
派遣の雇用安定措置とは?4措置の義務・努力義務と希望聴取・記録の実務【2026年版】
派遣の雇用安定措置とは、同一の組織単位に継続3年間就業する見込みの派遣スタッフには「義務」、1年以上3年未満の見込みや雇用通算1年以上の場合は「努力義務」として、派遣元が4つの措置のいずれかを講じる制度です(労働者派遣法第30条)。まず対象者を判定し、本人の希望を聴取し、その内容を派遣元管理台帳に記録して3年間保存する——この一連の流れを外すと、抵触日を正しく管理していても労働局の定期調査で不備を指摘されます。
中小派遣会社では「3年ルールの抵触日は追えているが、その後の雇用安定措置を誰にいつ講じ、記録をどこに残すか」が曖昧になりがちです。抵触日カウントや事業所単位・個人単位の計算は別記事に譲り、本記事は抵触日の“その後”に軸足を置きます。
この記事では、対象者判定(義務/努力義務の分かれ目)・4措置の選び方・希望聴取と記録の残し方・労働局調査で問われる点までを、派遣元の実務担当者の目線で一気通貫に整理します。
結論:派遣の雇用安定措置とは?4措置と義務・努力義務の早見表
派遣の雇用安定措置は、対象者の継続就業見込みで義務の重さが変わり、講じられる措置は1号から4号までの4種類です。まず全体像を早見表で示します。

| 号 | 措置の内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 1号 | 派遣先への直接雇用の依頼 | 派遣先に直接雇用の申込みを求める |
| 2号 | 新たな就業機会(派遣先)の提供 | 能力・経験に照らして合理的なものに限る |
| 3号 | 派遣元事業主による無期雇用 | 派遣労働者以外の労働者としての無期雇用 |
| 4号 | その他安定した雇用の継続を図る措置 | 有給の教育訓練・紹介予定派遣など |
出典: 労働者派遣法第30条・厚生労働省「雇用安定措置について」を基に自社整理
| 対象者(同一組織単位の継続見込み等) | 区分 | 講じる措置 |
|---|---|---|
| 継続3年間の見込み+継続就業を希望 | 義務 | 1〜4号のいずれか |
| 継続1年以上3年未満の見込み | 努力義務 | 1〜4号のいずれか |
| 派遣元に雇用された期間が通算1年以上 | 努力義務 | 2〜4号のいずれか |
出典: 厚生労働省「雇用安定措置について」(労働者派遣法第30条)
雇用安定措置の対象者判定(義務と努力義務の分かれ目)
雇用安定措置で最初にやるべきは、派遣スタッフ一人ひとりを義務対象か努力義務対象かに振り分ける対象者判定です。判定は「同一の組織単位での継続就業見込み」と「派遣元での雇用通算期間」の2軸で行います。
3年継続見込み=義務(1〜4号のいずれかを必ず履行)
同一の組織単位の業務に継続して3年間就業する見込みがあり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者は、雇用安定措置の義務対象です。派遣元は1号から4号のいずれかを必ず講じなければなりません(労働者派遣法第30条)。
見込みの判定は契約更新のたびに行い、更新時に通算3年に達する見込みとなった時点で義務が発生します。抵触日や組織単位の考え方は「派遣の3年ルール・抵触日を手作業で管理するリスクと自動化の方法【2026年版】」で詳しく整理しています。
1年以上3年未満・雇用通算1年以上=努力義務
努力義務の対象者は2種類に分かれます。1つは同一の組織単位に継続1年以上3年未満の就業見込みがある人、もう1つは派遣元に雇用された期間が通算1年以上の人です(労働者派遣法第30条)。
前者は1号から4号のいずれか、後者は2号から4号のいずれかが努力義務の対象です。努力義務であっても本人が希望する措置の実現に努める必要があり、記録を残さないと「講じていない」と見なされるリスクがあります。
対象者判定でつまずく典型パターン(起算日・組織単位)

対象者判定でつまずくのは、主に起算日と組織単位の2点です。起算日は同一組織単位での就業開始日であり、派遣先が同じでも組織単位(課・グループ等)が変われば再カウントされます。
また、雇用安定措置の義務を避ける目的で、業務上の必要性がないのに就業期間を3年未満で切ることは、脱法行為として義務違反と同視されます(派遣元指針)。判定を人手で行うと、更新の重なりや組織単位の変更を追い切れず、義務対象者を努力義務と誤認する事故が起きます。
4措置の内容と派遣元の選び方
対象者を判定したら、1号から4号のどの措置を講じるかを選びます。措置に優先順位の定めはありませんが、1号だけは「講じたが直接雇用に至らなかった場合、他の措置を追加する」という特別なルールがあります。
1号:派遣先への直接雇用の依頼と不成立時の追加措置

