派遣会社(派遣元)の雇止め・契約更新実務|予告30日・理由証明書・更新上限明示【2026年版】
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派遣会社(派遣元)の雇止め・契約更新実務|予告30日・理由証明書・更新上限明示【2026年版】

2026年8月4日23分で読める

派遣元(派遣会社)が行う雇止め・契約更新の実務は、契約締結時の更新上限明示(2024年改正対応)、更新3回以上または通算1年超のスタッフへの30日前の雇止め予告、請求があった場合の雇止め理由証明書の交付、の3点を契約満了日から逆算して実行するのが結論です。

このうち更新上限の明示は2024年4月施行の労働条件明示ルール改正で加わった新しい義務で、予告と理由証明書は「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)の制定以来の基本ルールです。手順を1つ落とすだけで、労働契約法第19条の雇止め法理により雇止め自体が無効と判断されるリスクが生じます。

本記事は派遣元の経営者・管理部門向けに、派遣契約の不更新と雇止めを区別する2層構造から、法定3点セットの手順、記録・期日管理までを一気通貫で整理します。

結論: 派遣元の雇止め・契約更新実務の早見表

雇止めとは、有期労働契約を契約期間の満了をもって更新せずに終了させることです。契約期間の途中で一方的に打ち切る解雇とは法的に別の行為ですが、無条件に自由なわけでもありません。派遣元が押さえるべき法定手続きは次の3点です。

手続き実施タイミング対象者根拠
更新上限の有無・内容の明示契約の締結・更新のつどすべての有期労働契約労働基準法施行規則第5条(2024年4月改正)
雇止めの予告契約期間満了日の30日前まで3回以上更新、または雇入れから1年超継続勤務(あらかじめ不更新を明示した契約を除く)有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(平成15年厚労省告示第357号)第2条
雇止め理由証明書の交付スタッフの請求後、遅滞なく予告の対象と同じ範囲(予告後・雇止め後のいずれの請求でも)同基準第3条
派遣元の雇止め・契約更新の法定3点セット早見図
派遣元の雇止め・契約更新の法定3点セット早見図

この3点は手続き面のルールであり、雇止めの有効性そのものは労働契約法第19条で別途判断されます。順に見ていきます。

前提: 派遣契約の不更新と労働契約の雇止めは別物(派遣元固有の2層構造)

派遣元が扱う契約は2層あります。派遣先と結ぶ労働者派遣契約(労働者派遣法第26条)と、スタッフと結ぶ労働契約です。この2つの終了は連動しません。

派遣契約と労働契約の2層構造図
派遣契約と労働契約の2層構造図

派遣先が派遣契約を終了しても即雇止めはできない

派遣先が労働者派遣契約を更新しなくても、スタッフの雇用主はあくまで派遣元であり、労働契約は自動的には終わりません。同一の組織単位に継続3年就業見込みのスタッフには雇用安定措置が義務、通算1年以上なら努力義務として課されており(労働者派遣法第30条)、派遣契約の終了局面ではまずこの措置の履行が挟まります。対象者判定と希望聴取の実務は「派遣の雇用安定措置とは?4措置の義務・努力義務と希望聴取・記録の実務【2026年版】」で解説しています。「派遣契約が終了したから」だけを理由とする雇止めは、後述の雇止め法理の審査でも弱い立場に置かれます。

期間途中の中途解除・休業手当との違い

本記事が扱うのは「期間満了時に更新しない」場面です。契約期間の途中で派遣契約が解除された場合は、新たな就業機会の確保や休業手当(労働基準法第26条)といった別の規律が適用されます。こちらは「派遣契約の中途解除と休業手当|派遣元が講ずべき措置・損害賠償と実務フロー【2026年版】」を参照してください。満了時と途中解除で適用条文がまったく異なる点が、実務で最初に混同されるポイントです。

