱われます。

善意無過失の例外と、みなし申込みが有効な1年間の承諾期間

ただし、派遣先がその行為が違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことについて過失がなかったときは、みなしは適用されません(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項ただし書)。これを善意無過失といいます。もっとも、期間制限や許可の有無は派遣先が確認できる事項であり、「知らなかった」が過失なしと認められる場面は限られます。

みなされた申込みは、違法行為が終了した日から1年を経過する日までの間、派遣先が撤回できません(出典: 労働者派遣法第40条の6第2項)。この期間内に派遣労働者が承諾すれば、派遣先との直接雇用が成立します。派遣元から見れば、違法状態を解消した後も1年間はスタッフ流出のリスクが続くことを意味します。

みなされる労働条件・発生タイミング・善意無過失の例外・1年間の承諾期間を整理した図解
みなされる労働条件・発生タイミング・善意無過失の例外・1年間の承諾期間を整理した図解

みなしを発動させる違法派遣の5類型(労働者派遣法第40条の6第1項)

みなし制度の対象となる違法派遣は、労働者派遣法第40条の6第1項の第1号から第5号までに列挙された5つの類型です。条番号とともに早見表で俯瞰します。

5類型を条番号付き早見表で俯瞰(禁止業務・無許可・期間制限・偽装請負)

類型内容根拠
1. 禁止業務への派遣受入れ港湾運送・建設・警備・医療関係業務の一部など、派遣が禁止された業務に従事させる第40条の6第1項第1号(第4条)
2. 無許可事業主からの受入れ労働者派遣事業の許可を受けていない派遣元から派遣を受け入れる同項第2号
3. 事業所単位の期間制限違反意見聴取の手続きを経ず、事業所単位の派遣可能期間(原則3年)を超えて受け入れる同項第3号
4. 個人単位の期間制限違反同一の組織単位で同じ派遣労働者を3年を超えて受け入れる同項第4号
5. いわゆる偽装請負等法の適用を免れる目的で請負等の名目で契約し、実態は労働者派遣を受け入れる同項第5号

第1号から第4号までは違法の事実があればみなしの対象になりますが、第5号(偽装請負等)だけは「労働者派遣法等の適用を免れる目的」という主観的な要件が加わります(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項)。禁止業務は労働者派遣法第4条で定められています。

中小派遣会社で起こりやすい類型(無許可・期間制限・偽装請負)

5類型のうち、中小派遣会社の実務で特に起こりやすいのは、無許可・期間制限・偽装請負の3つです。

無許可のリスクは、許可の有効期間の更新を失念したまま派遣を続けるケースで表面化します。許可要件と更新手続きは労働者派遣事業の許可要件と更新手続きで解説しています。

期間制限は、事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日を手作業で追い切れず、意見聴取を経ないまま3年を超えてしまう形で起こります。抵触日の管理は派遣の3年ルール・抵触日を手作業で管理するリスクと自動化の方法を参照してください。

偽装請負は、請負契約なのに発注者がスタッフへ直接指示する状態で、二重派遣・偽装請負を防ぐ管理体制の作り方で判定基準を詳しく扱っています。

中小派遣会社で起こりやすい無許可・期間制限・偽装請負の3類型と発生要因を示した図解
中小派遣会社で起こりやすい無許可・期間制限・偽装請負の3類型と発生要因を示した図解

派遣元が負うリスク:スタッフと取引先を同時に失う

みなし制度は派遣先に対する制度ですが、実際に大きな損失を被るのは派遣元です。人材と取引先という事業の二本柱を、同時に失いかねません。

スタッフが派遣先に直接雇用される=人材の流出

みなしが成立し派遣労働者が承諾すると、そのスタッフは派遣先の直接雇用に移ります。派遣元は、採用コストをかけて確保し、教育訓練を重ねて戦力化したスタッフを失うことになります。

派遣元にとってスタッフは最大の経営資源です。一人が抜けるだけでなく、直接雇用に移った事例が広まれば、他のスタッフの動揺や他社への流出を招くおそれもあります。違法派遣は「派遣先の問題」ではなく、自社の人材基盤を直接揺るがす問題として捉える必要があります。

取引先(派遣先)との信頼・契約関係の毀損と許可事業への影響

違法派遣が表面化すれば、取引先である派遣先との信頼関係も損なわれます。派遣先は行政指導や企業名公表のリスクを負うため、違法状態を招いた派遣元との取引を見直す可能性があります。

さらに、派遣元自身が無許可派遣や偽装請負に関与していれば、労働者派遣事業の許可の取消しや事業改善命令など、事業継続そのものに関わる行政処分の対象になり得ます。一件の違法派遣が、スタッフ・取引先・許可という3つを同時に揺るがすのが、みなし制度の怖さです。

みなし制度による派遣元の3つの損失(人材流出・取引先の信頼毀損・許可事業への影響)を示した図解
みなし制度による派遣元の3つの損失(人材流出・取引先の信頼毀損・許可事業への影響)を示した図解

派遣元がみなしを防ぐ管理体制

みなし制度への最大の防御は、5類型の違法派遣を「起こさせない」ことです。5類型はいずれも、派遣元がもともと持つデータで事前に兆候を検知できます。

5類型に対応する事前チェックの検知マップ表(自社整理)

