
派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務【2026年版】
派遣事業を運営していると、許可申請の段階でも、日々の派遣契約の場面でも「責任者の選任」を求められます。派遣元責任者は誰でもなれるのか、派遣先責任者との違いは何か、選任したことをどう記録に残せばよいのか——曖昧なまま運用していませんか。
責任者の選任は許可要件であり、就業条件明示や帳簿への記録とも直結します。本記事では、派遣元責任者・派遣先責任者それぞれの選任要件・職務・人数基準を労働者派遣法の条文に沿って整理し、最後に「誰をどの派遣に指定したか」という記録義務をシステムで一元管理する実務の進め方まで解説します。
結論:派遣元責任者と派遣先責任者は「役割が異なる別の選任」
派遣元責任者は派遣会社(派遣元)が選任する責任者、派遣先責任者は派遣先企業が選任する責任者です。両者は対になる存在ですが、要件も職務も別物です。まず全体像を早見表で押さえましょう。
| 項目 | 派遣元責任者 | 派遣先責任者 |
|---|---|---|
| 選任する主体 | 派遣元(派遣会社) | 派遣先(受入企業) |
| 根拠条文 | 労働者派遣法第36条 | 労働者派遣法第41条 |
| 主な職務 | 派遣労働者の適正な就業確保、苦情処理、必要な助言・指導等 | 派遣先での就業に関する管理、苦情処理、派遣元との連絡調整等 |
| 受講義務 | 派遣元責任者講習の受講が必要 | 法令上の講習受講義務は定められていない |
| 人数の目安 | 派遣労働者100人ごとに1人以上が目安 | 派遣労働者100人ごとに1人以上が目安 |
派遣元責任者の選任は、労働者派遣事業の許可基準の一つでもあります(労働者派遣法第36条、第5条)。許可を取得・更新するうえで欠かせない要件のため、「誰を選任しているか」は常に明確にしておく必要があります。
派遣元責任者は許可要件に直結し、講習受講という固有の要件があります。一方の派遣先責任者は派遣先側の選任であり、講習の法的義務はありません。この違いを起点に、それぞれの中身を見ていきます。
なお、責任者を選任しても「いつ・誰を・どの派遣に指定したか」を記録に残さなければ、許可更新時や行政の調査時に説明できません。記録義務については後半で詳しく扱います。
派遣元責任者とは:選任要件と職務(派遣法第36条)
派遣元責任者は、派遣元が派遣労働者の適正な就業を確保するために選任する責任者です。根拠は労働者派遣法第36条にあります。
派遣元責任者の選任要件
派遣元責任者になるには、いくつかの要件を満たす必要があります。中心となるのが派遣元責任者講習の受講です。
派遣元責任者は、派遣元責任者講習を受講した者から選任します。講習は厚生労働大臣が委託した機関等が実施しており、受講後に一定期間内であることが選任の前提とされています(出典: 厚生労働省「許可・更新手続マニュアル」)。
派遣元責任者の選任要件として、一般的に次の点が挙げられます。具体的な要件・受講有効期間は許可申請時の基準に沿うため、最新の取り扱いは厚生労働省の「許可・更新手続マニュアル」で確認してください。
- 派遣元責任者講習を受講していること(受講後の有効期間に留意)
- 成年に達した後、一定期間以上の雇用管理等の経験を有すること(具体年数は要確認)
- 欠格事由(法令違反による許可取消し歴等)に該当しないこと
- 健康状態・生活状況から職務を適正に遂行できること
派遣元責任者は、その派遣会社で雇用される者から選任するのが原則です。外部に丸投げできる役割ではなく、社内で雇用管理の実務を担える人を据える必要があります。
派遣元責任者の主な職務
派遣元責任者の職務は派遣法第36条に列挙されています。実務上は、派遣労働者一人ひとりの就業を適正に保つための「司令塔」と捉えるとわかりやすいでしょう。
- 派遣労働者であることの明示等に関する事項の管理
- 就業条件等の派遣先への通知、派遣労働者への周知
- 派遣労働者からの苦情の処理
- 派遣労働者に対する必要な助言・指導
- 派遣先との連絡調整
- 個人情報の管理に関する事項
- 安全衛生に関する派遣元・派遣先間の連絡調整 ほか
これらの職務は、就業条件明示書の交付や法定帳簿(派遣元管理台帳)への記録と密接に関わります。派遣元責任者を選任して終わりではなく、その責任者が職務を果たした記録を残すことが運営上の肝になります。

派遣先責任者とは:選任要件と職務(派遣法第41条)
派遣先責任者は、派遣先企業が受け入れた派遣労働者の就業を管理するために選任する責任者です。根拠は労働者派遣法第41条にあります。派遣元責任者と対をなしますが、選任する主体が派遣先である点が決定的に異なります。
派遣先責任者の選任要件
派遣先責任者には、派遣元責任者のような講習受講の法的義務はありません。派遣先で雇用される者の中から、職務を適正に遂行できる人を選任します。