雇止め・契約更新の法定3点セットの実務手順

更新上限の有無・内容の明示(2024年4月改正)と上限新設・短縮時の事前説明

2024年4月施行の労働基準法施行規則第5条の改正により、有期労働契約の締結・更新のつど「通算契約期間または更新回数の上限」の有無と内容を明示することが義務になりました(厚生労働省リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。無期転換申込権が発生する更新時には、無期転換を申し込める旨と転換後の労働条件の明示も必要です。

さらに、最初の契約になかった上限を後から新設したり、上限を短縮したりする場合は、あらかじめその理由をスタッフに説明しなければなりません(告示第357号第1条)。派遣スタッフには労働条件明示と別に派遣法上の就業条件明示書もあるため、書面の役割分担は「派遣の就業条件明示書の書き方|記載事項・交付タイミングと派遣契約書(26条)との違い【2026年版】」で確認してください。

雇止め予告30日の要否判定(更新3回以上・通算1年超の早見表)と予告の方法・記録

予告の要否は次の2条件で判定します(告示第357号第2条)。

確認項目予告が必要になる条件
更新回数その契約を3回以上更新している
継続勤務期間雇入れの日から1年を超えて継続勤務している
除外あらかじめ「更新しない」と明示していた契約は対象外

どちらか一方に該当すれば、契約期間満了日の30日前までに予告が必要です。予告の方式に法定の様式はありませんが、実務では雇止め通知書などの書面で行い、予告日・方法・本人への到達を記録に残します。口頭のみの予告は「言った・言わない」の紛争時に証明手段を欠きます。

雇止め予告30日の要否判定フロー図
雇止め予告30日の要否判定フロー図

雇止め理由証明書の交付義務と書ける理由・書けない理由

予告の対象となるスタッフから請求があった場合、派遣元は雇止めの理由についての証明書を遅滞なく交付しなければなりません。雇止めの予告後の請求でも、雇止め後の請求でも同様です(告示第357号第3条)。

記載する理由は「契約期間の満了」だけでは足りず、それとは別の理由を示す必要があります。厚生労働省のリーフレットでは、担当業務の終了・中止、事業縮小、更新回数の上限の合意などが例示されています。逆に、実態と異なる理由や後から差し替えた理由は、紛争になった際にかえって不利に働きます。予告時点で理由を確定させ、証明書と社内記録の内容を一致させておくことが実務の要点です。

更新回数や通算期間の転記ミスは、そのまま予告漏れ・証明書の記載齟齬につながります。契約情報を台帳・帳票と同じ基盤で持つ運用は、派遣HUBの資料請求でご確認いただけます。

雇止めの有効性: 労契法19条の雇止め法理と実務上の落とし穴

手続き3点を守っても、雇止めが当然に有効になるわけではありません。労働契約法第19条は、契約が反復更新され実質的に無期契約と同視できる場合や、更新への合理的な期待がある場合には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く雇止めを認めず、従前と同一の条件で契約が更新されたものとみなします。

無期転換直前の雇止めが無効になるリスク

有期労働契約が通算5年を超えると、スタッフには無期転換申込権が発生します(労働契約法第18条)。通算5年の直前だけを狙った雇止めは、無期転換逃れと評価されて第19条の審査が厳しくなる典型パターンです。通算期間のカウントと申込権者の抽出は「派遣の無期転換(5年ルール)とは|3年ルールとの違いと派遣元の対応【2026年版】」で整理しています。

労働契約法19条の雇止め法理と無期転換リスクの図解
労働契約法19条の雇止め法理と無期転換リスクの図解

離職票の離職理由(会社都合・期間満了)の扱い

期間満了による契約終了は、雇用保険の手続き上「解雇」ではありません。ただし、本人が更新を希望していたのに更新されなかった場合には、給付制限なく基本手当を受給できる離職区分(特定受給資格者・特定理由離職者)に該当し得ます。該当するかどうかの最終判断はハローワークが行うため、派遣元は更新希望の有無と不更新の経緯を記録し、離職票にありのままを記載することが重要です。離職票を含む退職事務の期限は「派遣スタッフの退職手続き|離職票・資格喪失届・源泉徴収票の期限一覧【2026年版】」にまとめています。

