派遣の待遇情報の提供義務|比較対象労働者の情報と受領実務【2026年版】
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派遣の待遇情報の提供義務|比較対象労働者の情報と受領実務【2026年版】

2026年7月20日27分で読める

派遣先から比較対象労働者などの待遇情報の提供を受けなければ、派遣元は労働者派遣契約を締結できません。労働者派遣法第26条第7項は派遣先に待遇情報の提供義務を課し、同条第9項はその提供がないときの契約締結を禁じています。派遣元にとって待遇情報の受領は、契約を結ぶための前提条件です。

もっとも、受け取る情報の中身は採用した待遇決定方式によって変わります。派遣先均等・均衡方式では「比較対象労働者」に関する詳しい情報を、労使協定方式では教育訓練と福利厚生施設に関する情報を受領します。どちらの方式でも、受領した情報は書面等で保存し、派遣元管理台帳への記載や変更時の再提供まで一連の実務としてつながっています。

本記事では、派遣先から待遇情報を受け取る派遣元の目線で、提供義務の条文根拠・方式別に必要な情報・受領後の記録と保存を、実務の流れに沿って整理します。

結論:派遣先の待遇情報の提供がなければ派遣契約は結べない(方式で必要情報が変わる)

派遣元は、派遣先から待遇情報の提供を受けて初めて労働者派遣契約を締結できます(派遣法第26条第7項・第9項)。提供される情報は、派遣元が採用する待遇決定方式によって次のように分かれます。まず方式別に受領すべき情報を早見表で確認しましょう。

比較項目派遣先均等・均衡方式労使協定方式
待遇決定方式の根拠派遣法第30条の3派遣法第30条の4
派遣先から受領する主な情報比較対象労働者の待遇情報(5項目)教育訓練・福利厚生施設の情報
情報提供の根拠施行規則第24条の4第1号施行規則第24条の4第2号
提供の方法書面の交付・FAX・電子メール等同左
書面等の保存派遣終了日から3年派遣終了日から3年
提供がないとき労働者派遣契約を締結できない(第9項)同左

(出典: 労働者派遣法第26条第7項・第9項、同施行規則第24条の3・第24条の4を基に自社整理)

比較対象労働者とは、派遣先に雇用される通常の労働者で、職務の内容や配置変更の範囲が派遣労働者と同一と見込まれる人などを指します(第26条第8項)。方式を決める段階から「どちらの情報を受け取り、どこに記録するか」を設計しておくことが、契約実務をスムーズにする鍵になります。

派遣先均等・均衡方式と労使協定方式で派遣先から受領する待遇情報の違いを示す対照図
派遣先均等・均衡方式と労使協定方式で派遣先から受領する待遇情報の違いを示す対照図

派遣の待遇情報の提供義務とは(派遣法26条7項・9項)

労働者派遣法第26条第7項は、派遣の役務の提供を受けようとする者(派遣先)に対し、労働者派遣契約を締結するにあたって、あらかじめ派遣元へ比較対象労働者の待遇に関する情報などを提供する義務を定めています。2020年4月に施行された同一労働同一賃金の枠組みの一部で、派遣労働者の待遇を適正に決定するための出発点です。

情報提供のタイミング・様式・写しの保存(契約締結前/書面等/3年)

待遇情報の提供は、労働者派遣契約を締結する前に行われます。提供の方法は、施行規則第24条の3により、書面の交付、ファクシミリの送信、電子メール等のいずれかによると定められています。口頭のみのやり取りは認められていません。

提供を受けた派遣元は、その書面等を保存する義務があります。保存期間は、当該労働者派遣が終了した日から起算して3年を経過する日までです(施行規則第24条の3)。派遣先も同じ書面等の写しを同期間保存します。受領後すぐに保管ルールを決めておかないと、契約が終了したあとに「いつ・何を受け取ったか」を追えなくなります。

情報提供がないと労働者派遣契約を締結できない(26条9項の帰結)

派遣元にとって重要なのは、待遇情報の提供がないときは労働者派遣契約を締結してはならないという第26条第9項の定めです。つまり、派遣先が情報提供に応じない限り、派遣元は契約を結べません。受領が契約の前提条件になっているため、営業段階から情報提供の依頼を組み込んでおくと手戻りを防げます。

いったん提供を受けたあとでも、その情報に変更があったときは、派遣先は遅滞なく変更内容を派遣元へ再提供しなければなりません(第26条第10項)。派遣元は、当初の受領情報だけでなく、変更のたびに更新された情報を管理し続ける必要があります。書面や電磁的記録での契約管理については、労働者派遣契約書を電子化する完全ガイドもあわせて確認すると、受領書面の保存設計を整理できます。

