労使協定方式の退職金の決め方|派遣元が選ぶ3方式(退職金制度・前払い5%・中退共)【2026年版】
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労使協定方式の退職金の決め方|派遣元が選ぶ3方式(退職金制度・前払い5%・中退共)【2026年版】

2026年8月2日24分で読める

労使協定方式の退職金は、「自社の退職手当制度で一般退職金水準と比較する」「基本給・賞与相当額に5%を上乗せして前払いする」「中退共等へ掛金を拠出する」の3方式のいずれかを選び、一般労働者の水準との同等以上を確保します。根拠は労働者派遣法第30条の4で、比較に使う水準や割合は毎年度の職業安定局長通達で更新されます。令和8年度適用の前払い割合は「5%」であり、古い解説記事に残る6%は現行の値ではありません(出典: 職発0825第1号・令和7年8月25日)。

本記事は派遣元の管理部門向けに、3方式の仕組み・判断軸・協定書の書き方・帳票への落とし込みを一次ソースに基づいて整理します。

結論: 労使協定方式の退職金は3方式から選ぶ(比較早見表)

労使協定方式では賃金を「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」の3要素に分けて一般賃金と比較し、退職金も同等以上の確保が必須です。方法は局長通達が示す次の3方式から労使で選びます(出典: 職発0825第1号 第2の3)。

方式同等以上の確保方法事務負担の発生タイミング社会保険料への影響向いている派遣元の例
方式1: 退職手当制度自社制度を一般退職金水準(通達別添4)と勤続年数別の支給月数・支給金額で比較退職時(制度運用・規程管理)退職時の一時金は毎月の報酬に含まれない無期雇用・長期勤続者が中心
方式2: 前払い(5%)一般基本給・賞与等×5%以上を退職金相当の手当として毎月支給毎月(給与計算・明細・賃金台帳)報酬に該当し算定基礎に含まれる登録型・有期雇用が中心
方式3: 中退共等一般基本給・賞与等×5%以上の掛金(派遣元負担)を拠出毎月(掛金納付・加入管理)掛金は賃金として支払われない外部積立で確実に準備したい
労使協定方式の退職金3方式の全体像
労使協定方式の退職金3方式の全体像

方式2と方式3は同一の労働者で併用でき(手当と掛金の合算で一般退職金額以上)、一つの協定内で労働者の区分ごとに方式を使い分けることも認められています(出典: 職発0825第1号 第2の3・第3の3)。

前提: なぜ退職金の「決め方」が必要か(派遣法第30条の4と局長通達)

一般賃金水準には退職金が含まれる(同等以上確保の対象)

労使協定方式を選んだ派遣元は、労働者派遣法第30条の4第1項第2号イに基づき、協定対象派遣労働者の賃金を「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金(一般賃金)」と同等以上に決定しなければなりません(出典: e-Gov法令検索)。この一般賃金は基本給・賞与だけでなく通勤手当と退職金を含む概念のため、退職金だけを未整備のままにはできません。方式の全体像や2つの待遇決定方式の違いは派遣の同一労働同一賃金(労使協定方式)対応ガイド【2026年版】で解説しています。

一般賃金の3要素と退職金の位置づけ
一般賃金の3要素と退職金の位置づけ

毎年度の職業安定局長通達で水準が更新される

比較に使う一般賃金の額や退職金の割合は、毎年度発出される職業安定局長通達で更新されます。令和8年度適用分は令和7年8月25日発出の職発0825第1号で、適用期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までです。通達自体に「毎年度更新する」と明記されており、前払いの5%も令和3年就労条件総合調査の「退職給付等の費用」の割合から算出された年度値です(出典: 同通達 第2の3)。割合を固定値として社内資料に書き写さず、毎年度最新通達を確認する運用が前提です。

退職金3方式の仕組みと実務ポイント

方式1: 自社の退職手当制度で一般退職金水準と比較する

自社の退職手当制度を、通達別添4が示す一般水準(受給に必要な所要年数や勤続年数別の支給月数・支給金額など)と比較する方式です。「同等以上」とは勤続年数別の支給月数または支給金額が同水準以上であることを指します。制度は全ての協定対象派遣労働者に適用され、決定・計算・支払の方法と支払時期が明確であることが要件です(出典: 職発0825第1号 第3の3)。毎月の賃金には波及しない一方、規程整備と退職時の原資管理が必要です。

