派遣会社の開業・許可申請の完全ガイド|要件・必要なもの・費用【2026年版】
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派遣会社の開業・許可申請の完全ガイド|要件・必要なもの・費用【2026年版】

派遣HUB編集部(派遣管理SaaS実務チーム)
2026年6月14日31分で読める

「派遣会社を始めたいが、何から準備すればいいのか分からない」——そう感じていませんか。労働者派遣事業は2015年の法改正で許可制に一本化され、資産要件や責任者の選任、キャリア形成支援制度の整備など、満たすべき条件が明確に定められています。準備不足のまま申請して差し戻されるケースは少なくありません。

この記事では、派遣会社の開業に必要なもの一式を早見表で整理し、許可要件・資産要件・派遣元責任者・費用・申請手順、そして開業後に待ち受ける運営コンプライアンスまでを一気通貫で解説します。これから許可申請に臨む方が、全体像を1ページで把握できる「ハブ記事」として活用してください。

結論:派遣会社の開業は「許可制」への対応がすべての出発点

派遣会社を開業するには、原則として厚生労働大臣の労働者派遣事業の許可を受ける必要があります(労働者派遣法第5条)。2015年の改正で特定労働者派遣事業(届出制)が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されました(出典: 厚生労働省『労働者派遣事業の許可について』)。

許可を得るには、後述する資産要件・人的要件・体制要件をすべて満たす必要があります。まずは開業に「必要なもの」の全体像を、以下の早見表で押さえましょう。

区分必要なもの概要
事業の前提労働者派遣事業の許可厚生労働大臣の許可(第5条)。新規の有効期間は3年
資産要件基準資産額 2,000万円以上(1事業所あたり)負債総額の7分の1以上であることも必要
資産要件現金・預金 1,500万円以上(1事業所あたり)自己名義の現金・預金
人的要件派遣元責任者派遣元責任者講習を受講した者を選任
体制要件キャリア形成支援制度段階的・体系的な教育訓練計画の整備(第30条の2)
体制要件個人情報の適正管理個人情報適正管理規程の整備
事務所適切な事業所一定の広さ・独立性などの基準
申請書類許可申請書・添付書類一式定款・登記事項証明書・貸借対照表等

なお、資産要件の金額や許可の有効期間といった具体的な数値は、制度改正により変わる可能性があります。実際に申請する際は、厚生労働省『労働者派遣事業関係業務取扱要領』や最寄りの労働局で最新情報を必ず確認してください。

派遣会社の開業に必要なもの早見表(許可・資産・人的・体制要件の一覧図)
派遣会社の開業に必要なもの早見表(許可・資産・人的・体制要件の一覧図)

派遣業が「許可制」である理由と制度の全体像

労働者派遣事業は、雇用主(派遣元)と指揮命令者(派遣先)が異なるという特殊な雇用形態です。労働者保護の観点から、事業者には一定の財務基盤と管理体制が求められ、これを担保する仕組みが許可制です。

なぜ届出制が廃止されたのか

2015年の派遣法改正以前は、常時雇用される労働者のみを派遣する「特定労働者派遣事業」は届出制で運営できました。しかし、実態として雇用が不安定な労働者を扱う事業者が届出制で参入し、労働者保護が不十分になるケースが問題視されました。そこで、すべての労働者派遣事業を許可制に統一し、参入時に財務・体制の審査を行う仕組みへと改められました(出典: 厚生労働省『労働者派遣事業の許可について』)。

許可の有効期間と更新

許可の有効期間は、新規許可で3年、更新後は5年が目安とされています。期間満了前に更新申請を行わなければ事業を継続できません。更新時にも資産要件などの審査があるため、開業後も財務基盤を維持し続ける必要があります。