待遇情報の提供から受領・保存・変更時の再提供までの流れ図
待遇情報の提供から受領・保存・変更時の再提供までの流れ図

均等・均衡方式で受け取る「比較対象労働者」の情報

派遣先均等・均衡方式(派遣法第30条の3)を採用する場合、派遣元は派遣先から「比較対象労働者」に関する詳しい情報を受領します。この情報をもとに、派遣先の通常の労働者と派遣労働者の待遇を均等・均衡にします。

比較対象労働者の定義と選定の考え方

比較対象労働者とは、派遣先に雇用される通常の労働者であって、職務の内容および配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる人などを指します(第26条第8項)。該当者がいない場合は、職務の内容が同一の労働者、業務の内容または責任の程度が同一の労働者などを、厚生労働省令で定められた優先順位に沿って派遣先が選定します。

派遣元は、派遣先が誰を比較対象に選んだのかを把握し、その選定理由まで受領します。比較対象労働者が適切に選ばれていないと、均等・均衡の判断そのものが揺らぐため、受領時に選定理由を確認しておくことが実務上のポイントです。

派遣先から提供される情報の5項目(早見表)

均等・均衡方式で派遣先から提供される比較対象労働者に関する情報は、施行規則第24条の4第1号に基づき、次の5項目に整理できます。

No.提供される情報の項目
1職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲、雇用形態
2比較対象労働者を選定した理由
3待遇のそれぞれの内容(賃金・賞与・手当・福利厚生等)
4待遇のそれぞれの性質および当該待遇を行う目的
5待遇を決定するにあたって考慮した事項

(出典: 労働者派遣法施行規則第24条の4第1号を基に自社整理)

これらは賃金だけでなく、各待遇の「性質・目的」や「決定にあたり考慮した事項」まで含む点が特徴です。派遣先が変わるたびに比較対象労働者も変わるため、均等・均衡方式では派遣先ごと・職務ごとに受領情報を保持する設計が欠かせません。方式そのものの選び方や毎年度の一般賃金水準比較は、派遣の同一労働同一賃金(労使協定方式)対応ガイドで詳しく解説しています。

比較対象労働者について派遣先から提供される5項目の情報を示す早見表
比較対象労働者について派遣先から提供される5項目の情報を示す早見表

労使協定方式で受け取る情報と受領実務

労使協定方式(派遣法第30条の4)を採用する場合、派遣先から受領する情報は均等・均衡方式より限定されます。賃金は厚生労働省が示す一般賃金水準を基準に決めるため、派遣先の比較対象労働者の賃金情報までは必要ないからです。

教育訓練・福利厚生施設に関する情報の提供

労使協定方式で派遣先から提供されるのは、施行規則第24条の4第2号に基づく次の2種類の情報です。ひとつは派遣先が派遣労働者に実施する教育訓練(派遣法第40条第2項の教育訓練)の内容、もうひとつは派遣先の福利厚生施設(給食施設・休憩室・更衣室)に関する情報です。

これらは、労使協定方式であっても派遣先が対応すべき「教育訓練」と「福利厚生施設」に対応します。賃金以外のこの2領域は協定方式でも派遣先の状況に合わせる必要があるため、受領すべき情報として明示されています。

受領後の記録・派遣元管理台帳への反映と変更時の再提供

受領した情報は、保存するだけでなく派遣元管理台帳の記載につながります。派遣元管理台帳には、協定対象派遣労働者であるか否かの別などを記載する必要があり(派遣法第37条)、派遣終了後3年間の保存が義務づけられています。どちらの方式を採用したかは台帳の記載事項に直結します。

派遣先の待遇情報に変更があれば、派遣先からの再提供(第26条第10項)を受けて、保存書面と台帳の記載も更新します。この受領から台帳反映までを手作業のExcelとメールで回すと、転記のポイントが増えて抜け漏れが起きやすくなります。派遣HUBの帳票設計を基に、受領情報が関係する主な管理ポイントを自社整理すると次のようになります。

受領情報が関わる管理ポイント手作業で起きやすい取りこぼし
受領書面の保存(3年・派遣終了日起算)起算日を契約日と取り違え保存漏れ
派遣元管理台帳への協定対象区分の反映方式変更が台帳へ反映されない
変更時の再提供情報への差し替え旧情報のまま契約を更新してしまう
派遣先・職務ごとの受領記録(均等均衡方式)派遣先別の情報が1ファイルに混在

