
派遣会社の法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)と派遣元管理台帳の関係【2026年版】
派遣会社(派遣元)が整備すべき帳簿は、労働基準法上の法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)と労働者派遣法上の派遣元管理台帳の計4種類で、根拠法・記載事項・保存期間の起算日がそれぞれ異なる一方、労働者名簿・賃金台帳は派遣元管理台帳と一体で作成することが認められています。
この関係を曖昧にしたまま別々のExcelや紙で管理すると、同じデータを何度も入力することになり、帳簿間の不整合や保存期限の数え間違いが起きます。労働局・労働基準監督署の調査で指摘されやすい典型ポイントです。
本記事は派遣元の労務・管理部門向けに、三帳簿それぞれの義務、派遣元管理台帳との違いと一体作成の条件、保存期間・起算日、重複入力を絶つ一元整備の手順を整理します。
結論: 派遣元が整備する4帳簿の関係早見表
派遣元が整備する帳簿は、労働基準法の法定三帳簿と派遣法の派遣元管理台帳の計4種類です。このうち労働者名簿・賃金台帳は、法定の記載事項がそろっていれば派遣元管理台帳と合わせて一つの台帳として作成できます(昭和61年6月6日基発第333号)。
| 帳簿 | 根拠 | 主な記載事項 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 労基法107条・施行規則53条 | 氏名・生年月日・履歴・性別・住所・雇入年月日など | 5年(当分の間3年) | 死亡・退職・解雇の日 |
| 賃金台帳 | 労基法108条・施行規則54条 | 氏名・賃金計算期間・労働時間数・賃金額など8項目 | 5年(当分の間3年) | 最後の記入をした日(賃金支払期日が後ならその日) |
| 出勤簿(労働時間の記録) | 労基法109条・労働時間適正把握ガイドライン | 始業・終業時刻・労働日数など | 5年(当分の間3年) | 記録の完結の日(賃金支払期日が後ならその日) |
| 派遣元管理台帳 | 派遣法37条 | 派遣労働者ごとの18項目 | 3年 | 労働者派遣の終了の日 |
年数だけでなく起算日が帳簿ごとに違う点が、実務で混同しやすい急所です。

法定三帳簿とは: 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿それぞれの義務
法定三帳簿は、労働基準法が使用者に義務づける3帳簿の総称で、派遣会社も雇用するスタッフについて事業場ごとに整備します。
労働者名簿の記載事項と更新タイミング
労働者名簿は、日々雇い入れられる者を除く各労働者について事業場ごとに調製し、変更があれば遅滞なく訂正します(労基法107条)。記載事項は氏名・生年月日・履歴に加え、施行規則53条が定める性別・住所・従事する業務の種類・雇入年月日・退職の年月日と事由(解雇の場合は理由を含む)・死亡の年月日と原因です。
常時30人未満の事業場では「従事する業務の種類」の記入は不要です(施行規則53条2項)。厚労省公開の様式第19号のほか、必要事項がそろっていれば自社フォーマットでも構いません。
賃金台帳は賃金支払いの都度記入する
賃金台帳は、賃金支払いの都度遅滞なく記入することが義務づけられた帳簿です(労基法108条)。記載事項は施行規則54条の8項目で、氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜の労働時間数・基本給や手当など賃金の種類ごとの額・控除額です(様式第20号)。
つまり賃金台帳の元データは毎月の給与計算そのものです。給与計算工程の組み立て方は派遣会社の給与計算を自動化する方法|社保・所得税控除の手作業を減らす【2026年版】で解説しています。
出勤簿・労働時間記録の法的位置づけと保存義務
労働基準法に「出勤簿」という名前の条文はありませんが、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することを求めています。出勤簿・タイムカード等の労働時間の記録は、労基法109条の「その他労働関係に関する重要な書類」として保存義務の対象です。勤怠運用の効率化は派遣の勤怠管理を効率化する方法|タイムシート・打刻・派遣先承認【2026年版】を参照してください。