1号措置は、派遣先に対して派遣スタッフの直接雇用を依頼する措置です。ここで注意すべきは、義務対象者に1号措置を講じたにもかかわらず派遣先に雇用されなかった場合、派遣元は2号から4号までのいずれかの措置を追加で講じなければならない点です(労働者派遣法施行規則第25条の2第2項)。
つまり「直接雇用を依頼したが断られた」で終わりにはできません。1号が不成立になった時点で追加措置の履行義務が残るため、依頼の結果と次の措置までを一連で記録しておく必要があります。
2号:新たな就業機会の提供/3号:派遣元での無期雇用
2号措置は、派遣元が新たな派遣先(就業機会)を提供する措置です。ただし本人の能力・経験に照らして合理的な就業機会に限られ、通勤困難な遠隔地や大幅な条件低下を伴う案件は合理的と認められません(労働者派遣法第30条)。
3号措置は、派遣元が派遣スタッフを派遣労働者以外の無期雇用労働者として雇用する措置です。派遣元の常用社員化にあたり、有期契約の通算5年による無期転換とは根拠が異なります。定着の観点は「派遣スタッフの定着率を上げる方法」も参考になります。
4号:有給の教育訓練・紹介予定派遣等その他の措置
4号措置は、1号から3号以外で安定した雇用の継続を図るために必要な措置です。具体的には有給の教育訓練や紹介予定派遣などが該当します(労働者派遣法第30条)。
4号の教育訓練は、派遣スタッフ全員に義務づけられた段階的・体系的な教育訓練とは目的が異なり、次の就業に向けたスキル付与を意図した措置です。教育訓練の記録運用は「派遣スタッフの教育訓練・キャリア形成支援の義務と記録」で整理しています。
希望聴取と記録の実務フロー(派遣元管理台帳・3年保存)
措置を選ぶ前提として、派遣元は本人がどの措置を希望するかを聴取する必要があります。聴取した希望と実施した措置は、派遣元管理台帳に記録して保存します。
希望聴取の実施タイミングと聴取内容
希望聴取は、対象者が義務・努力義務の要件に達するタイミング、実務上は契約更新や抵触日が近づいた時点で行います。聴取内容は、本人がどの措置を希望するか、直接雇用を望むか、次の派遣先を望むかといった意向です。
特に本人が直接雇用の申込みを希望する場合は、その実現に努めることが求められます(派遣元指針)。聴取は口頭で済ませず、聴取日・希望内容・回答者を残せる様式で行うのが安全です。
派遣元管理台帳への記録と3年間の保存

聴取した希望内容と実施した措置の内容は、派遣元管理台帳の記載事項です(労働者派遣法第37条・労働者派遣法施行規則第31条)。派遣元管理台帳は労働者派遣の終了後3年間保存する義務があります。
記載項目や3年保存の詳細は「派遣元管理台帳の書き方と保管ルール|記載必須18項目と自動化の進め方【2026年版】」に譲りますが、雇用安定措置は18項目の1つとして、希望内容と実施内容の両方を残す必要があります。
労働局の定期調査で問われる記録
労働局の定期調査では、雇用安定措置の対象者を正しく把握しているか、希望聴取と措置の記録が台帳に残っているかが確認されます。措置を講じた事実だけでなく、聴取から実施までの過程を証跡として示せるかが問われます。
雇用安定措置の実施状況は労働者派遣事業報告書(様式第11号)でも報告するため、日々の台帳記録と年次報告の数字が食い違わない運用が必要です。手作業では、聴取はしたが台帳に転記していない、という抜けが起きやすいポイントです。
派遣HUBによる対象者判定・希望聴取記録の自動化
対象者判定・希望聴取・台帳記録という3つの工程を人手で回すと、判定漏れと記録漏れが避けられません。派遣HUBはこの流れを一連の機能として持ちます。
対象者の自動判定と4措置の履行トラッキング

