
派遣の同一労働同一賃金(労使協定方式)対応ガイド【2026年版】
派遣スタッフの賃金を「同一労働同一賃金」に対応させたいけれど、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式のどちらを選べばいいのか、毎年度何をすればいいのか分からない――。中小の派遣会社では、専任の人事部門がないまま制度対応を求められ、判断に迷うケースが少なくありません。
本記事では、派遣会社が選ぶべき2つの待遇決定方式の違いと、実務で多くの派遣元が採用している労使協定方式について、対象となる労働者派遣法の条文・厚生労働省の運用ルールに沿って整理します。協定の締結から毎年度の一般賃金水準との比較、待遇決定の記録までを、実務の流れとして把握できる内容です。
結論:派遣の同一労働同一賃金は2方式から選び、中小では労使協定方式が主流
派遣労働者の同一労働同一賃金は、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを派遣元が選んで対応します。多くの派遣会社は、派遣先が変わるたびに待遇を見直す手間を避けられる労使協定方式を採用しています。まず2方式の違いを早見表で確認しましょう。
| 比較項目 | 派遣先均等・均衡方式 | 労使協定方式 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 派遣法第30条の3 | 派遣法第30条の4 |
| 賃金の比較対象 | 派遣先の正社員等 | 厚労省が示す一般労働者の賃金水準 |
| 派遣先からの情報提供 | 比較対象労働者の待遇情報が必要 | 教育訓練・福利厚生施設の情報が必要 |
| 派遣先変更時 | 派遣先ごとに待遇を見直す | 協定基準を維持できる |
| 労使協定の締結 | 不要 | 必要(毎年度の改定が実務上必要) |
| 中小派遣会社での採用 | 少数 | 多数派 |
同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらず、同じ仕事に従事する労働者には同水準の待遇を確保するという考え方です。派遣労働者については、派遣法第30条の3および第30条の4で待遇確保の方式が定められ、2020年4月に施行されました。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』、e-Gov法令検索)
労使協定方式が主流である一方、どちらの方式でも「なぜその待遇にしたか」を記録・説明できる体制が求められます。派遣HUBのような派遣管理システムでは、採用した待遇決定方式や毎年度の賃金水準比較の記録を一元管理でき、監査や派遣先からの問い合わせに備えられます。

派遣先均等・均衡方式(第30条の3)とは何か
派遣先均等・均衡方式は、派遣先で働く正社員(比較対象労働者)と派遣労働者の待遇を均等・均衡にする方式です。同じ仕事をしている派遣先の社員と比べて、不合理な待遇差をつけてはならないという考え方に立っています。
この方式では、派遣先から「比較対象労働者の待遇に関する情報」の提供を受ける必要があります。派遣先の賃金体系や手当の内容を把握したうえで、派遣労働者の待遇を決定する仕組みです。
「均等待遇」とは、職務内容・配置変更の範囲が同じ場合に差別的取扱いを禁止すること、「均衡待遇」とは、これらに違いがある場合でも不合理な待遇差を禁止することを指します。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』第30条の3)
この方式の実務上の難しさ
派遣先均等・均衡方式は、派遣先が変わるたびに比較対象労働者の情報を取得し直し、待遇を再設計する必要があります。複数の派遣先に多数のスタッフを派遣する派遣会社にとっては、派遣先ごとに賃金水準が変わり、スタッフの待遇が安定しにくいという実務上の課題があります。
このため、後述する労使協定方式を採用する派遣会社が多くなっています。ただし、派遣先の待遇水準が高く、それに合わせることが適切な場合などには、この方式が選ばれることもあります。
労使協定方式(第30条の4)とは何か
労使協定方式は、派遣元が過半数労働組合または過半数代表者と労使協定を締結し、その協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。派遣法第30条の4に定められています。
この方式の最大の特徴は、賃金の比較対象が「派遣先の社員」ではなく、「厚生労働省が毎年度示す一般労働者の賃金水準」である点です。派遣先が変わっても、協定で定めた基準に沿って待遇を維持できるため、スタッフの賃金が安定します。