派遣元管理台帳との関係: 何が別で、どこまで一体化できるか
法定三帳簿が労働基準法上の義務であるのに対し、派遣元管理台帳は労働者派遣法上の義務です。
派遣元管理台帳は派遣法上の別帳簿
派遣元管理台帳は、派遣法37条に基づき派遣労働者ごとに作成する帳簿で、記載必須項目は現在18項目あります。項目の中身と書き方は派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】に譲ります。台帳をスタッフ1人単位で見た記録との関係は派遣の個人別記録と派遣元管理台帳の違い|記載事項・保存期間・二重管理を避ける書き方【2026年版】で解説しています。
労働者名簿・賃金台帳との一体作成が認められる条件
行政通達(昭和61年6月6日基発第333号)は、派遣労働者の労働者名簿・賃金台帳・派遣元管理台帳について、法令上の記載事項が具備されていれば必ずしも別個に作成する必要はなく、合わせて一つの台帳を作成して差し支えないとしています。条件は「各帳簿の法定記載事項がすべてそろっていること」で、一体化で記載を省略できるわけではありません。労働者名簿と賃金台帳の2つを合わせて調製することも施行規則55条の2で認められています(長野労働局「労働条件整備ハンドブック」)。
一体作成の実務メリットと運用上の注意点
一体作成の実務的な意味は、氏名・就業日・労働時間のような共通項目を1回の入力で済ませ、帳簿間の記載ズレをなくせることです。注意点は、一体化しても保存期間と起算日は帳簿ごとの規定が適用されること。一体の台帳は「一番長い期限に合わせて保存する」運用が安全です。

保存期間と起算日の違い一覧: いつから数えて何年保存か
保存年数は覚えていても、起算日を混同しているケースは少なくありません。
帳簿別の保存期間・起算日整理
労基法109条は労働者名簿・賃金台帳等の保存期間を5年と定めていますが、附則143条の経過措置により当分の間は3年とされています。起算日は施行規則56条が帳簿ごとに定めており、労働者名簿は労働者の死亡・退職・解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿等の重要書類はその完結の日です。ただし賃金台帳・出勤簿等とも、当該記録に係る賃金の支払期日が起算日より遅い場合は支払期日が起算日になります(施行規則56条2項)。月末締め・翌月払いの給与実務ではこの例外が原則的に適用される点に注意してください。一方、派遣元管理台帳は派遣法37条2項により3年間の保存義務で、起算日は労働者派遣の終了の日です(派遣法施行規則32条)。同じ「3年」でも数え始めが異なります。
保存期限管理の実務: 廃棄判断を手作業にしない
起算日はスタッフの退職日・最後の給与記入日・派遣終了日と、人や契約ごとにバラバラに発生します。紙やExcelで「どれが廃棄可能か」を手作業判定する運用は、判断漏れか「怖いので全部保管」のどちらかに倒れがちです。帳簿ごとに起算日と期限を持たせた期限マトリクスをデータで持ち、廃棄可否を機械的に判定できる状態が理想形です。