有効期間や更新時の審査基準は制度改正で変わり得ます。具体的な年数・手続きは厚生労働省『許可・更新手続マニュアル』および所轄労働局で要確認です。

許可制の詳細な要件や更新手続きについては、関連記事の労働者派遣事業の許可要件と更新手続き|資産要件・派遣元責任者【2026年版】で深掘りしています。

資産要件:基準資産2,000万円・現金預金1,500万円が壁

派遣会社の開業で最も高いハードルとなるのが資産要件です。許可を得るには、財産的基礎として以下の条件を満たす必要があります。

3つの資産基準

許可基準で求められる財産的基礎は、次の3点です(1事業所あたり、出典: 厚生労働省『労働者派遣事業関係業務取扱要領』)。

基準項目要件
基準資産額2,000万円以上 × 事業所数
基準資産額と負債の関係負債総額の7分の1以上
現金・預金額1,500万円以上 × 事業所数

基準資産額とは、資産総額から負債総額(および繰延資産・営業権)を差し引いた額を指します。複数の事業所で派遣事業を行う場合は、事業所数に応じて必要額が増えます。たとえば2事業所なら基準資産額4,000万円以上、現金・預金3,000万円以上が必要になる計算です。

暫定的な配慮措置

小規模事業主向けに、一定の条件下で資産要件を緩和する暫定措置が設けられている場合があります。適用の可否や内容は時期によって異なるため、申請前に所轄労働局へ確認することが重要です。

資産要件の具体額・計算方法・緩和措置の有無は、厚生労働省の取扱要領や労働局の運用で変動します。直近の数値で判断せず、申請時点の公式情報で必ず裏取りしてください。

資産要件の計算イメージ(基準資産額・現金預金・事業所数の関係図)
資産要件の計算イメージ(基準資産額・現金預金・事業所数の関係図)

派遣元責任者と人的要件:講習受講が必須

財務基盤に加えて、事業を適正に運営する「人」の体制も許可の要件です。中心となるのが派遣元責任者の選任です。

派遣元責任者の選任

派遣元事業者は、派遣労働者の適正な雇用管理を行うため、派遣元責任者を選任しなければなりません。選任には、原則として派遣元責任者講習を受講していることが求められます。講習は厚生労働大臣が認定した機関が実施しており、受講後に責任者として職務を担えるようになります(出典: 厚生労働省『労働者派遣事業関係業務取扱要領』)。

派遣元責任者には、派遣労働者からの苦情処理、派遣先との連絡調整、就業状況の管理など、幅広い役割が課されます。選任した責任者は派遣元管理台帳などの記録にも関わるため、開業時から実務を担える人材を確保しておく必要があります。

派遣元責任者は派遣労働者100人につき1人以上の選任が目安とされています。選任要件や人数の基準は取扱要領で要確認です。

派遣元責任者・派遣先責任者それぞれの職務と記録義務については、派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務で詳しく解説しています。

欠格事由に該当しないこと

許可を受けるには、申請者(法人の役員を含む)が一定の欠格事由に該当しないことも条件です。労働関係法令違反の前歴などがある場合、許可が下りないことがあります。

キャリア形成支援制度と教育訓練の整備

許可要件の一つに、キャリア形成支援制度の整備があります。これは、派遣労働者が段階的にスキルを高め、キャリアを形成できるよう支援する仕組みで、開業時から計画として用意しておく必要があります。

教育訓練計画の要件

派遣元事業主には、段階的・体系的な教育訓練を実施する義務があります(労働者派遣法第30条の2)。フルタイムで3年以上の雇用が見込まれる派遣労働者については、毎年概ね8時間以上の教育訓練を実施することが目安とされています(出典: 厚生労働省『労働者派遣事業関係業務取扱要領』)。

「概ね8時間以上」「3年以上見込み」はあくまで目安であり、対象者や時間数の運用は取扱要領で確認が必要です。

許可申請にあたっては、誰に・どのような訓練を・いつ実施するかを定めた教育訓練計画を提出します。計画は形式だけでなく、実際に運用できる内容であることが審査で重視されます。

キャリアコンサルティングの機会提供

教育訓練に加えて、希望する派遣労働者へキャリアコンサルティングの機会を提供する体制も求められます。相談窓口の設置や担当者の配置など、具体的な仕組みを整えておきましょう。

教育訓練・キャリア形成支援の義務と記録の取り方は、派遣スタッフの教育訓練・キャリア形成支援の義務と記録で実務に即して整理しています。

キャリア形成支援制度の構成要素(段階的教育訓練とキャリアコンサルティングの関係図)
キャリア形成支援制度の構成要素(段階的教育訓練とキャリアコンサルティングの関係図)