労使協定方式では、賃金の額は、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額(一般賃金)と同等以上でなければなりません。一般賃金の水準は、厚生労働省が毎年度、職業安定局長通達として公表します。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』第30条の4、職業安定局長通達)
労使協定に定めるべき主な事項
労使協定方式を採用する場合、協定には次のような事項を定める必要があります。協定の対象となる派遣労働者の範囲、賃金の決定方法、職務の内容等に応じた賃金の改善、賃金以外の待遇、段階的・体系的な教育訓練、有効期間などです。
賃金の決定方法は、一般賃金の額と同等以上であることに加え、派遣労働者の職務内容や能力の向上を賃金に反映させる仕組みを含める必要があります。これらの事項を欠いた協定は、要件を満たさないものとして派遣先均等・均衡方式の対象に戻る点に注意が必要です。

毎年度の一般賃金水準との比較が必要な理由
労使協定方式で最も継続的な負担となるのが、毎年度の一般賃金水準との比較です。厚生労働省は毎年度、職業安定局長通達によって職種別・地域別の一般労働者の賃金水準を公表します。派遣元は、自社が支払う派遣労働者の賃金がこの水準と同等以上であることを確認しなければなりません。
通達は通常、年度ごとに更新されます。前年度の協定をそのまま使い続けると、新しい一般賃金水準を下回ってしまうおそれがあるため、毎年度の見直しと協定の改定が実務上必要になります。
一般賃金水準との比較は、次のような流れで行います。まず、対象となる派遣労働者の職種を、通達で定められた職種分類に当てはめます。次に、勤務地の地域指数を反映させ、その職種・地域の一般賃金額を算出します。そして、自社が支払う賃金(基本給・賞与・手当等の合算)がこの額以上であることを確認します。
一般賃金は、「基準値(職種別の賃金額)×地域指数」によって地域ごとの水準が算出されます。さらに、退職金相当分や通勤手当相当分についても、通達の方法に基づき水準を確保する必要があります。(出典: 厚生労働省 職業安定局長通達)
この作業を職種ごと・スタッフごとに手作業のExcelで管理すると、職種分類の取り違えや地域指数の反映漏れが起こりやすくなります。派遣HUBでは、採用した待遇決定方式と賃金の記録を一元管理し、待遇決定の根拠をスタッフ単位で残せるため、毎年度の確認作業の抜け漏れを防ぎやすくなります。
中小派遣会社が労使協定方式で対応する実務ステップ
従業員20〜100名規模の派遣会社が労使協定方式に対応する場合、年間を通じた実務の流れを押さえておくことが重要です。専任の人事担当がいない会社でも、手順を定型化すれば対応の負担を抑えられます。
| ステップ | 主な作業 | タイミング |
|---|---|---|
| 1. 通達の確認 | 新年度の一般賃金水準(局長通達)を確認 | 通達公表後 |
| 2. 賃金水準の比較 | 職種・地域ごとに自社賃金と一般賃金を比較 | 協定締結前 |
| 3. 協定案の作成 | 賃金決定方法・教育訓練等を盛り込み協定案を作成 | 協定締結前 |
| 4. 過半数代表者の選出 | 適正な手続で過半数代表者を選出 | 協定締結前 |
| 5. 協定の締結 | 過半数労働組合等と労使協定を締結 | 新年度の適用開始まで |
| 6. 周知・記録 | 派遣労働者への周知、待遇決定の記録 | 締結後 |
過半数代表者の選出は、投票や挙手など民主的な方法で行う必要があり、会社が一方的に指名することは認められていません。手続の適正さも含めて、記録を残しておくことが求められます。
労使協定の周知は、書面の交付、電子メール、社内システムへの掲示などの方法で行えます。派遣労働者がいつでも内容を確認できる状態にしておくことが重要です。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』第30条の4)
派遣会社としての体制づくり全般については、派遣会社の開業・許可申請の完全ガイド|要件・必要なもの・費用【2026年版】もあわせて確認すると、許可基準やキャリア形成支援との関係を整理できます。

待遇決定方式の記録と管理をシステムで効率化する
労使協定方式・派遣先均等均衡方式のいずれを採用していても、「どの方式で、どの根拠に基づいて待遇を決定したか」を記録し、説明できる状態にしておくことが求められます。法定帳簿である派遣元管理台帳にも、協定対象労働者であるか否かなどを記載する必要があります。
