
派遣スタッフの健康診断(一般健診・特殊健診)の実施義務と記録【2026年版】
派遣スタッフの健康診断は「派遣元と派遣先のどちらが実施するのか」「費用はどちらが負担するのか」で迷う派遣会社の管理担当者は少なくありません。一般健診と特殊健診で実施主体が分かれるうえ、記録の保管年限も区分ごとに異なるため、整理せずに運用すると義務の取りこぼしが起こりがちです。
本記事では、労働安全衛生法と労働者派遣法の条文をもとに、健康診断の種類別に「誰が実施し」「誰が費用を負担し」「何年保管するのか」を早見表で確定します。あわせて、記録の作成・保管・結果通知を派遣会社がどう仕組み化すればよいかも整理します。
結論:一般健診は派遣元、特殊健診は派遣先が実施する
派遣スタッフの健康診断は、種類によって実施義務を負う主体が分かれます。雇用主としての健康管理にあたる「一般健康診断」は派遣元が、有害業務に伴う「特殊健康診断」は実際に作業環境を管理する派遣先が実施します(出典: 労働安全衛生法第66条、労働者派遣法第45条、厚生労働省「派遣中の労働者に関する派遣元及び派遣先の講ずべき措置」)。
| 区分 | 実施主体 | 費用負担 | 記録の保管年限 |
|---|---|---|---|
| 一般健康診断(雇入時・定期) | 派遣元 | 派遣元 | 5年 |
| 特殊健康診断(有機溶剤・特定化学物質等) | 派遣先 | 派遣先 | 5年 |
| 特殊健診のうち特別管理物質に係るもの | 派遣先 | 派遣先 | 30年 |
| じん肺健康診断 | 派遣先 | 派遣先 | 7年 |
この切り分けは、安衛法上の責任を「雇用主が負うもの」と「現場の作業環境を管理する者が負うもの」に分けた考え方に基づきます(出典: 厚生労働省「派遣元・派遣先が講ずべき措置」)。

一般健康診断は派遣元の義務
一般健康診断は、業務の有害性にかかわらず、すべての労働者の健康状態を把握するために実施するものです。派遣スタッフについては、雇用主である派遣元が実施義務を負います(出典: 労働安全衛生法第66条第1項、労働者派遣法第45条)。
雇入時健診と定期健診の対象者
一般健康診断には、雇入れの際に行う「雇入時健康診断」と、原則1年以内ごとに1回行う「定期健康診断」があります(出典: 労働安全衛生規則第43条・第44条)。
対象となるのは「常時使用する労働者」です。短期の派遣であっても、契約の更新により1年以上の使用が見込まれる場合などは対象に含まれ得るため、雇用期間と労働時間の両面で判定する必要があります。判定基準は社会保険の適用判断とも関連するため、あわせて派遣スタッフの社会保険・有給休暇管理を自動化する方法も参考になります。
費用は派遣元が負担する
一般健康診断に要する費用は、実施義務を負う派遣元が負担します(出典: 厚生労働省「派遣元が講ずべき措置」)。
派遣スタッフは複数の派遣先を移動するため、健診の案内・予約・受診状況の管理が煩雑になりがちです。誰がいつ受診し、結果がどう保管されているかを台帳で一元管理しておくことが、未受診の取りこぼしを防ぐ第一歩です。スタッフごとの基本情報や就業データが一つのデータベースに揃っていれば、健診案内の対象者抽出も機械的に行えます。

特殊健康診断は派遣先の義務
特殊健康診断は、有機溶剤や特定化学物質、粉じんなど、健康障害を生じるおそれのある有害業務に従事する労働者に対して実施するものです。実際の作業環境を管理しているのは派遣先であるため、特殊健診の実施義務は派遣先が負います(出典: 労働安全衛生法第66条第2項・第3項、労働者派遣法第45条)。
法定の特殊健診と通達に基づく健診
特殊健康診断には、有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則・電離放射線障害防止規則などに定める法定の健診のほか、行政通達に基づいて実施が求められる健診(騒音作業、VDT・情報機器作業など)があります(出典: 厚生労働省「派遣先が講ずべき措置」)。
派遣先は、自社の社員と同様に派遣スタッフにもこれらの健診を受診させる必要があります。どの業務がどの特殊健診の対象になるかは、派遣先の作業内容に依存するため、派遣契約の締結時に有害業務の有無を確認しておくことが重要です。
費用負担と結果の取り扱い
特殊健康診断の費用は、実施義務を負う派遣先が負担します(出典: 厚生労働省「派遣先が講ずべき措置」)。
ただし、健診の結果は派遣スタッフの雇用主である派遣元の健康管理にも必要です。そのため派遣先は、特殊健診の結果を派遣元へ通知する仕組みを整えておく必要があります。結果通知が滞ると、派遣元側で就業上の措置(配置転換・作業時間の短縮など)の判断ができなくなる点に注意が必要です。