派遣先責任者は、派遣先の労働者の中から選任します。派遣元責任者のような講習の受講義務は法令上定められていませんが、派遣労働者の就業管理を適正に行える立場・知識を備えた者を選ぶことが求められます(労働者派遣法第41条)。
派遣先の事業所において、製造業務に一定人数以上の派遣労働者を従事させる場合には、製造業務専門の派遣先責任者を別途選任することが求められるなど、業務の性質に応じた追加の取り扱いがあります。詳細は厚生労働省の関連資料で確認してください。
派遣先責任者の主な職務
派遣先責任者の職務は派遣法第41条に定められています。受け入れ側として、派遣労働者が安心して就業できる環境を整える役割です。
- 派遣労働者を就業させる事業所における就業に関する管理
- 派遣可能期間(3年ルール)の抵触日の管理
- 派遣労働者からの苦情の処理
- 派遣元事業主との連絡調整
- 派遣労働者の安全衛生に関する連絡調整 ほか
派遣先責任者が担う抵触日の管理は、事業所単位・個人単位の3年ルール(派遣法第40条の2、第40条の3)と直結します。派遣元・派遣先の双方が責任者を通じて抵触日を共有し、通知のタイミングを合わせることが、トラブル回避の前提になります。
3年ルールと抵触日の通知運用については、関連記事「派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】」でも台帳記載の観点から整理しています。
派遣元責任者と派遣先責任者の違いを整理する
ここまでの内容を踏まえ、両者の違いを改めて並べて確認します。混同しやすいポイントを表で押さえておきましょう。
| 比較軸 | 派遣元責任者 | 派遣先責任者 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 派遣法第36条 | 派遣法第41条 |
| 選任主体 | 派遣会社(派遣元) | 受入企業(派遣先) |
| 講習受講 | 派遣元責任者講習が必要 | 法令上の受講義務なし |
| 許可要件との関係 | 選任が許可基準の一つ | 許可とは直接関係しない |
| 抵触日管理 | 派遣先からの通知を受けて管理 | 事業所単位の抵触日を通知・管理 |
| 苦情処理 | 派遣労働者からの苦情を処理 | 派遣先での苦情を処理し派遣元と連携 |
派遣元責任者は「許可と雇用管理の責任者」、派遣先責任者は「受入現場の就業管理の責任者」と覚えると区別しやすくなります。両者は苦情処理・連絡調整の場面で連携することが前提です。
両者に共通するのは、苦情処理と連絡調整という「つなぐ」役割です。派遣労働者からの苦情がどちらの責任者にも届きうるため、派遣元・派遣先のどちらが受けても適切にエスカレーションできる体制を整えておくことが重要です。

責任者の人数基準と選任のタイミング
責任者は1人選任すれば足りるとは限りません。派遣労働者の人数に応じて複数名の選任が必要になります。
人数の目安
派遣元責任者・派遣先責任者ともに、派遣労働者の数に応じて選任すべき人数の目安が示されています。
派遣元責任者・派遣先責任者は、当該事業所で雇用する(または受け入れる)派遣労働者の数が一定数を超えるごとに、それに応じた人数を選任することが目安とされています。一般的には派遣労働者100人ごとに1人以上を選任する運用が示されています(出典: 厚生労働省「許可・更新手続マニュアル」等)。具体的な算定方法は最新の手続マニュアルで確認してください。
たとえば自社で雇用・派遣している派遣労働者が増えていけば、規模に応じて責任者の追加選任が必要になります。従業員20〜100名規模の派遣会社であっても、派遣スタッフ数が増える局面では選任人数の見直しを忘れないようにしましょう。
選任のタイミング
派遣元責任者の選任は許可申請時点で求められます。新たに事業所を開設する場合や、責任者が退職・異動する場合にも、速やかに後任を選任する必要があります。選任の空白期間が生じないよう、後任候補の講習受講をあらかじめ計画しておくのが実務上の安全策です。
許可申請や更新の実務全体は、関連記事「派遣会社の開業・許可申請の完全ガイド|要件・必要なもの・費用【2026年版】」で、必要書類や費用の観点を含めて解説しています。
責任者選任の「記録義務」と一元管理の進め方
責任者を適切に選任しても、それを記録に残し、いつでも提示できる状態にしておかなければ意味がありません。記録は許可更新時や行政の調査時の説明責任を果たすための土台になります。
残すべき記録の例
責任者に関して残しておくべき記録には、次のようなものがあります。
| 記録の対象 | 主な内容 |
|---|---|
| 派遣元責任者の選任記録 | 氏名・選任日・講習受講日(有効期間)・担当事業所 |
| 派遣先責任者の指定記録 | 派遣先ごとの派遣先責任者の氏名・連絡先 |
| 個別派遣ごとの責任者指定 | どの派遣契約で派遣元/派遣先のどの責任者を指定したか |
