
派遣の事業所単位・抵触日の意見聴取手続き|通知・記録・異議対応を派遣元目線で解説【2026年版】
事業所単位の抵触日(派遣受入から原則3年)を延長するには、派遣先が事業所抵触日の1か月前の日までに事業所の過半数労働組合等へ意見聴取を行い、その記録を書面にして3年間保存する手続きが必要です。意見聴取そのものは派遣先の義務ですが、延長後の新しい事業所抵触日は派遣先から派遣元へ通知され、派遣元管理台帳や個別契約の更新につながります。つまり派遣元は「手続きの当事者ではないが、管理の起点になる側」です。
本記事では、労働者派遣法第40条の2と施行規則第33条の3を根拠に、意見聴取の対象者・期限・書面記録・異議対応、そして延長後の抵触日通知までを、派遣元実務の目線で一気通貫に整理します。
結論:事業所単位の抵触日を延長する意見聴取手続き早見表【いつ・誰が・何を】
派遣先が事業所単位の派遣可能期間(3年)を延長するときの手続きは、次の6点に整理できます。派遣元にとっての要点は、この流れを把握したうえで延長後の抵触日通知を確実に受け取ることです。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 主体 | 派遣先(意見聴取・記録・説明の義務者) | 派遣法第40条の2第4項 |
| 相手 | 事業所の過半数労働組合。無い場合は過半数代表者 | 派遣法第40条の2第4項 |
| 期限(意見聴取期間) | 事業所抵触日の1か月前の日までの間 | 派遣法第40条の2第3項・第4項 |
| 延長できる期間 | 3年を限りに延長(さらに延長する場合も同様) | 派遣法第40条の2第3項 |
| 記録の保存 | 記載事項を書面にし、延長前の派遣可能期間が経過した日から3年間保存・労働者へ周知 | 施行規則第33条の3第3項 |
| 延長後 | 派遣先が速やかに新しい事業所抵触日を派遣元へ通知 | 派遣法第40条の2第7項 |

意見聴取とは、派遣先が事業所単位の派遣可能期間を3年を超えて延長しようとする際に、その事業所の過半数労働組合等の意見をあらかじめ聴く手続きです。意見に法的な拘束力はありませんが、手続き自体を欠くと延長は認められません。
意見聴取とは|事業所単位の期間制限(派遣法40条の2)と派遣元が把握すべき理由
事業所単位の期間制限と意見聴取の定義
派遣先の同一事業所で継続して派遣を受け入れられる期間は、原則3年です(派遣法第40条の2第1項・第2項)。無期雇用派遣労働者、60歳以上の派遣労働者、有期プロジェクト業務、日数限定業務、産前産後・育児・介護休業の代替業務などは、この期間制限の対象外です。3年を超えて受け入れたい場合に、派遣先が意見聴取を経て派遣可能期間を延長します。

延長できるのは1回あたり3年までで、その期間が経過した後にさらに延長するときも、同じ意見聴取をやり直します(派遣法第40条の2第3項)。個人単位の抵触日(同一の組織単位で3年・派遣法第40条の3)は別の制限で、意見聴取では延長できません。個人単位や抵触日計算の全体像は「派遣の3年ルール・抵触日を手作業で管理するリスクと自動化の方法【2026年版】」で解説しています。
なぜ派遣元が意見聴取を把握すべきか(事業所抵触日通知の連鎖)
意見聴取は派遣先の義務ですが、派遣先が延長すると、新しい事業所抵触日が速やかに派遣元へ通知されます(派遣法第40条の2第7項)。派遣元はこの通知を受けて、派遣元管理台帳の抵触日や個別契約・就業条件明示書の記載を更新します。
通知を見落とすと、派遣元は古い抵触日のまま契約を続け、期間制限違反や労働契約申込みみなし制度のリスクを負います。意見聴取そのものは行わなくても、「延長された事実と新しい抵触日を確実に受け取り、台帳へ反映する」ことは派遣元の管理業務です。派遣元管理台帳への反映は「派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】」も参照してください。
意見聴取手続きの5ステップ|通知から書面記録・異議対応まで
ステップ1・2:過半数代表者の適正選出と延長期間の通知
過半数労働組合が無い事業所では、過半数代表者を選びます。代表者は、労働基準法第41条第2号の監督・管理の地位にある者でないこと、意見聴取のための選出であることを明らかにした投票・挙手などの民主的な方法で選ばれ、派遣先の意向に基づいて選出された者でないこと、の両方を満たす必要があります(施行規則第33条の3第2項)。使用者の指名など民主的でない選出は、意見聴取をしていないものと同視され、労働契約申込みみなし制度の対象になります。