開業にかかる費用の目安

派遣会社の開業には、許可申請にかかる法定費用と、資産要件を満たすための自己資金の両方が必要です。費用の全体像を整理しておきましょう。

申請関連の費用

許可申請には、登録免許税や収入印紙代といった法定費用がかかります。複数の事業所を同時に申請する場合は、事業所数に応じて手数料が加算される仕組みです。具体的な金額は時期や事業所数で変わるため、申請前に所轄労働局で確認してください。

費用区分内容
法定手数料・登録免許税許可申請時に必要。事業所数で変動
派遣元責任者講習の受講料受講機関により設定。責任者人数分が必要
自己資金(資産要件)基準資産2,000万円・現金預金1,500万円以上(1事業所)
専門家への依頼費用社会保険労務士等に申請代行を依頼する場合

法定手数料・登録免許税の具体額は時期と事業所数により異なります。最新の金額は厚生労働省・所轄労働局の案内で要確認です。

見落としやすいランニングコスト

開業時の費用だけでなく、開業後に継続して発生する運営コストも見込んでおく必要があります。教育訓練の実施費用、社会保険料の事業主負担、そして後述する法定帳簿やコンプライアンス管理の事務負担です。とりわけ管理業務は、人手で行うと担当者の工数が膨らみやすい領域です。

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開業後に待つ「運営コンプライアンス」への橋渡し

許可を取得して開業できても、それはスタートラインに立ったにすぎません。派遣事業は運営フェーズで多くの法的義務が発生し、これらを継続的に守ることが事業の生命線になります。開業準備と並行して、運営体制も設計しておきましょう。

開業後に発生する主な義務

派遣事業を運営すると、以下のような法的義務が日常的に発生します(出典: 労働者派遣法、e-Gov法令検索)。

義務根拠概要
法定帳簿の作成・保管派遣元管理台帳(第37条)・派遣先管理台帳(第42条)派遣元管理台帳は計18項目を記録、派遣終了から3年保管
3年ルールの管理事業所単位(第40条の2)・個人単位(第40条の3)抵触日の管理・通知。違反時は労働契約申込みみなし制度(第40条の6)
マージン率の公開第23条第5項インターネットでの公開が原則
同一労働同一賃金への対応第30条の3・第30条の4派遣先均等・均衡方式または労使協定方式で賃金を決定・記録
派遣契約等の書面・電子交付個別派遣契約(第26条)等2021年から電子化が解禁、要件に留意

3年ルールと抵触日の管理

派遣には期間制限があり、同一の派遣労働者を同一の組織単位で派遣できるのは原則3年までです(個人単位、第40条の3)。事業所単位でも原則3年の制限があり、延長には過半数労働組合等への意見聴取が必要です(第40条の2)。抵触日が近づいたら通知する運用が求められ、実務では90日前・30日前・当日のタイミングで管理するのが一般的です(出典: 厚生労働省、労働者派遣法)。

マージン率公開と同一労働同一賃金

派遣元事業主は、マージン率などの情報をインターネットで公開することが原則義務付けられています(第23条第5項。2012年に公開義務化、2021年4月からインターネット公開が原則)。また、2020年4月施行の同一労働同一賃金により、派遣先均等・均衡方式または労使協定方式のいずれかで賃金を決定し記録する必要があります(第30条の3・第30条の4)。

労使協定方式の具体的な対応手順は、派遣の同一労働同一賃金(労使協定方式)対応ガイド【2026年版】で解説しています。

これらの運営義務は、Excelや紙の台帳で管理すると抵触日の見落としや記載漏れのリスクが高まります。派遣HUBは、法定帳簿の自動生成、3年ルールの抵触日・クーリング期間の自動判定、マージン率公開ページの自動生成までを標準搭載。開業後のコンプライアンス管理を仕組みで支えます。

開業準備から運営コンプライアンスへの橋渡しフロー(許可取得→帳簿・3年ルール・マージン率公開)
開業準備から運営コンプライアンスへの橋渡しフロー(許可取得→帳簿・3年ルール・マージン率公開)