| 苦情処理・連絡調整の記録 | 受付日・内容・対応者(責任者)・結果 |
個別派遣契約書(派遣法第26条)や就業条件明示書(派遣法第34条)には、派遣元責任者・派遣先責任者に関する事項を定める必要があります。契約のたびに「誰を指定したか」が発生するため、契約と責任者指定を切り離さず一体で記録することが、抜け漏れを防ぐ近道です。
派遣契約は2021年1月1日施行の厚生労働省令第170号により電子化が解禁されました(出典: 厚生労働省)。電子化された個別派遣契約書・就業条件明示書とあわせて、責任者の指定記録もデジタルで一元管理できれば、紙の台帳を都度めくる手間がなくなります。
Excel管理の限界とシステム化
責任者の選任記録を派遣スタッフ数十名分、派遣先ごとにExcelで管理しようとすると、契約のたびに転記が発生し、講習の有効期間の更新漏れも起きがちです。派遣業務は契約管理・帳簿・コンプライアンス記録が複雑に絡み合うため、表計算ソフトだけでは整合性の担保が難しくなります。
派遣管理SaaS「派遣HUB」では、個別派遣契約の管理機能の中で、どの契約に派遣元責任者・派遣先責任者を指定したかを記録として一元管理できます。あわせて、就業条件明示書や労働条件通知書のデジタル交付と送付記録の一元化、派遣元/派遣先責任者の指定記録、3年ルールの抵触日判定や法定帳簿(派遣元管理台帳)の作成までを、1つのシステムでカバーします。
派遣HUBは、従業員20〜100名規模の中小派遣会社に特化したオールインワンの派遣管理SaaSです。勤怠から給与・請求・法定帳簿・派遣契約・派遣業法コンプライアンス記録までを1システムでまとめられるため、責任者の指定記録もコンプライアンス機能の一部として漏れなく残せます。料金は月額¥2,980/名から(メール経由)と、機能が近い競合の月額帯(おおむね¥15,000〜35,000/月やユーザー単価¥22,000/月帯)と比べて中小特化の価格帯に設定しており、20名規模であれば月額¥59,600(¥2,980×20名)で運用できます。

よくある質問
派遣元責任者と派遣先責任者は同じ人が兼任できますか
兼任はできません。派遣元責任者は派遣会社(派遣元)が自社で雇用する者から選任し(派遣法第36条)、派遣先責任者は派遣先企業が自社で雇用する者から選任します(派遣法第41条)。選任する主体が異なる別の立場のため、同一人物が双方を兼ねることは想定されていません。
派遣元責任者になるには資格が必要ですか
国家資格のような特定の資格は不要ですが、派遣元責任者講習の受講が必要です。あわせて雇用管理等の経験や欠格事由に該当しないことなどの要件があります。講習の受講有効期間や具体的な経験年数は許可申請時の基準に沿うため、厚生労働省の「許可・更新手続マニュアル」で最新の取り扱いを確認してください。
派遣先責任者にも講習の受講義務はありますか
派遣先責任者には、派遣元責任者講習のような法令上の受講義務は定められていません。ただし、派遣労働者の就業管理や苦情処理、抵触日の管理(派遣法第40条の2等)を適正に行える立場・知識を備えた者を選任することが求められます。
責任者は何人選任すればよいですか
派遣労働者の数に応じて複数名の選任が必要になる場合があります。一般的には派遣労働者100人ごとに1人以上を選任する運用が目安として示されています。具体的な算定方法や最新の取り扱いは、厚生労働省の手続マニュアルで確認してください。
責任者の選任記録はどのくらい保管すべきですか
責任者の指定は個別派遣契約や法定帳簿と一体で発生します。派遣元管理台帳は派遣終了から3年間の保管が義務づけられており(派遣法第37条)、責任者の指定に関わる記録も契約・帳簿とあわせて適切に保管・提示できる状態にしておくことが望ましいといえます。電子化した契約書類は電子帳簿保存法にも留意が必要です。
まとめ:責任者の選任は「指定の記録」までを一体で運用する
派遣元責任者(派遣法第36条)と派遣先責任者(派遣法第41条)は、選任主体も要件も職務も異なる別の選任です。派遣元責任者は講習受講が必要で許可要件に直結し、派遣先責任者は受入現場の就業管理を担います。いずれも派遣労働者の数に応じて複数名の選任が必要になる場合があり、人数基準の確認を怠らないことが大切です。
そして実務で見落とされがちなのが、選任した責任者を「いつ・どの派遣に指定したか」という記録です。個別派遣契約・就業条件明示書・法定帳簿と一体で残すことで、許可更新や行政調査の場面で確実に説明できる体制が整います。契約管理と責任者指定記録、帳簿、コンプライアンス記録を1システムで結びつけることが、抜け漏れのない運営への近道です。
(出典: 厚生労働省、e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、厚生労働省「許可・更新手続マニュアル」)
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