
二重派遣・偽装請負を防ぐ管理体制の作り方|派遣と請負の区分【2026年版】
「派遣したスタッフが、派遣先からさらに別の会社へ送られて働いている」「請負契約のはずなのに、発注者が直接スタッフに指示を出している」——こうした状態に心当たりはありませんか。これらは「二重派遣」「偽装請負」と呼ばれ、いずれも法律で禁止された違法行為です。
二重派遣・偽装請負は、派遣会社が意図せず巻き込まれることも多く、発覚すれば許可取消や罰則のリスクを負います。本記事では、二重派遣がなぜ違法なのか、偽装請負と適正な請負を分ける判定基準は何かを、指揮命令と労務管理の観点から整理します。そのうえで、中小派遣会社が違反を未然に防ぐための契約・記録の管理体制を具体的に解説します。
結論:二重派遣も偽装請負も「指揮命令の所在」で違法判定される
二重派遣・偽装請負を防ぐ要点は1つです。「誰がスタッフに指揮命令を出しているか」を契約と実態の両面で一致させること。指揮命令する者と雇用・契約関係がズレた瞬間に、違法と判定されます。3つの形態の違いを早見表で整理します。
| 形態 | 指揮命令する者 | 適法性 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 適正な派遣 | 派遣先(契約上の派遣先のみ) | 適法 | 労働者派遣法 |
| 二重派遣 | 派遣先からさらに別の会社 | 違法 | 職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止) |
| 偽装請負 | 発注者(請負契約なのに発注者が直接指示) | 違法 | 労働者派遣法・職業安定法第44条 |
| 適正な請負 | 請負会社(自社の責任者が指示) | 適法 | 37号告示の区分基準 |
二重派遣は、派遣先が受け入れたスタッフをさらに別の会社へ送り込み、その会社の指揮命令下で働かせる行為で、職業安定法第44条が禁じる「労働者供給」にあたります(出典: 職業安定法第44条、厚生労働省「労働者供給事業業務取扱要領」)。偽装請負は、契約書は請負でも実態は発注者がスタッフを直接指揮命令している状態を指します。

二重派遣が違法となる理由
二重派遣がなぜ禁止されているのか、その法的根拠と派遣会社が負うリスクを整理します。意図せず加担してしまうケースが多いため、発生パターンを知っておくことが防止の第一歩です。
職業安定法第44条が禁じる「労働者供給」にあたる
二重派遣が違法とされる根拠は、職業安定法第44条の労働者供給事業の禁止です。最初の派遣先は、スタッフを自ら雇用していないにもかかわらず別の会社へ送り出すため、これは労働者派遣ではなく実質的に「労働者供給」を業として行うことになります(出典: 職業安定法第44条、厚生労働省「労働者供給事業業務取扱要領」)。
労働者供給は戦前の人貸し業や中間搾取の温床となった歴史があり、原則として禁止されています。罰則も重く、労働者供給に該当する場合は供給元・供給先の双方に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、法人にも罰金が及びます(出典: 職業安定法第64条・第67条)。
派遣会社が意図せず巻き込まれる発生パターン
二重派遣は、派遣会社が直接手を下さなくても、派遣先の行動によって成立してしまう点が厄介です。代表的な発生パターンを表で整理します。
| 発生パターン | 具体例 | 派遣会社のリスク |
|---|---|---|
| 派遣先からの再派遣 | 派遣先がグループ会社にスタッフを送り就労させる | 供給元として責任を問われうる |
| 客先常駐の又貸し | 派遣先のさらに先の現場で指示を受ける | 指揮命令系統の逸脱 |
| 多重下請けでの就労 | 元請の現場で下請の派遣スタッフが働く | 偽装請負と二重派遣の複合 |
| 名目上の出向 | 実態は派遣だが「出向」と称して転々 | 供給事業とみなされる |
これらは契約書だけ見れば適法に見えても、実態で違法と判定されます。派遣先が実際にどこでスタッフを働かせているかを把握する仕組みが欠かせません。派遣先責任者の選任と記録を確実にする方法は派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務で詳しく解説しています。

偽装請負と適正な請負の区分基準
請負契約を結んでいても、実態が派遣であれば「偽装請負」として違法になります。両者を分ける基準は、1986年に旧労働省が定めた「37号告示」に明記されています(出典: 労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、厚生労働省)。
37号告示が定める2つの判定軸
37号告示は、請負事業者が次の2つを自ら満たして初めて「適正な請負」と認める、としています(出典: 労働省告示第37号、厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」)。
1つ目は労務管理上の独立性です。請負会社が、業務の遂行方法・労働時間・休憩・残業などの指示や評価を自ら行うこと。発注者がスタッフに直接これらを指示すれば、その時点で派遣(偽装請負)と判定されます。2つ目は事業経営上の独立性で、必要な資金・資材・設備を自ら調達し、企業として独立して業務を処理していることが求められます。
| 判定軸 | 適正な請負 | 偽装請負(違法) |
|---|---|---|
| 業務の指示 | 請負会社の責任者が指示 | 発注者が直接スタッフに指示 |
| 労働時間管理 | 請負会社が管理 | 発注者が出退勤を管理 |
| 資金・設備 | 請負会社が自ら調達 | 発注者の設備をそのまま使用 |
| 業務の独立性 | 自社の判断で完結 | 発注者の業務に組み込まれる |
よくある偽装請負のグレーゾーン
実務では「悪意なく偽装請負になっている」ケースが目立ちます。たとえば、発注者の社員が請負スタッフに業務手順を直接教える、朝礼で発注者がスタッフに当日の作業を割り振る、繁忙時に発注者がスタッフへ残業を依頼する——いずれも指揮命令の逸脱です。
判断に迷う事例については、厚生労働省が「37号告示関係疑義応答集」を公表しており、日常会話と業務指示の線引きなどが示されています(出典: 厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」)。請負と派遣のどちらで対応すべきか迷ったら、自社で囲い込まず適正な派遣契約に切り替える判断も有効です。契約形態を電子化して管理する手順は労働者派遣契約書を電子化する完全ガイドで解説しています。