方式2: 基本給・賞与相当額への5%上乗せ(前払い)

局長通達で算出した一般基本給・賞与等に「退職給付等の費用の割合」である5%を乗じた額を一般退職金とし、協定対象派遣労働者へ退職金相当の手当としてこれと同額以上を毎月支給する方式です。算出時に1円未満の端数が出た場合は切り上げます(出典: 職発0825第1号 第2の3)。毎月の賃金として支払うため、在職中に前払いされる退職金は報酬に該当し、社会保険料の算定基礎に含まれます(出典: 平成15年10月1日 庁保険発第1001001号・保保発第1001002号)。

前払い方式の計算構造
前払い方式の計算構造

方式3: 中退共等への掛金拠出

中小企業退職金共済制度(中退共)、確定給付企業年金、確定拠出年金等に加入し、一般基本給・賞与等×5%以上の掛金(派遣元事業主の負担分に限る)を拠出する方式です。派遣元が独自に設ける企業年金制度もこの「等」に含まれます。中退共の場合は勤労者退職金共済機構と退職金共済契約を締結する旨を協定に定めます(出典: 職発0825第1号 第3の3・第4の3)。外部拠出のため支払原資が平準化される反面、掛金額が毎年度の一般退職金額を下回っていないかの確認が欠かせません。

自社に合う方式の選び方(判断軸)

キャッシュフローと社会保険料への波及で比べる

方式2の前払いは毎月の人件費と社会保険料が増えるため、増分を派遣料金に転嫁できるかが実務の焦点です。請求単価とマージンの設計は派遣の請求業務を効率化する方法|派遣先別請求書とマージン自動算出【2026年版】とセットで検討してください。方式1は退職時までキャッシュアウトを繰り延べられる一方、将来の支払債務として原資の引当が必要です。方式3は毎月の外部拠出で負担が読みやすくなります。

方式選択の判断フロー
方式選択の判断フロー

登録型・有期雇用中心なら勤続要件と管理負荷で比べる

通達別添4によれば、退職手当制度がある企業の割合は74.9%、自己都合退職の退職一時金受給に必要な最低勤続年数は「3年以上4年未満」とする企業が57.0%で最多です(出典: 令和5年就労条件総合調査・職発0825第1号別添4)。つまり方式1でも一般水準側に勤続3年前後の受給要件が存在します。短期就業が多い登録型中心の派遣元では、勤続にかかわらず毎月確保できる方式2が運用しやすい選択肢になりますが、退職金相当手当を毎月の給与計算に正確に組み込む前提が必要です。給与計算側の体制は派遣会社の給与計算を自動化する方法|社保・所得税控除の手作業を減らす【2026年版】を参照してください。

労使協定への書き方と帳票への落とし込み

協定書の退職金条項に書くべき事項

局長通達は方式ごとに協定へ定める内容を示しています。方式1は一般退職金と自社の退職手当制度の内容、方式2は一般退職金の額と同等以上を満たすことが分かる内容、方式3は中退共等に加入する旨です(出典: 職発0825第1号 第4の3)。金額や割合を協定本文に固定で書き込むと毎年度の改定のたびに協定文言の修正が必要になるため、別紙の賃金テーブルに切り出しておくと更新負担を抑えられます。

方式別の帳票波及マッピング(給与明細・賃金台帳・派遣元管理台帳)

方式選択が毎月の帳票運用にどう波及するかを、協定記載事項をもとに整理したのが次の表です(出所: 職発0825第1号 第4の3の記載事項をもとに、派遣HUBの帳票設計に基づく自社整理)。

方式労使協定書給与明細・賃金台帳(毎月)毎年度の改定作業
方式1: 退職手当制度一般退職金+自社制度の内容を記載波及なし(退職時に一時金として処理)別添4の更新値と支給月数・金額を再比較
方式2: 前払い同等以上を満たすことが分かる内容を記載退職金相当手当を毎月記載(波及が最大)一般基本給・賞与等×5%を再計算し手当額を見直し
方式3: 中退共等加入する旨を記載賃金への波及なし(掛金は機構等へ納付)掛金額が一般退職金額以上かを再確認