(出典: 労働者派遣法第26条第10項・第37条、同施行規則第24条の3を基に、派遣HUBの帳票項目定義から自社整理)

教育訓練の記録の残し方は、派遣スタッフの教育訓練・キャリア形成支援の義務と記録でも整理しています。

待遇情報の受領から派遣元管理台帳への反映・変更時の再提供までの実務フロー図
待遇情報の受領から派遣元管理台帳への反映・変更時の再提供までの実務フロー図

待遇情報の受領・記録をシステムで一元管理する(派遣HUBの実務)

待遇情報の受領実務は、「受け取る」「保存する」「台帳へ反映する」「変更を差し替える」という複数の工程が連なります。派遣先や職務が増えるほど、どの契約にどの待遇情報が紐づくかを人手で追うのは難しくなります。

派遣HUBは、従業員20〜100名規模(主力は20〜40名)の中小派遣会社向けに設計した派遣管理SaaSです。派遣先・契約・派遣スタッフの情報を一元管理し、受領した待遇情報や採用した待遇決定方式を契約単位で記録できます。派遣元管理台帳の協定対象区分とも連動するため、受領から台帳反映までの二重入力を減らせます。

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派遣HUBで待遇情報の受領・保存・派遣元管理台帳を一元管理する画面イメージ図
派遣HUBで待遇情報の受領・保存・派遣元管理台帳を一元管理する画面イメージ図

よくある質問

派遣先から待遇情報の提供がない場合、派遣契約は結べますか

結べません。労働者派遣法第26条第9項により、派遣先から待遇情報の提供がないときは、派遣元は労働者派遣契約を締結してはならないと定められています(出典: 労働者派遣法第26条第9項)。待遇情報の受領は契約締結の前提条件です。

比較対象労働者とは誰のことを指しますか

派遣先に雇用される通常の労働者であって、職務の内容および配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる人などを指します(出典: 労働者派遣法第26条第8項)。該当者がいない場合は、厚生労働省令で定める優先順位に沿って派遣先が選定します。

派遣先均等・均衡方式と労使協定方式で、派遣先から提供される情報はどう違いますか

均等・均衡方式では比較対象労働者に関する情報(5項目)を、労使協定方式では教育訓練と福利厚生施設に関する情報を受領します(出典: 労働者派遣法施行規則第24条の4)。労使協定方式では賃金を一般賃金水準で決めるため、比較対象労働者の賃金情報は必要ありません。

待遇情報はどの様式・方法で提供され、写しの保存は必要ですか

書面の交付、ファクシミリの送信、電子メール等の方法で提供されます。派遣元・派遣先とも、その書面等を労働者派遣が終了した日から3年を経過する日まで保存する必要があります(出典: 労働者派遣法施行規則第24条の3)。

派遣先の待遇情報に変更があった場合、再提供は必要ですか

必要です。派遣先は、提供した情報に変更があったときは、遅滞なく変更内容を派遣元へ提供しなければなりません(出典: 労働者派遣法第26条第10項)。派遣元は再提供を受けて、保存書面と派遣元管理台帳の記載を更新します。

受領した待遇情報は派遣元管理台帳に記載する必要がありますか

派遣元管理台帳には、協定対象派遣労働者であるか否かの別などを記載します(出典: 労働者派遣法第37条)。受領した待遇情報と採用した待遇決定方式は台帳の記載事項に直結するため、受領と台帳記載を切り離さずに管理することが実務上重要です。

まとめ:待遇情報は「受領・保存・台帳反映」を一連で設計する

派遣元は、派遣先から待遇情報の提供を受けなければ労働者派遣契約を締結できません(派遣法第26条第7項・第9項)。受け取る情報は方式によって変わり、派遣先均等・均衡方式では比較対象労働者の5項目、労使協定方式では教育訓練・福利厚生施設の情報を受領します。

受領した情報は書面等で3年間保存し、派遣元管理台帳の協定対象区分に反映し、変更があれば再提供を受けて更新します。この一連の流れを手作業で分断せず、契約・台帳と連動させて設計しておくことが、行政調査や派遣先対応に強い体制につながります。

出典: 労働者派遣法第26条第7項・第8項・第9項・第10項、第30条の3、第30条の4、第37条、労働者派遣法施行規則第24条の3・第24条の4、厚生労働省『労働者派遣事業関係業務取扱要領』、厚生労働省『派遣先から派遣元への待遇情報の提供について』、e-Gov法令検索。


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