離職後1年以内の派遣禁止とグループ企業派遣8割規制【2026年版】
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離職後1年以内の派遣禁止とグループ企業派遣8割規制【2026年版】

2026年7月4日24分で読める

「この人、前に派遣先で働いていたらしいけど、派遣として戻して大丈夫だろうか」「グループ会社への派遣が多いけれど、何割までならセーフなのか」——派遣元の管理担当者なら、一度はこうした不安を抱えたことがあるはずです。離職後1年ルールとグループ企業派遣8割規制は名前も似ておらず別の制度ですが、どちらも違反すると行政指導や許可取消しにつながる重い規制です。

本記事では、混同されやすいこの2つの規制を1記事で整理します。それぞれの趣旨と対象範囲、8割規制の具体的な算定方法、そして派遣元が日々おこなうべき確認・記録の実務までを、労働者派遣法の条文と厚生労働省の公表資料を出典として明確に分けて解説します。読み終えれば、自社のどこをチェックすればよいかが一覧で把握できます。

結論:離職後1年規制とグループ8割規制は「対象」も「数え方」も別物

まず結論から言い切ります。離職後1年以内の派遣禁止は「特定の個人を、その人が離職した元勤務先へ派遣できない」という個人単位の規制です。一方、グループ企業派遣8割規制は「派遣元全体の派遣量のうち、グループ企業向けが8割を超えてはいけない」という事業所単位の総量規制です(出典: 労働者派遣法第40条の9、第23条の2)。

2つの規制を取り違えると、確認すべき対象も記録すべき項目も間違えてしまいます。下の早見表で違いを押さえてください。

比較項目離職後1年以内の派遣禁止グループ企業派遣8割規制
根拠条文派遣先=法第40条の9/派遣元=法第35条の5法第23条の2
規制の単位派遣労働者1人ごと(個人単位)派遣元事業主の全体(総量単位)
何を見るかその人の過去1年の直接雇用歴グループ企業向け派遣の労働時間割合
主な例外60歳以上の定年退職者60歳以上の定年退職者(算定から除外)
違反時派遣の差し止め・指導毎年度報告義務・指示違反は許可取消し対象
離職後1年規制とグループ8割規制の対象・数え方の違いを示す早見表
離職後1年規制とグループ8割規制の対象・数え方の違いを示す早見表

この2軸(個人単位か、総量単位か)を最初に分けておくことが、抵触を防ぐ第一歩です。以降の章でそれぞれを詳しく見ていきます。

離職後1年以内の派遣禁止:趣旨と対象範囲

なぜ「離職後1年」で禁止されるのか

離職後1年以内の派遣禁止は、直接雇用していた労働者をいったん辞めさせ、より低い労働条件の派遣労働者として同じ職場で受け入れる「直接雇用の派遣への置き換え」を防ぐために設けられた規制です。派遣先がこの仕組みを悪用すれば、社員の雇用安定や労働条件が損なわれかねないためです(出典: 厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」)。

条文上は、派遣先が離職後1年以内の元労働者を受け入れることを禁じ(法第40条の9第1項)、派遣元側にも、抵触すると分かっている派遣をおこなってはならない義務が課されています(法第35条の5)。つまり「受け入れてはいけない派遣先」と「送ってはいけない派遣元」の両面から規制される構造です。

対象になる人・ならない人

対象になるのは、派遣受入れの前1年以内に、その派遣先のいずれかの事業所で直接雇用されていた人です。雇用形態は問われず、正社員・契約社員・パート・アルバイトのいずれであっても、1日でも直接雇用されていれば対象になります(出典: 厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」)。

一方、明確な例外として、60歳以上の定年退職者は受け入れが認められています(出典: 厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」)。

ケース派遣の可否
半年前まで派遣先A社の契約社員だった人をA社へ派遣不可(抵触)
派遣先A社を3か月前に退職、別のB社へ派遣可(A社以外なら問題なし)
A社を60歳の定年で退職した人をA社へ派遣可(定年退職者の例外)
A社で1日だけアルバイトした人を11か月後にA社へ派遣不可(雇用形態・期間を問わず対象)
離職後1年規制で派遣できる人・できない人をケース別に整理した判定表
離職後1年規制で派遣できる人・できない人をケース別に整理した判定表