派遣HUBは、同一組織単位の継続就業月数・雇用通算月数・無期/有期区分・個人単位の抵触日をもとに、義務対象者と努力義務対象者を自動で判定します。人手でExcelを突合していた判定要素を、登録済みデータから自動照合する設計です。
判定後は、1号から4号のどの措置を講じたか、1号不成立時の追加措置まで履行状況をトラッキングし、抜けを管理画面で可視化します。脱Excelの全体像は「中小派遣会社が派遣管理を脱Excel化する完全ガイド【2026年版】」をご覧ください。
希望聴取記録と派遣元管理台帳の一元連動
派遣HUBは、雇用安定措置の対象者自動判定・希望聴取記録・派遣元管理台帳への連動を標準機能として備え、判定と記録の抜けを仕組みで防ぎます。
希望聴取の記録フィールドと派遣元管理台帳の記載項目を連動させると、聴取内容を一度入力するだけで台帳へ反映され、二重入力と転記漏れを防げます。派遣HUBの機能仕様に基づき、連動する主な項目を整理しました。
| 希望聴取・措置の記録項目 | 連動する派遣元管理台帳の記載 | 効果 |
|---|---|---|
| 聴取日・希望する措置(1〜4号) | 雇用安定措置の希望内容 | 転記不要 |
| 実施した措置・1号不成立時の追加措置 | 雇用安定措置の実施内容 | 実施漏れの可視化 |
| 協定対象派遣労働者の別 | 協定対象派遣労働者の別 | 区分の一貫性 |
出典: 派遣HUBの機能仕様(データモデル・画面設計)に基づく自社整理。連動対象は概ね5〜8項目のレンジで、Excel別管理時に生じる同一項目の二重入力を圧縮する想定値。
よくある質問(FAQ)
雇用安定措置の4つの措置(1〜4号)とは何ですか?
1号が派遣先への直接雇用の依頼、2号が新たな派遣先(就業機会)の提供、3号が派遣元での無期雇用、4号が有給の教育訓練・紹介予定派遣などその他の措置の4つです(出典: 労働者派遣法第30条)。派遣元はいずれかを講じます。
雇用安定措置が「義務」になるのはどの対象者ですか?努力義務との違いは?
同一の組織単位に継続3年間就業する見込みで継続就業を希望する人が義務対象です。継続1年以上3年未満の見込み、または派遣元での雇用通算1年以上の人は努力義務にとどまります(出典: 厚生労働省「雇用安定措置について」・労働者派遣法第30条)。
1号措置を行ったが直接雇用に至らなかった場合はどうなりますか?
義務対象者に1号措置を講じても派遣先に雇用されなかった場合、派遣元は2号から4号までのいずれかを追加で講じる義務があります(出典: 労働者派遣法施行規則第25条の2第2項)。1回の依頼で終わりにはできません。
雇用安定措置の希望聴取は必須ですか?聴取内容はどこに記録しますか?
派遣元は本人が希望する措置を講じるよう努める必要があり、その前提として希望の聴取が求められます。聴取した希望内容と実施内容は派遣元管理台帳に記載し、労働者派遣の終了後3年間保存します(出典: 労働者派遣法第37条・派遣元指針)。
雇用安定措置を講じなかった場合、派遣元にどのようなリスクがありますか?
労働局の指導・助言や是正指導の対象になり、改善されない場合は事業許可の更新にも影響します。義務回避を目的に就業期間を3年未満で切る運用は、脱法行為として義務違反と同視されます(出典: 労働者派遣法第30条・派遣元指針)。
派遣スタッフ本人が措置を希望しない場合でも措置は必要ですか?
義務対象者については、本人が継続就業を希望することが前提です。継続就業を希望しない場合は義務の対象外となりますが、希望の有無を聴取し、その結果を派遣元管理台帳に記録しておくことが重要です(出典: 労働者派遣法第30条・第37条)。
まとめ:雇用安定措置は「判定・履行・記録」を仕組みで担保する
派遣の雇用安定措置は、3年見込みで義務、1年以上3年未満や雇用通算1年以上で努力義務と、対象者判定から始まります。措置は1号から4号のいずれかを選び、1号が不成立なら2号から4号を追加します。そして本人の希望を聴取し、希望内容と実施内容を派遣元管理台帳に記録して3年間保存する——この判定・履行・記録の3点が揃って初めて、労働局の調査でも証跡を示せます。
抵触日を追えていても記録が抜ければ不備になります。中小派遣会社こそ、判定と記録を人手ではなく仕組みで担保しましょう。
出典: 労働者派遣法第30条(雇用安定措置)、労働者派遣法施行規則第25条の2第2項(1号措置不成立時の追加措置)、労働者派遣法第37条・同施行規則第31条(派遣元管理台帳の記載事項・3年保存)、厚生労働省「雇用安定措置について」、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針
雇用安定措置を「記録」まで仕組み化
派遣HUBは、対象者の自動判定から希望聴取の記録・派遣元管理台帳への連動までを標準機能で支え、判定漏れと記録漏れを防いで労働局調査に証跡で応えられます。
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