なお派遣元管理台帳には「協定対象派遣労働者の別」の記載が求められるため、どの方式でも協定対象者の管理は台帳と連動します。台帳の記載必須項目は派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】で詳説しています。

方式別の帳票波及マッピング
方式別の帳票波及マッピング

前払い方式を選ぶと、退職金相当手当は毎月の給与明細・賃金台帳・請求根拠の3系統に波及します。派遣HUBのように賃金・帳票データを一元管理する仕組みなら、通達改定時の見直し箇所を1箇所に集約できます。

毎年度の通達改定チェックリスト

毎年度の局長通達発出後は、次の点検を協定改定スケジュールに組み込みます。

  • 最新通達の一般基本給・賞与等と退職金の割合(令和8年度は5%)の確認
  • 別添4(一般退職金水準)の更新内容と自社制度の再比較(方式1)
  • 一般退職金額の再計算と、手当額・掛金額が同等以上かの検証(方式2・3)
  • 労使協定の有効期間と通達の適用期間(令和8年度は令和8年4月1日〜令和9年3月31日)のずれの確認
  • 賃金テーブル別紙・給与マスタ・請求単価への反映と、待遇を引き下げる変更になっていないかの点検

待遇の引き下げは労働条件の不利益変更となり得るため、原則として労使双方の合意が必要です(出典: 職発0825第1号 第1の1)。

労使協定方式の退職金に関するFAQ

派遣元に派遣スタッフへの退職金の支給義務はありますか?

退職金制度の導入自体を一律に義務付ける法律はありません。ただし労使協定方式を選んだ派遣元は、退職金を含む一般賃金との同等以上の確保が労働者派遣法第30条の4の法定要件になります(出典: e-Gov法令検索・職発0825第1号)。

退職金の前払い5%は何に対する5%ですか?

派遣スタッフ本人の基本給ではなく、局長通達で算出する「一般基本給・賞与等」に乗じる割合です。一般基本給・賞与等×5%が一般退職金となり、退職金相当の手当をこれと同額以上支給します(出典: 職発0825第1号 第2の3)。割合の出所は令和3年就労条件総合調査で、年度により見直されます。

退職金の3方式は年度の途中で変更できますか?

方式は労使協定で定める事項のため、変更には協定の改定と労使の合意が必要です。一つの協定内で労働者の区分ごとに方式を分けることや、前払いと中退共等の併用も認められています(出典: 職発0825第1号 第2の3)。待遇の引き下げになる変更は不利益変更となり得る点に注意してください。

中退共に加入すれば労使協定方式の退職金要件を満たせますか?

加入するだけでは足りず、派遣元負担の掛金が一般退職金(一般基本給・賞与等×5%)の額以上であることが必要です(出典: 職発0825第1号 第3の3)。確定給付企業年金・確定拠出年金や派遣元独自の企業年金制度でも同様に満たせます。

勤続年数が短い登録型スタッフにも退職金の確保は必要ですか?

協定対象派遣労働者は全員が退職金の同等以上確保の対象です。ただし方式1では比較する一般水準側にも最低勤続年数(自己都合では3年以上4年未満が最多57.0%)があり、同水準までの勤続要件は設定できます(出典: 職発0825第1号別添4)。勤続を問わず毎月確保できる前払い方式が登録型中心では選ばれやすい実務です。

まとめ: 方式選択は毎月の帳票運用まで見て決める

労使協定方式の退職金は、退職手当制度・前払い5%・中退共等の3方式のどれでも法令上の要件は満たせます。差が出るのは毎月の帳票運用です。前払いは給与明細・賃金台帳・社会保険料に毎月波及し、方式1・3は退職時や掛金管理に負担が寄ります。割合や水準は毎年度の局長通達で更新されるため、協定書・賃金テーブル・給与マスタを一気通貫で見直せる体制も欠かせません。自社の雇用構成とキャッシュフロー、帳票への波及まで見て決めてください。

出典: 厚生労働省職業安定局長通達「令和8年度の労働者派遣法第30条の4第1項第2号イに定める『同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額』等について」(職発0825第1号・令和7年8月25日)および同別添4、令和5年就労条件総合調査(厚生労働省)、「いわゆる退職金の前払いに係る社会保険料の取扱いについて」(平成15年10月1日 庁保険発第1001001号・保保発第1001002号)、e-Gov法令検索。


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