派遣先・派遣元それぞれの通知義務

この規制では、派遣元が法第35条にもとづいて派遣労働者の情報を派遣先へ通知し、それを受けた派遣先は、自社で受け入れると離職後1年規制に抵触すると判明した場合、速やかにその旨を派遣元へ通知することになっています(出典: 労働者派遣法第40条の9第2項)。派遣元・派遣先の双方が情報を突き合わせて初めて抵触を防げるため、派遣元は「この人の過去の勤務先はどこか」を契約前に把握しておく必要があります。スタッフの就業履歴は派遣元管理台帳でも管理が求められる項目です。台帳の記載・運用は派遣元管理台帳の書き方と保管ルール(記載必須18項目と自動化)で詳しく整理しています。

グループ企業派遣8割規制:算定方法と報告義務

8割規制の趣旨と対象グループの範囲

グループ企業派遣8割規制は、派遣元が自社の親会社や同じグループの会社にばかり労働者を派遣する「グループ内専属派遣」を抑え、派遣事業を特定企業の労務調整手段にしないために設けられています。派遣元事業主は、関係派遣先(グループ企業)への派遣割合が8割以下となるようにしなければなりません(出典: 労働者派遣法第23条の2、厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。

ここでいう「関係派遣先」とは、派遣元が連結子会社の場合は親会社およびその親会社の子会社、連結決算を導入していない場合は派遣元の親会社等およびその子会社等を指します(出典: 厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。自社がどの企業の傘下にあるか、資本関係を正しく把握することが算定の前提になります。

派遣割合の計算式

8割規制の割合は、人数ではなく「労働時間」で算定します。関係派遣先での派遣就業に係る総労働時間を、派遣元が雇用する全派遣労働者の派遣就業に係る総労働時間で割って求めます。このとき、60歳以上の定年退職者の労働時間は分子・分母の両方から除外します(出典: 厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。

派遣割合(%)= グループ企業での派遣総労働時間 ÷ 全派遣労働者の派遣総労働時間 × 100 (いずれも60歳以上の定年退職者の労働時間を除く)

グループ8割規制の派遣割合の計算式と算定の流れを示した図解
グループ8割規制の派遣割合の計算式と算定の流れを示した図解

たとえば、全派遣労働時間が月10,000時間で、うちグループ企業での就業が9,000時間なら割合は90%となり8割を超過します。ここに60歳以上の定年退職者の就業が含まれていれば、その時間を両方から差し引いて再計算します。人数で「だいたい何割」と感覚的に判断すると、稼働時間の偏りで実際の割合とずれるため注意が必要です。

毎年度の報告義務と違反のペナルティ

派遣元事業主は、関係派遣先への派遣割合を毎年度、厚生労働大臣に報告しなければなりません(出典: 労働者派遣法第23条の2、厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。報告をおこなわず、行政の指導・助言や指示に従わない場合は、許可取消しの対象になります(出典: 厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。マージン率の公開や事業報告など、派遣元には毎年度の情報開示・報告義務が複数あり、これらを取りこぼさない運用が欠かせません。マージン率公開の負荷軽減は派遣会社のマージン率公開を自動化する方法(2021年義務化と運用負荷の削減)で解説しています。

派遣元の管理・記録の実務:契約前チェックと年度集計

契約前にやるべき2つの確認

2つの規制は確認のタイミングが異なります。離職後1年規制は「個別の派遣契約を結ぶ前」、8割規制は「年度を通じた稼働の集計時」に効いてきます。実務では、契約前のチェックリストに次の独自整理(派遣HUBが派遣元の運用を整理したチェック項目)を組み込むと取りこぼしを防げます。