派遣元管理台帳は派遣法第37条に基づき、派遣終了から3年間の保管が義務づけられています。記載事項には、協定対象派遣労働者であるか否かの別なども含まれます。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』第37条、労働者派遣事業関係業務取扱要領)
手作業の管理では、待遇決定の根拠資料が個別のファイルに散在し、派遣先からの問い合わせや行政の調査時にすぐ取り出せないことがあります。派遣管理システムを使えば、待遇決定方式の記録・賃金台帳・派遣元管理台帳を連動させ、説明責任を果たしやすくなります。
派遣HUBでの待遇決定方式の記録
派遣HUBは、従業員20〜100名規模(主力は20〜40名)の中小派遣会社向けに設計された派遣管理SaaSです。採用した待遇決定方式の記録、毎年度の賃金水準比較の管理、派遣元管理台帳・派遣先管理台帳の作成までをひとつのシステムで完結できます。
派遣HUBは、勤怠・給与計算・請求・法定帳簿・派遣業法コンプライアンス機能をオールインワンで提供します。待遇決定方式の記録や、3年ルール・社会保険の加入状況なども一元管理でき、コンプライアンス対応の抜け漏れを減らせます。
料金は月額¥2,980/名(メール経由・初期費用無料)からで、初期費用や買い切り型が中心の既存の派遣管理システムと比べ、中小規模の事業者でも導入しやすい価格帯です。20名規模であれば月額¥59,600から利用でき、競合製品のおおよそ3分の1から4分の1の水準に収まります。スタッフ向けマイページ・ポータルは近日提供予定として開発を進めています。
教育訓練の記録については、派遣スタッフの教育訓練・キャリア形成支援の義務と記録で、労使協定との関係を含めて詳しく解説しています。
よくある質問
労使協定方式と派遣先均等・均衡方式は、どちらを選ぶべきですか
派遣元が選択できますが、派遣先が変わっても待遇を安定させやすいことから、多くの派遣会社が労使協定方式を採用しています。派遣先の待遇水準が高く、それに合わせることが適切な場合などには派遣先均等・均衡方式が選ばれることもあります。自社の派遣形態に応じて判断します。
労使協定は毎年度結び直す必要がありますか
協定自体の有効期間は定められますが、厚生労働省が毎年度公表する一般労働者の賃金水準(局長通達)が更新されるため、実務上は毎年度、賃金水準を確認し協定を見直すことが必要です。前年度の協定をそのまま使い続けると、新しい賃金水準を下回るおそれがあります。
一般賃金水準はどこで確認できますか
厚生労働省が毎年度、職業安定局長通達として公表します。職種別の基準値と地域指数を組み合わせて、職種・地域ごとの一般賃金額を算出します。最新の通達内容や具体的な金額は、厚生労働省の公表資料で確認してください。
労使協定方式でも派遣元管理台帳への記載は必要ですか
必要です。派遣元管理台帳には、協定対象派遣労働者であるか否かの別などを記載します。派遣元管理台帳は派遣法第37条に基づき、派遣終了から3年間の保管が義務づけられています。(出典: 厚生労働省『労働者派遣法』第37条)
過半数代表者はどのように選べばよいですか
投票や挙手など、民主的な方法で選出する必要があります。会社が一方的に指名することは認められていません。選出の手続が適正であったことも含めて、記録を残しておくことが求められます。
まとめ:労使協定方式は「毎年度の運用」を仕組み化することが鍵
派遣の同一労働同一賃金は、派遣先均等・均衡方式(第30条の3)と労使協定方式(第30条の4)の2つから派遣元が選択します。中小の派遣会社では、派遣先が変わっても待遇を安定させやすい労使協定方式が主流です。
労使協定方式で重要なのは、締結時の対応だけでなく、厚生労働省が毎年度公表する一般賃金水準との比較を継続的に行い、協定を見直す運用を仕組み化することです。待遇決定方式の記録や派遣元管理台帳との連動を手作業で管理すると抜け漏れが起こりやすいため、派遣管理システムの活用が有効です。
本記事の制度・条文に関する記述は、厚生労働省『労働者派遣法』、e-Gov法令検索、厚生労働省 職業安定局長通達、労働者派遣事業関係業務取扱要領に基づいています。最新の一般賃金水準や手続の詳細は、厚生労働省の公表資料で確認してください。
同一労働同一賃金の対応も、賃金台帳も、ひとつのシステムで
待遇決定方式の記録から賃金水準の管理、法定帳簿まで、派遣業務に必要な機能をオールインワンで。中小派遣会社のExcel運用を卒業しませんか。月額¥2,980/名から、14日間の無料トライアルでお試しいただけます。
初期費用無料・最低契約期間なし・データ移行も無料サポート。まずはお気軽にご相談ください。
関連記事
14日間の無料トライアルをお試しください
求職者・クライアント管理、法定帳簿の自動生成、事業報告書の出力までこれ1つで。
クレジットカード登録不要、月額4,980円から。