そのうえで派遣先は、延長しようとする事業所等と延長しようとする期間を、過半数労働組合等へ書面で通知します(施行規則第33条の3第1項)。この事前通知が、意見聴取の起点になります。
ステップ3・4:意見聴取と書面記録(延長前期間の経過日から3年保存)
派遣先は意見聴取期間(事業所抵触日の1か月前の日までの間)に意見を聴きます。その際、派遣労働者数の推移など、過半数労働組合等が意見を述べる参考になる資料を提供しなければなりません。聴いた後は、次の記載事項を書面にし、延長前の派遣可能期間が経過した日から3年間保存し、事業所の労働者へ周知します(施行規則第33条の3第3項)。
| 区分 | 書面に残す事項 | 根拠 |
|---|---|---|
| 事前通知(2項目) | 延長しようとする事業所等/延長しようとする期間 | 施行規則第33条の3第1項 |
| 記録・保存(4項目) | 過半数労働組合の名称または過半数代表者の氏名/通知した日・通知した事項/意見を聴いた日・意見の内容/延長期間を変更したときは変更後の期間 | 施行規則第33条の3第3項 |
| 異議時の追加(2項目) | 説明した日/説明した内容 | 労働者派遣事業関係業務取扱要領 |
出典:労働者派遣法施行規則第33条の3を基に自社整理。

延長1回あたり、事前通知2項目・記録保存4項目・異議時の追加2項目で、最大8種類の法定事項を書面で管理する計算になります(施行規則第33条の3を基に自社整理)。保存の起算は「抵触日から」ではなく「延長前の派遣可能期間が経過した日から」3年である点が実務で誤りやすいポイントです。
ステップ5:過半数労働組合等が異議を述べた場合の説明義務
意見を聴いた過半数労働組合等が延長に異議を述べたときは、派遣先は延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日までに、延長の理由・延長の期間・異議への対応方針を説明しなければなりません(派遣法第40条の2第5項)。意見に法的な拘束力はありませんが、説明を尽くさないまま延長すると手続きの適正を欠きます。この説明も書面記録の対象で、説明した日と説明した内容を保存します。
延長後の事業所抵触日を派遣元管理台帳・抵触日管理へ反映する
派遣先からの再通知と派遣元管理台帳への記載
派遣先が派遣可能期間を延長したときは、速やかに新しい事業所抵触日を派遣元へ通知します(派遣法第40条の2第7項)。派遣元はこの新しい抵触日を派遣元管理台帳へ記載し、個別派遣契約書・就業条件明示書の抵触日も合わせて更新します。派遣元管理台帳は法定帳簿で、記載事項を派遣終了日から3年間保存します。責任者の選任・記録との関係は「派遣元責任者・派遣先責任者の選任と記録義務【2026年版】」で整理しています。