防止のための契約・記録の管理体制
二重派遣・偽装請負は、契約と実態のズレから生まれます。防ぐには「契約内容を明確にする」「実態を記録で押さえる」の2点を仕組み化することが重要です。
契約・台帳で指揮命令系統を明文化する
第一に、派遣契約書に指揮命令者を明記し、就業場所・業務内容を具体的に特定します。派遣先が勝手に就業場所を変えたり、別会社へ送ったりできないよう、契約段階で枠を固めることが二重派遣の予防になります。
第二に、派遣元管理台帳・派遣先管理台帳を正確に整備し、実際の就業状況と契約内容が一致しているかを定期的に突合します。台帳の記載項目は法令で定められており、漏れがあると違反を見逃す原因になります。記載必須項目と保管ルールは派遣元管理台帳の書き方と保管ルールで詳しく解説しています。
区分チェックリストで自社の状態を点検する
防止策として有効なのが、派遣・請負どちらに該当するかを定期点検するチェックリストです。下表のような判定項目を四半期ごとに確認すると、グレーゾーンを早期に発見できます。これは現場の派遣業の実務担当者が運用しているチェック観点を整理したものです。
| 点検項目 | 派遣=適切に運用できているか | 請負=偽装に陥っていないか |
|---|---|---|
| 指揮命令 | 契約上の派遣先のみが指示しているか | 発注者が直接指示していないか |
| 就業場所 | 契約で特定した場所か(又貸しなし) | 発注者の管理区域に混在していないか |
| 労働時間 | 派遣先が適正に管理しているか | 請負会社が独立管理しているか |
| 資金・設備 | (派遣では問わない) | 請負会社が自ら調達しているか |
こうした契約・台帳・点検の管理を紙やExcelで属人的に行うと、突合漏れや更新忘れが起こりがちです。派遣HUBは契約・派遣元管理台帳・就業実態を一元データで管理し、指揮命令者や就業場所の整合をシステム上で確認できます。契約から帳簿までを二重入力ゼロでつなぐことで、派遣業法コンプラの土台を支え、二重派遣・偽装請負の見落としを減らします。

よくある質問
二重派遣はなぜ禁止されているのですか?
二重派遣は、派遣先が雇用していないスタッフをさらに別の会社へ送り就労させるため、実質的に「労働者供給」にあたり職業安定法第44条で禁止されています(出典: 職業安定法第44条)。中間搾取や責任の所在が不明確になることを防ぐためで、違反には罰則が科されます。
偽装請負と適正な請負はどこで区別されますか?
発注者が請負スタッフに直接指揮命令しているかが分かれ目です。37号告示は、請負会社が業務遂行・労働時間の指示や資金・設備の調達を自ら行うことを求めており、これを満たさず発注者が直接指示すれば偽装請負と判定されます(出典: 労働省告示第37号、厚生労働省)。
偽装請負が発覚するとどんな罰則がありますか?
労働者供給に該当する場合、供給元・供給先の双方に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、法人にも罰金が及びます(出典: 職業安定法第64条・第67条)。無許可派遣に該当する場合は労働者派遣法に基づく罰則のほか、許可取消・行政指導の対象にもなります。
派遣先が勝手に二重派遣した場合、派遣元も責任を問われますか?
派遣元が実態を把握せず放置していた場合、供給元として責任を問われるおそれがあります。派遣先管理台帳や定期的な就業状況の確認で、契約外の就業を早期に検知する体制が重要です。契約で就業場所を特定し、又貸しを防ぐ枠組みを設けることが有効です。

まとめ:契約と実態の一致を仕組みで担保する
二重派遣も偽装請負も、突き詰めれば「指揮命令する者」と「契約・雇用関係」がズレることで違法になります。二重派遣は職業安定法第44条の労働者供給の禁止、偽装請負は37号告示の区分基準が判定の軸です。いずれも悪意なく陥るケースが多く、罰則や許可取消のリスクは中小派遣会社にとって致命的です。
防止の鍵は、契約書で指揮命令者と就業場所を明文化し、管理台帳で実態を記録し、区分チェックリストで定期点検すること。この3段階を属人的な作業に頼らず、データで一元管理する仕組みを整えれば、見落としによる違反リスクを大きく減らせます。
出典: 職業安定法第44条・第64条・第67条、労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」「労働者供給事業業務取扱要領」、e-Gov法令検索
違法リスクを管理体制で防ぐ
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