記録の作成・保管と結果通知
健康診断は「実施して終わり」ではなく、結果を記録し、一定期間保管し、必要に応じて本人や相手方に通知するところまでが一連の義務です。派遣元と派遣先で責任が分かれるからこそ、記録と通知の流れを設計しておく必要があります。
健康診断個人票の作成と保管年限
事業者は、健康診断の結果に基づき健康診断個人票を作成し、保管しなければなりません(出典: 労働安全衛生法第66条の3、労働安全衛生規則第51条)。一般健康診断個人票の保管年限は5年です(出典: 労働安全衛生規則第51条)。
特殊健診については区分により年限が異なり、特定化学物質のうち特別管理物質に係る記録は30年、じん肺健康診断の記録は7年の保管が求められます(出典: 特定化学物質障害予防規則、じん肺法、厚生労働省「長期保存が必要な健康診断結果等の取扱について」)。年限を取り違えると、本来30年保管すべき記録を5年で廃棄してしまうリスクがあるため、区分ごとに管理する必要があります。
医師の意見聴取と就業上の措置
事業者は、健康診断の結果に異常の所見があると診断された労働者について、医師の意見を聴き、必要に応じて就業場所の変更や作業の転換などの措置を講じなければなりません(出典: 労働安全衛生法第66条の4・第66条の5)。
派遣スタッフの場合、就業上の措置は雇用主である派遣元と作業を管理する派遣先の双方に関係します。派遣先で把握した健康上の懸念を派遣元へ確実に伝える連絡体制がないと、適切な措置が遅れる恐れがあります。
本人への結果通知
事業者は、健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なくその結果を通知しなければなりません(出典: 労働安全衛生法第66条の6)。一般健診は派遣元から、特殊健診は派遣先から本人へ通知するのが原則です。
これらの記録・通知・意見聴取を紙の台帳と個別ファイルで運用していると、保管年限の管理や通知漏れの防止に手間がかかります。スタッフの就業データと健診記録を同じデータ基盤で管理し、保管年限や通知状況を一覧で見える化できれば、二重入力をなくしながら抜け漏れを防げます。台帳整備の考え方は派遣元管理台帳の書き方と保管ルールも参考になります。

よくある質問
派遣スタッフの一般健康診断は派遣元と派遣先のどちらが実施しますか?
一般健康診断は雇用主である派遣元が実施し、費用も派遣元が負担します(出典: 労働安全衛生法第66条第1項、労働者派遣法第45条)。雇入時健診と定期健診のいずれも派遣元の義務です。
特殊健康診断は誰が実施し、費用は誰が負担しますか?
有害業務に伴う特殊健康診断は、作業環境を管理する派遣先が実施し、費用も派遣先が負担します(出典: 労働安全衛生法第66条第2項・第3項、労働者派遣法第45条)。結果は派遣元にも通知する必要があります。
健康診断個人票は何年保管すればよいですか?
一般健康診断個人票の保管年限は5年です(出典: 労働安全衛生規則第51条)。特殊健診のうち特別管理物質に係る記録は30年、じん肺健康診断の記録は7年と区分ごとに異なります(出典: 厚生労働省「長期保存が必要な健康診断結果等の取扱について」)。
健診結果に異常があった場合、派遣会社は何をすべきですか?
医師の意見を聴いたうえで、必要に応じて作業の転換や就業時間の短縮などの就業上の措置を講じる必要があります(出典: 労働安全衛生法第66条の4・第66条の5)。派遣元と派遣先で情報を共有する体制が前提となります。
健診の結果は本人にも通知が必要ですか?
事業者は、健康診断を受けた労働者本人に遅滞なく結果を通知しなければなりません(出典: 労働安全衛生法第66条の6)。一般健診は派遣元、特殊健診は派遣先から通知するのが原則です。

まとめ:区分ごとの実施・費用・保管を表で管理する
派遣スタッフの健康診断は、一般健診を派遣元が、特殊健診を派遣先が実施し、費用もそれぞれが負担します。記録の保管年限は一般健診で5年、特別管理物質に係る特殊健診で30年、じん肺健診で7年と区分ごとに異なるため、種類別の早見表で管理することが取りこぼし防止につながります。
加えて、医師の意見聴取・就業上の措置・本人への結果通知まで含めて一連の流れとして設計し、派遣元と派遣先の連絡体制を整えておくことが重要です。スタッフの就業データと健診記録を同じ基盤で管理できれば、保管年限や通知状況を見える化しながら二重入力をなくせます。
出典: 労働安全衛生法第66条・第66条の3〜第66条の6、労働安全衛生規則第43条・第44条・第51条、労働者派遣法第45条、厚生労働省「派遣中の労働者に関する派遣元及び派遣先の講ずべき措置」「長期保存が必要な健康診断結果等の取扱について」、e-Gov法令検索
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