Excel・紙の分散管理の限界と4帳簿を一元整備する手順
4帳簿を別ファイルで持つ運用の最大の問題は、同じデータを何度も入力することです。これが調査で指摘される「帳簿間の不整合」の温床です。
4帳簿の記載項目重複マッピング: 同じデータを何回入力しているか
法令の記載事項リストを突き合わせると、4帳簿には共通の入力項目が複数あります。
| 記載項目 | 労働者名簿 | 賃金台帳 | 出勤簿 | 派遣元管理台帳 | 別管理時の入力回数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 氏名 | あり | あり | あり | あり | 最大4回 |
| 就業した日(労働日) | — | あり | あり | あり | 最大3回 |
| 始業・終業時刻/労働時間数 | — | あり | あり | あり | 最大3回 |
| 性別 | あり | あり | — | — | 最大2回 |
出所は労働基準法施行規則53条・54条、労働時間適正把握ガイドライン、派遣元管理台帳記載事項の各リストと、派遣HUBの帳票項目定義に基づく自社整理です。転記回数が多いほど、どこか1つを直し忘れて帳簿間がずれるリスクが増えます。
勤怠・給与データから帳簿へ: 一元整備の実務ステップ
一元整備の考え方は、「帳簿を4つ作る」のではなく「1つのデータから4つの帳簿の形で出せるようにする」ことです。実務ステップは次の順序です。
- スタッフマスタを一本化する(氏名・住所・雇入日を1箇所で管理し、労働者名簿と派遣元管理台帳の元にする)
- 勤怠記録をデータで取る(打刻・タイムシートを出勤簿と賃金台帳の労働時間数の共通ソースにする)
- 給与計算結果を賃金台帳に直結させる(支払いの都度記入の義務を計算処理と同時に満たす)
- 帳簿ごとの保存期限を起算日つきで登録する
なお、派遣先が作成する派遣先管理台帳は自社の台帳と突合する対象になるため、派遣先管理台帳の記載事項と書き方|派遣元が受領・突合する実務【2026年版】も併せて確認してください。
帳簿の整備は「調査対応のための追加業務」ではなく、日々の勤怠・給与データの持ち方を変えるだけで大半が済む領域です。自社の帳簿がいくつのファイルに分散しているかを数えることが見直しの第一歩です。

派遣会社の法定三帳簿に関するFAQ
派遣会社の法定三帳簿とは何ですか?
労働基準法に基づく労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(労働時間の記録)の総称です(労基法107条・108条・109条)。派遣会社も、雇用するスタッフについて事業場ごとに整備する義務があります。
登録しているだけでまだ就業していない派遣スタッフの分も労働者名簿は必要ですか?
労働者名簿は使用者が雇用する労働者について調製する帳簿のため、雇用契約が発生していない登録のみの段階では作成義務の対象になりません(労基法107条)。登録型派遣では派遣就業のつど雇用契約が成立するので、雇用が始まった時点で作成します。なお、日々雇い入れられる者は同条の対象外です。
派遣元管理台帳と労働者名簿・賃金台帳は1つにまとめて作成できますか?
できます。行政通達(昭和61年6月6日基発第333号)により、法令上の記載事項がすべて具備されていれば一つの台帳として作成して差し支えないとされています。ただし保存期間・起算日は帳簿ごとの規定が適用されるため、一番長く残る期限に合わせて保存するのが安全です。
賃金台帳や出勤簿の保存期間は何年ですか?起算日はいつですか?
原則5年、経過措置により当分の間は3年です(労基法109条・附則143条)。起算日は、賃金台帳が最後の記入をした日、出勤簿等の重要書類は記録の完結の日で、いずれも賃金支払期日がそれより後の場合は支払期日から数えます(施行規則56条2項)。派遣元管理台帳は別枠で、派遣終了日から3年です。
法定三帳簿を整備していない場合、罰則はありますか?
あります。労働者名簿・賃金台帳の調製義務や記録の保存義務(労基法107条〜109条)への違反は、30万円以下の罰金の対象です(労基法120条)。実際には調査での是正指導として顕在化することが多く、日常の帳簿整備がそのまま防御になります。
まとめ: 4帳簿の関係を押さえ、重複入力と保存漏れをなくす
派遣元の帳簿整備は、労基法の三帳簿と派遣法の派遣元管理台帳という「2つの法律・4つの帳簿」の関係を押さえることから始まります。労働者名簿・賃金台帳は台帳と一体作成が可能で、共通項目の重複入力を減らせます。一方、保存期間の起算日は帳簿ごとに異なるため、期限管理はデータで機械的に行う設計が安全です。「1つのデータから4つの帳簿を出す」体制への切り替えが、調査対応と日常業務の両方を軽くする近道です。
出典: 労働基準法第107条・第108条・第109条・第120条・附則第143条、労働基準法施行規則第53条・第54条・第55条の2・第56条、労働者派遣法第37条、労働者派遣法施行規則第32条、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)、行政通達(昭和61年6月6日基発第333号)、長野労働局「労働条件整備ハンドブック」、e-Gov法令検索。
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