開業手続きの流れと準備のコツ

ここまでの要件を踏まえ、実際の開業手続きの流れを整理します。準備から許可取得までは、一般に数ヶ月単位の期間を見込んでおくのが現実的です。

申請から許可取得までのステップ

  1. 法人設立(または既存法人での事業目的追加)と定款の整備
  2. 資産要件を満たす自己資金の確保と直近の決算書類の準備
  3. 派遣元責任者の選任と派遣元責任者講習の受講
  4. キャリア形成支援制度・個人情報適正管理規程の整備
  5. 事業所の確保(広さ・独立性などの基準を満たす物件)
  6. 許可申請書・添付書類一式を所轄労働局へ提出
  7. 労働局による書類審査・実地調査
  8. 許可取得後、運営体制(帳簿・契約・コンプラ管理)を稼働

準備で詰まりやすいポイント

実務で差し戻しが多いのは、資産要件の証明と教育訓練計画の具体性です。資産は申請直前の数字合わせではなく、決算書類で安定して基準を満たしていることが望まれます。教育訓練計画も、対象者・時間数・内容が曖昧だと再提出を求められます。社会保険労務士などの専門家に申請代行を依頼すると、これらの不備を事前に防ぎやすくなります。

開業後の管理業務をExcelから脱却して効率化する方法は、中小派遣会社が派遣管理を脱Excel化する完全ガイド【2026年版】も参考にしてください。

よくある質問

派遣会社の開業に最低限いくらの資金が必要ですか

許可要件として、1事業所あたり基準資産額2,000万円以上、かつ現金・預金1,500万円以上が求められます。これに加えて法定手数料・登録免許税、派遣元責任者講習の受講料、事務所費用などが必要です。具体額は時期や事業所数で変わるため、所轄労働局で最新情報を確認してください。

派遣元責任者には誰でもなれますか

原則として派遣元責任者講習を受講した者であることが必要で、さらに欠格事由に該当しないことが求められます。派遣労働者100人につき1人以上の選任が目安とされています。選任要件の詳細は厚生労働省の取扱要領で確認してください。

許可申請から取得までどのくらいかかりますか

書類準備、労働局への申請、審査・実地調査を経るため、一般に数ヶ月単位の期間を見込む必要があります。資産要件の証明や教育訓練計画の不備で差し戻されると、さらに時間がかかります。期間や手続きの詳細は所轄労働局で確認してください。

1人でも派遣すれば許可は必要ですか

労働者派遣事業を行う場合は、規模にかかわらず厚生労働大臣の許可が必要です(労働者派遣法第5条)。2015年の改正で届出制が廃止され、すべて許可制に一本化されています。

開業後に必ず守るべき義務は何ですか

主なものとして、法定帳簿(派遣元管理台帳・派遣先管理台帳)の作成・保管、3年ルールの抵触日管理、マージン率のインターネット公開、同一労働同一賃金への対応、派遣契約等の適正な交付があります。いずれも労働者派遣法に基づく継続的な義務です。

まとめ:開業は「許可取得」と「運営体制」の両輪で考える

派遣会社の開業は、許可制への対応がすべての出発点です。基準資産2,000万円・現金預金1,500万円という資産要件、派遣元責任者の選任、キャリア形成支援制度の整備という3つの柱を満たし、許可申請書類を整えることが第一歩となります。

しかし、許可取得はゴールではなくスタートです。開業後は法定帳簿の作成、3年ルールの抵触日管理、マージン率公開、同一労働同一賃金への対応など、継続的なコンプライアンス義務が待っています。開業準備の段階から、これらを支える運営体制を設計しておくことが、安定した事業運営の鍵になります。

本記事で示した「必要なもの早見表」を起点に、許可要件・責任者・教育訓練・運営義務の各テーマを関連記事で深掘りし、開業準備を着実に進めてください。

(出典: 厚生労働省『労働者派遣事業の許可について』『労働者派遣事業関係業務取扱要領』、e-Gov法令検索『労働者派遣法』。資産要件の具体額・許可有効期間・手数料は厚生労働省『許可・更新手続マニュアル』および所轄労働局で要確認)


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