派遣HUBの機能に基づき、5類型それぞれをどの台帳・データで事前検知できるかを自社整理したのが、次の検知マップです。

違法派遣の類型事前検知に使うデータチェックの着眼点
禁止業務契約マスタ(業務内容)契約の業務内容が禁止業務に該当しないか
無許可許可番号・有効期限管理自社の許可有効期限が切れていないか
事業所単位の期間制限抵触日管理(事業所単位)意見聴取を経ずに抵触日を超えていないか
個人単位の期間制限抵触日管理(個人・組織単位)同一組織単位で3年を超えていないか
偽装請負等契約と就業実態の突合契約形態と実際の指揮命令が一致しているか

出典: 労働者派遣法第40条の6第1項第1〜5号を基に、派遣HUBの台帳・契約管理機能へ対応づけた自社整理。

重要なのは、5類型が「契約情報」「許可情報」「抵触日」「就業実態」という、派遣元がもともと持っている情報の延長線上で検知できる点です。特別な調査ではなく、日々の台帳と契約を正確に保つことが、そのまま防止策になります。台帳の整備は派遣元管理台帳の書き方と保管ルールを参照してください。

5類型の違法派遣を契約・許可・抵触日・就業実態のデータで事前検知する検知マップ表の図解
5類型の違法派遣を契約・許可・抵触日・就業実態のデータで事前検知する検知マップ表の図解

契約と就業実態をデータで一元化し定期突合する

検知マップを機能させる鍵は、契約と就業実態を別々に管理しないことです。契約はExcel、勤怠は別ファイル、許可情報は紙、というように分散していると、抵触日の超過や契約と実態のズレに気づくのが遅れます。

契約・派遣元管理台帳・抵触日・就業実績を同じデータでつなぎ、定期的に突合する運用にすれば、期間制限の接近や偽装請負の兆候を早期に把握できます。派遣HUBは、これらを一元管理し、二重入力を減らしながら5類型の入口を継続的に点検できる設計です(自社設計値)。手作業では見落としがちな整合チェックをデータで仕組み化することが、みなし発動の予防につながります。

契約・台帳・抵触日・就業実績を一元化し定期突合してみなしを予防する運用フローの図解
契約・台帳・抵触日・就業実績を一元化し定期突合してみなしを予防する運用フローの図解

よくある質問

労働契約申込みみなし制度とは何ですか?

派遣先が違法な労働者派遣を受け入れた時点で、その派遣労働者に対し、派遣元との間の労働条件と同一の内容で直接雇用を申し込んだものとみなす制度です(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項)。派遣労働者が承諾すれば、派遣先との直接雇用が成立します。

みなし制度の対象となる違法派遣の5類型は何ですか?

禁止業務への派遣受入れ、無許可事業主からの受入れ、事業所単位の期間制限違反、個人単位の期間制限違反、いわゆる偽装請負等の5つです(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項第1〜5号)。

派遣先が違法と知らなかった場合もみなし制度は適用されますか?

違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がなかったとき(善意無過失)は適用されません(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項ただし書)。ただし期間制限や許可の有無は確認できる事項のため、過失なしと認められる場面は限られます。

みなされた直接雇用の申込みはいつまで承諾できますか?

違法行為が終了した日から1年を経過する日までの間、派遣先は申込みを撤回できず、派遣労働者はその間に承諾できます(出典: 労働者派遣法第40条の6第2項)。

みなし制度で不利益を受けるのは派遣先だけですか(派遣元への影響は)?

制度上の名宛人は派遣先ですが、実際にはスタッフの流出、取引先との信頼毀損、無許可や偽装請負に関与した場合の許可取消しなど、派遣元も大きな影響を受けます。

偽装請負でも労働契約申込みみなし制度は適用されますか?

適用されます。ただし第5号は「法の適用を免れる目的」という主観的要件が加わる点が、ほかの類型と異なります(出典: 労働者派遣法第40条の6第1項第5号)。請負と派遣の区分は二重派遣・偽装請負を防ぐ管理体制の作り方で解説しています。

まとめ:5類型の入口を管理で塞ぎ、みなしの発動を防ぐ

労働契約申込みみなし制度は、派遣先の違法派遣を引き金に、派遣元がスタッフと取引先を同時に失いかねない制度です。対象は、禁止業務・無許可・事業所単位/個人単位の期間制限・偽装請負等の5類型で、いずれも派遣先の違法行為の時点で自動的にみなしが発生します(労働者派遣法第40条の6)。

最大の防御は、5類型を起こさせないことです。5類型はすべて、契約・許可・抵触日・就業実態という派遣元が持つデータで事前に兆候をつかめます。台帳と契約を正確に保ち、定期的に突合する運用を仕組み化すれば、みなしの発動そのものを未然に防げます。

出典: 労働者派遣法第40条の6(第1項第1〜5号・ただし書・第2項)、労働者派遣法第4条(派遣が禁止される業務)、厚生労働省「労働契約申込みみなし制度について」、労働者派遣法第40条の6の施行日(2015年10月1日)、e-Gov法令検索。


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