契約更新データの記録・期日管理: Excel運用の欠落ポイント

雇止め予告要否の判定に必要なデータ項目マッピング(独自整理表)

3点セットの判定に必要なデータ項目を、法定要件から逆算して整理すると次のとおりです(出所: 告示第357号等の法定要件を、派遣HUBの契約管理データモデル設計に基づき自社整理)。

判定したい手続き必要なデータ項目Excel管理で欠落しやすい点
予告30日の要否雇入れ日・更新回数・通算契約期間・不更新の事前明示の有無更新のたびの回数転記漏れ、契約間の空白期間の見落とし
更新上限の明示・説明上限の有無と内容、新設・短縮の履歴、説明実施日「説明した」事実の記録が残らない
理由証明書の交付請求日・交付日・記載した理由口頭対応で証跡が残らない
無期転換・雇用安定措置通算契約期間、組織単位ごとの継続就業期間帳票が別ファイルで突合できない

契約満了日から逆算する期日タイムライン

法定の期限は「満了日の30日前」の予告だけですが、実務ではその手前に社内工程が連なります。更新方針の決定と本人への更新意向確認、雇用安定措置の対象者への希望聴取を予告期限より前に終えていなければ、30日前の予告は間に合いません。満了日を起点に、予告期限・希望聴取・社内判断の順で逆算した期日をスタッフごとに持つことが、雇止めトラブル予防の土台になります。

契約満了日から逆算する期日タイムライン図
契約満了日から逆算する期日タイムライン図

派遣元の雇止め・契約更新に関するFAQ

雇止めの予告は何日前までに必要ですか?

契約期間満了日の30日前までです。対象は、契約を3回以上更新しているか、雇入れの日から1年を超えて継続勤務しているスタッフで、あらかじめ更新しないと明示していた契約は除かれます(平成15年厚労省告示第357号第2条)。

雇止め理由証明書にはどんな理由を書けばよいですか?

契約期間の満了とは別の理由を記載します。厚生労働省のリーフレットでは、担当業務の終了・中止、事業縮小、更新回数の上限の合意などが例示されています。実態と一致した理由を予告段階から一貫して示すことが重要です。

派遣先が派遣契約を更新しない場合、そのまま雇止めしてよいですか?

そのままでは進められません。労働者派遣契約とスタッフとの労働契約は別で、継続3年就業見込みの対象者には雇用安定措置の履行が義務として先行します(労働者派遣法第30条)。派遣契約の終了だけを理由とする雇止めは労働契約法第19条の審査でも不利になり得ます。

契約の更新上限を後から新設・短縮することはできますか?

手続き上は可能ですが、あらかじめその理由をスタッフに説明することが必要です(告示第357号第1条・2024年4月施行の改正)。更新への合理的期待がすでに生じている場合、上限の新設だけで雇止めが正当化されるわけではない点に注意してください。

雇止めの場合、離職票の離職理由は会社都合になりますか?

期間満了による終了は解雇(会社都合解雇)とは区別されます。ただし本人が更新を希望したのに更新されなかった場合は、給付制限のない特定受給資格者・特定理由離職者に該当し得ます。最終的な区分の判断はハローワークが行います。

まとめ: 雇止めトラブルは記録と期日管理で防ぐ

派遣元の雇止め・契約更新実務は、派遣契約と労働契約の2層構造を区別したうえで、更新上限の明示、30日前の予告、理由証明書の交付という3点セットを契約満了日から逆算して実行することに尽きます。そして各手続きの証跡(明示・説明・予告・交付の記録)が残っていなければ、労働契約法第19条の審査でも雇用保険の離職区分でも自社を守れません。更新回数・通算期間・満了日という基礎データを一元的に持つことが、すべての出発点です。

出典: 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号、最終改正: 令和5年厚生労働省告示第114号)、労働契約法第18条・第19条、労働者派遣法第26条・第30条、厚生労働省リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」、e-Gov法令検索。


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