確認項目何を見るかどちらの規制
派遣予定先での直接雇用歴過去1年以内にその派遣先で雇用されていないか離職後1年規制
60歳以上の定年退職者か例外に該当するか(履歴・年齢)両規制(例外判定)
派遣先がグループ企業か資本関係・親子関係に該当するか8割規制
月次の稼働時間グループ企業向けの労働時間を継続集計8割規制
派遣先からの抵触通知法第40条の9第2項の通知の有無離職後1年規制
派遣元が契約前と年度集計で確認すべきチェック項目を規制別に並べた実務一覧表
派遣元が契約前と年度集計で確認すべきチェック項目を規制別に並べた実務一覧表

Excel管理では抵触を見逃しやすい理由

これらの確認をExcelや紙で運用すると、就業履歴がスタッフ台帳・契約書・タイムシートに分散し、契約のたびに過去歴を手作業で照合することになります。8割規制も、グループ企業向けの労働時間を毎月手集計していては、年度末になって初めて超過に気づくケースが起こりがちです。情報がつながっていないことが、抵触の見逃しと年度集計の遅れを生む根本原因です。脱Excelの全体像は中小派遣会社が派遣管理を脱Excel化する完全ガイドを参照してください。

データを一元化すれば確認は自動化できる

派遣HUBのように、履歴書(OCR)・契約・勤怠を取り込んで一元データ化しておけば、スタッフの直接雇用歴や年齢、派遣先のグループ該当などが台帳に常に揃った状態になります。データが揃っているからこそ、契約前の確認項目を画面上でチェックでき、グループ企業向けの労働時間も日々の勤怠から自動で積み上がります。年度の報告に向けた集計を月末にまとめて手計算する負担も減らせます。期間制限の代表例である3年ルールの管理を自動化する考え方は派遣の3年ルール・抵触日を手作業で管理するリスクと自動化の方法でも紹介しています。

一元データから就業履歴・グループ比率・年齢を自動チェックする派遣元の運用イメージ図
一元データから就業履歴・グループ比率・年齢を自動チェックする派遣元の運用イメージ図

よくある質問

離職後1年ルールは派遣元と派遣先のどちらが責任を負いますか

両方が義務を負います。派遣先は離職後1年以内の元労働者を受け入れてはならず(法第40条の9第1項)、派遣元も抵触すると分かっている派遣をしてはなりません(法第35条の5)。派遣先には抵触時の通知義務もあります(出典: 労働者派遣法第40条の9)。

アルバイトを1日しただけの人も離職後1年規制の対象ですか

対象になります。雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイト)や雇用期間を問わず、派遣先のいずれかの事業所で過去1年以内に1日でも直接雇用されていれば規制の対象です(出典: 厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」)。

グループ8割規制は人数で計算してよいですか

人数ではなく労働時間で計算します。グループ企業での派遣総労働時間を全派遣労働者の派遣総労働時間で割って算出し、60歳以上の定年退職者の労働時間は分子・分母から除外します(出典: 厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。

8割規制に違反するとどうなりますか

派遣元は派遣割合を毎年度厚生労働大臣に報告する義務があり、報告をせず行政の指導・助言や指示に従わない場合、許可取消しの対象になります(出典: 労働者派遣法第23条の2、厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」)。

60歳以上なら両方の規制で例外になりますか

60歳以上の「定年退職者」であれば、離職後1年規制では受け入れが認められ、8割規制では算定から除外されます(出典: 厚生労働省の各資料)。単に60歳以上というだけでなく、定年退職者であることが要件です。

まとめ:2つの規制を「個人単位」と「総量単位」で分けて管理する

離職後1年以内の派遣禁止は、特定の個人をその元勤務先へ派遣できない個人単位の規制(法第40条の9・第35条の5)です。グループ企業派遣8割規制は、派遣元全体のグループ向け派遣を労働時間で8割以下に抑える総量規制(法第23条の2)です。確認のタイミングも、前者は契約前、後者は年度を通じた集計時と異なります。

どちらも違反すれば指導や許可取消しにつながるため、就業履歴・年齢・グループ該当・稼働時間を一元的に管理し、契約前チェックと年度集計を仕組み化することが重要です。情報がつながっていれば、これらの確認は手作業から解放できます。

出典: 労働者派遣法第40条の9、第35条の5、第23条の2、厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」、厚生労働省「グループ企業内派遣の8割規制について」、e-Gov法令検索


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