Excel+メール運用で起こる典型的な抜け漏れ
同じ「新しい事業所抵触日」を、派遣先からの事業所抵触日通知書・派遣元管理台帳・抵触日カレンダーの少なくとも3か所へ手入力する運用では、二重入力が発生します(自社見解)。1か所を直し忘れると、書類間で抵触日が食い違い、古い日付のまま契約を継続する事故につながります。
メール本文に埋もれた通知書の見落とし、担当者の異動による引き継ぎ漏れも典型です。基礎データを一元化し、通知の受領から台帳反映までを1つのデータで回すことが、抜け漏れ防止の近道になります。運用全体の脱Excel化は「中小派遣会社が派遣管理を脱Excel化する完全ガイド【2026年版】」を参照してください。
派遣HUBで意見聴取の記録・抵触日通知を仕組み化する
派遣HUBは、延長後の事業所抵触日を起点に、派遣元管理台帳・個別契約・抵触日アラートを1つのデータから更新します。意見聴取そのものは派遣先の手続きですが、派遣元が受け取る「新しい抵触日」を一元管理すれば、転記ミスと直し忘れを構造的に防げます。
| 課題 | 派遣HUBの対応 |
|---|---|
| 新しい抵触日の反映 | 事業所抵触日を1か所更新すると台帳・個別契約へ反映(自社設計値) |
| 見落とし防止 | 抵触日の一定期間前に派遣元・派遣先責任者へアラート(自社設計値) |
| 記録の保存 | 通知・更新の履歴を監査ログに自動記録(自社設計値) |
抵触日通知の受領から台帳反映までの運用工数は、Excel+メールの手作業に比べて縮小できる余地が大きい部分です(自社見解・削減幅は運用規模により変動)。派遣HUBは月額¥2,980/名(税込)から、初期費用¥30,000(税込)で導入できます。
よくある質問
事業所単位の抵触日を延長するには何をすればよいですか?
派遣先が、事業所抵触日の1か月前の日までに事業所の過半数労働組合等へ意見聴取を行い、延長する事業所と期間を書面で通知したうえで、記録を書面にして保存します。延長は3年を限りに可能です(出典:労働者派遣法第40条の2、施行規則第33条の3)。
意見聴取は誰に対して行いますか?過半数代表者はどう選べばよいですか?
事業所の過半数労働組合、無い場合は過半数代表者に対して行います。代表者は監督・管理の地位にある者でなく、意見聴取のための選出であることを明らかにした投票・挙手などの民主的な方法で選ぶ必要があります(出典:労働者派遣法第40条の2第4項、施行規則第33条の3第2項)。
意見聴取の記録はどのくらいの期間、保存する必要がありますか?
記載事項を書面にして、延長前の派遣可能期間が経過した日から3年間保存し、事業所の労働者へ周知します。起算は抵触日ではなく延長前の派遣可能期間が経過した日である点に注意します(出典:労働者派遣法施行規則第33条の3第3項)。
過半数労働組合等が延長に異議を述べた場合はどうなりますか?
派遣先は、延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日までに、延長の理由・延長の期間・異議への対応方針を説明しなければなりません。意見に拘束力はありませんが、説明を欠くと手続きの適正を満たしません(出典:労働者派遣法第40条の2第5項)。
意見聴取は派遣先の義務なのに、なぜ派遣元が把握する必要があるのですか?
延長すると新しい事業所抵触日が派遣先から派遣元へ通知され、派遣元は台帳や契約の抵触日を更新するためです。通知の見落としは、古い抵触日のままの契約継続と期間制限違反につながります(出典:労働者派遣法第40条の2第7項)。
意見聴取を行わずに3年を超えて派遣を受け入れるとどうなりますか?
意見聴取を欠いた延長は認められず、3年を超える受入は期間制限違反となります。違反状態では労働契約申込みみなし制度の対象となり、派遣先が派遣労働者へ同一の労働条件で労働契約を申し込んだものとみなされる場合があります(出典:労働者派遣法第40条の2、第40条の6)。
まとめ:意見聴取は派遣先の義務でも派遣元が管理の起点になる
事業所単位の抵触日を延長する意見聴取は派遣先の義務ですが、延長後の新しい抵触日は派遣元へ通知され、派遣元管理台帳や契約の更新につながります。派遣元にとっての要点は、意見聴取の流れを理解したうえで、この通知を確実に受け取って台帳へ反映することです。
記載事項の書面記録と3年保存、異議への説明義務まで、派遣先の手続きが適正でなければ延長は認められません。同じ抵触日を複数の帳票へ手入力する運用は直し忘れの温床です。基礎データを一元化し、通知の受領から台帳反映までを仕組みで回すことが、期間制限違反を防ぐ近道になります。
出典:労働者派遣法第40条の2・第40条の3・第40条の6、労働者派遣法施行規則第33条の3、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、厚生労働省・都道府県労働局リーフレット「派遣先の皆さまへ(事業所単位の期間制限・意見聴取の流れ)」
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